「THE PRETENDER」 ジャクソン・ブラウン
この場所がわかる方は、かなりのCDショップ好き。
ほんとの雑踏は、それも日本一ともいうべき人混みの坩堝は、もっと左側の方にあるけれど。
大学をこの街で過ごし、その頃からも、この街は若者の街だった。
いろんな思い出がここにあるし、ここに捨ててもきた。
いまや、ここに集まる若者たちの親のような年代になってしまい、わたしにとってこの街はまったく違う街であり、受け入れがたい街に変貌してしまった。
飲んで騒いだ店やその界隈もまったく姿を変えてしまったし、バイトした場所も新しいビルにとって変わったりして、訳のわからない言語を駆使する異邦人ばかりがそこにいる。
いや、異邦人はわたしなのかも・・・・・。
でも若者たちよ、この街に佇み、かつてあった思い出を懐かしみ、居場所を探すさまよえる私を優しく見守って欲しい。
わたしの大学時代とサラリーマン時代初期を支えてくれた歌が、ジャクソン・ブラウンの作品の数々。
根っからのアメリカのシンガーソングライターであるが、アメリカ人の両親のもと、1948年ドイツのハイデルベルクにたまたま生まれたということを度外視しても、わたしは、ジャクソン・ブラウンはアメリカのシューベルトではないかと思っている。
自ら詞を書いて、曲を作って、歌う、という中世の吟遊詩人ともとれるくらいの芸術家。
そして、シューベルトのように、ナイーブで歌心あふれ、未来を明るく歌い、そして切ないくらいに過去も懐かしむ。死の影すらただようこともある。。。。
ピュアで純粋な歌声がまた素晴らしくて、フレンドリーなものだから、一緒に歌いたくなってしまう。
いま、何枚のレコードやCDが作られたか知れないが、そのどれもに70年代から変わらぬJ・ブラウンの刻印がある。
アメリカの良心を背景にしつつも、フォークロックともいうべき、カントリーな曲調に哀感と郷愁がたっぷり詰まっていて、日本人の繊細な聴き手の心にもさりげなく迫ってくるたぐいの歌、それがジャクソン・ブラウンなんだ。
いまだから言えるけれど、恋に悩んだとき、失恋したとき、好きな人ができたとき、大学を去る時、社会人として戸惑いを覚えたとき、そしてまたそこで恋をしたとき・・・・・、そんなときにいつも、ジャクソン・ブラウンの歌があった。
わたしの、本流のクラシック音楽とともに長くあって、それと不思議に共存してきた感もあるんです。
こんな大事なアーティストをいままで文章にできなかった。
この国の誰もが、あの日以来変わってしまった世の中に戸惑い、そして自分ももしかしたら変わってしまったとみんな自覚しているのではないかと思う。
明日、なにがあるかわからない、そんな日々。
そして、その備えも人それぞれだけれど、みんなが生きてきた昨日までの日々は変えられないし、変えることが絶対にできない不変のもの。
それを、懐かしんで、大事に思うことのどこが悪いだろう。
おんなじことをまた繰り返すかもしれないけれど、わたしは過去に軸足をしっかり置いて、これから始まる明日をしっかり生きていこうと、そんな風にJ・ブラウンの歌を聴きながら思ったのです。
THE PRETENDER
フリーウェイのもと、その日陰に一軒家を借りよう
毎朝、昼の弁当を詰めて 働きに出よう
そして、日が暮れたら家に帰り 身を横たえる
そしてまた朝の光が差し込んできたら、起き上がって同じことを繰り返す
アーメン もう一度言おう、アーメンと
僕たちが待っていた恋がもたらす変化
それが、どうなってしまったか、知りたいんだ
一時の気まぐれの夢だったろうか
もっと大きな目覚めを呼び覚ます夢だったのだろうか
時は過ぎ去るもの そう、結局は瞬きのうちに過ぎ去るものだから
そしてまた朝の光が差し込んできたら、起き上がって同じことを繰り返す
アーメン もう一度言おう、アーメンと
愛を渇望しながらも、現実には生きるため稼がなくてはならない
サイレンが歌い、教会の鐘が鳴り響き
屑鉄屋が車のフェンダーを叩す ここでは退役軍人が戦いの夢をみながら
信号待ちのつかの間にまどろみ、
子供たちは無表情にアイスクリームベンダーを待ちうける
そんな街 涼しい夕べを仮面を被ったように、さまよい歩くふりをしよう
そう、わかってるんだ 希望も夢も
始まり、終わるのはこの街なんだ・・・・・・・
僕は幸せなバカになろう
そして、まっとうな金を儲けるために奮闘しよう
宣伝広告が狙いをさだめ 金を払ってくれるものの身と心に訴える世界で
僕はあるものすべてを信じよう
金を出せば買える物を信じよう
真の愛がその競争相手であった世界で
そこにいるのですか?
こんな、偽りのさすらい人のために祈って欲しい
最初は、若くて強かったのに
結局のところ負けてしまった僕に
こんな、偽りのさすらい人のために祈って欲しい
そこにいてくれるの? 僕のために?
こんな、偽りのさすらい人のために祈って欲しい
支えて欲しい、こんなさすらいの自分を
(J・ブラウン)
PRETENDERは、偽善者や偽りの顔を持つ人物のこと。
人間だれしも、Pretennderなんです。
でも日々生きてかなくちゃなんない。
そして、みんな生かされている。
そんな、悲しいくらいに無情の歌。
このアルバムは、ほかにも、「The Fuse」、「Linda Paloma」、「Here come those tears again」、「The only chaild」などなど、名曲がぎっしり。
当時、妻が自殺してしまう不幸もあり、そんな影響や、残された愛息(ジャケットに登場)への思いなども内包してます。
アメリカという多民族国家を代表するかのようなジャケットの写真、白いTシャツを着て真っすぐ歩くJ・ブラウンが印象的。
今日、記事を書いて吹っ切れました。
ジャクソン・ブラウンの懐かしい歌をまた取り上げることとしましょう。
今日、昌平橋から見た神田川。
桜の花びらが、きれいともいえない川面に流れてました。
右手は、旧昌平橋駅。
左手の石丸電気は閉店。ソフト館も閉店。
ヤマギワも閉店・・・。空きビルたくさん・・・・。
この街も、音楽好きを潤せた顔から急速に変貌してしまった。
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