ベルク ヴァイオリン協奏曲 パイネマン&ケンペ
ライトアップを再開した東京タワー。
週末は、ダイアモンドヴェールをおとなしめに、平日は腰から下を通常モードで。
夏バージョンになると白い光になるはず。
でも、この方が暖かみと落ち着きがあっていい。
芝公園のバラと一緒に。
最愛のヴァイオリン協奏曲のひとつ、アルバン・ベルクの作品。
レアな組み合わせの1枚。
ドイツの女流エデット・パイネマンとルドルフ・ケンペの指揮するBBC交響楽団。
1976年のロンドン・ライブであります。
タワレコが復刻したDGに入れたドヴォルザークの協奏曲が人気を呼んだパイネマン。
わたしは、そちらはまだ未聴なわけだけど、パイネマンの名前だけは以前から知っていた。
レコード時代に、そのドヴォルザークのジャケットを店で見ていたし(買わないところがなんですが)、アバドの音源収集の中で、アバドが指揮したバッハの協奏曲のソリストをつとめている音源があることを発見していたけれど、その真偽のほどがわからない故に(アバドかどうか?)。
だからどうも謎というか幻っぽいヴァイオリニストに感じていた(聴いたことないのに)。
そして、ようやく聴いたのが、ベルクだった。
「ある天使の思い出に」 とスコアに記された、この甘味かつ陶酔的、そして宗教色や民族色も漂わせた協奏曲の魅力に、わたしはもうながらく取りつかれている。
精緻に、巧みなまでにイメージや仕掛けがその構成のいたるころに施されたベルクの作品の数々。
この協奏曲も例外でなく、アルマの娘マノンのこと、自身の恋のことなどを回顧しつつも、それらを綿密なる筆致でもって十二音技法による協奏曲の形式に封じこめた。
そんな巧みの作品を、パイネマンは繊細な音色のヴァイオリンでもって美しく弾いていて、これまでいろいろと聴いてきたベルクの中でも一番女性的で、透明感あふれるものであった。
これを聴いちゃうと、チョン・キョンファとかムターなどは、情が濃すぎて聴こえてしまう。
パイネマンは外に向かって音が放射してゆくのでなく、あくまで内向きに、感情の機微も控えめに捉えているように聴こえ、わたしはこの「控えめ」なベルクがいたく気に行ってしまったものだ。
ケンペのベルクというのも珍しいかも。
もちろんオペラ指揮者だから、ベルクはもちろん指揮していたはず。
広範なレパートリーを持ちながら、レコーディングに恵まれなかったので、こんなライブ録音が出てくると嬉しい限り。
ロイヤルフィル時代にグラゴルミサの録音があった、カップリングのヤナーチェクのシンフォニエッタは貴重だし、まして、英国もののティペットなどは驚きだ。
いずれも、ケンペらしい堅実でゆるぎのない真面目な演奏だし、ベルクもパイネマンを支える呼吸ゆたかな表情がとても新鮮に感じた。
ロンドンでの活動は、コヴェントガーデンとビーチャムのあとのロイヤルフィル。
その後が、晩年最後のポスト、BBC響だったけど、任期を残して亡くなってしまう。
いつも思うけれど、70年代亡くなったケンペとケルテスがもっと存命だったら。
ベルク ヴァイオリン協奏曲の過去記事
「シェリング&クーベリック」
「ブラッヒャー&アバド」
「渡辺玲子&シノーポリ」
| 固定リンク
| コメント (6)
| トラックバック (0)
最近のコメント