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2011年5月11日 (水)

ワーグナー 「にわとこの花のかぐわしさ」~マイスタージンガー

Elderflower1

震災から2か月目の今日。
台風と前線の影響で、関東も午後からしっかりとした雨。
夏日の昨日と10度以上違うこの気象。
いったい、どうなってるんだ、と、手のほどこしようのない気象や自然現象に憤りを感じてみたところで、どうしようもない。

わたしを神奈川フィルに導いてくださり、ブログでもひとつの指標として日々更新されていらっしゃったyurikamomeさん、昨晩、そのブログを停止します、との報を受けて、すっかり動揺してしまいました。
ブログを通じて、お知り合いとなり、いまでは、定期的に盃を交わす間柄です。
残念ですが、yurikamomeさんが、熟慮のすえ、決断されたこと。
決断を尊重したいと存じます。

事情は、まったく異なるかもしれませんが、わたしも、実は偶然にも、ここ数日考えていたことが、ブログの継続。
わたしを取り巻く環境、日々変わっております・・・・。
辞める下準備も実はしました。

厳しいですが、でも、気持ちが続く限りやってみようと思いました。

Elderflower2

晴れてた連休に、都内で見つけたこの花。
やたらと芳しい香りで、思わず立ち止り、しばし佇み、そして通り過ぎて、さらに香りの記憶を呼び覚まされ、再び舞い戻り、写真を撮りました。

帰ってからネットで調べましたところ、やはり、想像どおり、「にわとこ」でございました。
エルダーフラワーは、ヨーロッパでの初夏ではおなじみの草木で、薬草や飲料水のテイストとして定番。
甘い香りが、周囲にただよってました。

そして、ワーグナー・ファンとしては、中世ドイツの街の市民の物語「ニュルンベルクのマイスタージンガーで、ハンス・ザックスの庭先に咲いて、芳香を漂わせているのもこの花。

ハンス・ザックスが、この木の下で、夜、靴職人としての職務に励みながら、昼間に出会った、若者の斬新かつ心を打つ進取の歌に心乱されつつも、「でも、おれは、あれはあれで気にいったぞ!」と同調し、応援してゆく気持ちを歌う。

ワーグナーのすごいところは、劇そのものの持つ深さと訴求力。
そして、そこにある人物たちの強い個性に、われわれ普通の一般人でも共感や反発心を持ちうる描き方だということ。
そこに、強烈な音楽が付随する。
歴史上の人物ザックスに、ワーグナーがつけた人格者としての個性は、その音楽にしっかり反映されていて、オペラの役柄で、わたしたちが、なりたいと憧れる人物のひとつとなっている。



こちらは、ベルント・ヴァイクルのザックス。

バイロイト音楽祭のウォルフガンク・ワーグナーの具象的な演出で、マイスタージンガーの舞台に相応しい美しい舞台。
背景には、ちゃんと「にわとこ」がありますよ。


ブリリアントな声もよろしく、見栄えもいいヴァイクルのザックス。
バイエルン国立歌劇場の来演で実演に接し、その後かぶりつきで、飯守先生の指揮でリサイタルを聴き、新国では自身の演出を観劇し、で、ともかく「マイスタージンガー」においては、ヴァイクルは私にとって、一番親しい存在なんです。

あと、最高のザックスと思っているリッダーブッシュと、実演もカラヤンCDも素晴らしいテオ・アダム、この3人がザックスのわたしのベストでしょうか。

この2幕のモノローグでは、新しい芸術の勃興を感じ取り、それを積極的に受け入れようとする心意気を歌う。

そして、第3幕にもある長いモノローグ。
そこでは、新しいものを受け入れるには、自身の密かな愛情も押し殺し、影にまわって、新しい世界を導く手助けを、自らがなす決心を歌う。

新しいもの、革新を行うには、これまでの定番や成功者が不利益を被るもの。
当然に彼らの抵抗がつきもの。
それを打破せんとする若者の後押しをする旧世代の人物も影ながら存在する。

いつの時代にも、このような図式はあてはまります。

いまの危機状態の日本にも、そうあって欲しいと思います。
いくつもの革新的な考えや、メソッドが確実にあるのに、それらは必ず潰され消されてしまう。

ワーグナーの作品には、こんなふうに、その作品に深いメッセージ力が必ず込められているのです

「ベルント・ヴァイクル オペラアリア集」

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コメント

yokochanさん、辛いところですね。
私は完全休業状況です。“実情は違いますが”。
でも、すごいペースで更新していたのです。毎日でなくても、気が向いたときに更新すればよろしいではないですか。
yokochanさんの記事を楽しみにしている方は大勢いらっしゃいます。私もそのひとりですよ。ちなみに、記事がやっと追いついてきましたので、1,2か月以内で“COMEDIA”再開するつもりです。

投稿: IANIS | 2011年5月12日 (木) 21時10分

IANISさん、こんばんは。
私的なことも書いてしまえるのがブログのいいところで、日々の現状を皆さんに見て、またはアドバイスしていただけるってところも、効能のひとつかと思ってます。

そして、そうなんですよ。
ペースを落とせばいいんですよね。
書き貯め記事もいくつかありますし。

でも、心情が日々変わるもので、かつて書いた、聴いたものが、その日に同じように感じられないのですよ。
難しいものです。

身に余る暖かいお言葉に後押しされ、工夫しながら続けていこうと思ってます。
COMEDEIA再復活、楽しみにしております。

投稿: yokochan | 2011年5月12日 (木) 23時50分

管理人さんこんにちは。

貴兄のサイトには同年代の愛好歴をもたれ幅広い視点と優しさに溢れる講評に楽しみ、いつも次回にと期待しております。
大変でしょうがどうかこれからも味わい深い音楽ご紹介お願い致します。。

私の店名マイスターフォークは勿論マイスター・ジンガ―から頂き2代目で40年なりました。
ヨッフムとカラヤンが懐かしいです。
前奏曲はハインテンクのテンポが一番好きです。

投稿: マイスターフォーク | 2011年5月13日 (金) 05時41分

今晩は。yurikamomeさんがブログをお止めになったのには私もかなり驚きました。ブログ主様がお止めになってしまうと、寂しがり屋で、貴ブログをネット上の貴重な居場所として掛け替えの無いものと思ってきた私もかなりショックを受けることになってしまいます。今までの精力的な更新ペースが驚異的過ぎたのです。気が向いた時にゆっくりでもいいと思います。これからも博識に裏付けられた楽しい文章と写真をよろしくお願いいたします。

投稿: 越後のオックス | 2011年5月13日 (金) 22時33分

マイスターフォークさん、こんばんは。
励みになりますお言葉、ありがとうございます。
聴くと、記事を書く。
そんな日課を続けることが普通で、その普通を続けることがちょっと難しく思えたりもして悩んでしまいました。
それはいまも変わりませんが、書くことで、音楽もしっかり聴くことができるようになりました。
工夫しながら続けたいと思います。

ヨッフムもカラヤンも、ともに素晴らしいですね。
わたしも思い入れが深いです。
そして、コンセルトヘボウとのハイティンクも。
そのハイティンクのコヴェントガーデンのライブも、実に堂々たる名上演でした。

貴店を勝手ながらネットで拝見させていただきました。
土崎は7号線沿いに、わたしが前にいた会社の関係先があり、何度も行きましたし、その先、飯島や天王、男鹿もよく行きました。
いまはなかなか、訪問の機会がございませんが、いずれお伺いすることができればと存じます。

投稿: yokochan | 2011年5月13日 (金) 23時37分

越後のオックスさん、こんばんは。
御心配をおかけしてしまいました。
まだ迷いはありますが、うまく、それこそ工夫して乗り切ろうと思います。
いつも、ご覧いただいて、過去記事までしっかり掘り起こしていただき、おかげさまで、自分があの時何を、どのように思って聴いてきたかが反芻できます。
日々移り変わる環境や心情ですが、過去を振り返るのもいいことだな、と思って、時おり、あの時私は・・・、まどと見直したりしてます。

ザックスのような大人になりたい「さまよえるクラヲタ人」であります。

投稿: yokochan | 2011年5月13日 (金) 23時42分

管理人さん こんばんは。

パリ管の幻想はLP海外盤で散々に勉強させて頂きました。
白くなるまでです!
全ての楽器が細目で発音素材を感じさせるソノリテがまだまだ味わえた時代ですね。


例えばリ―ドの音が強めに響きの芯となる木管、ブラッシ―でバリバリの金管その割に音圧に乏しい…


すぐにクリュイタンスで別からの魅力を知ることが出来、しばらく置いてやはりアバド、シカゴに狂い…その後はデュトア、バレンボイムで幻想は現在に至りますが、何枚も無かったLPが今のCDとは比べようのない重い価値でした。

小沢、ボストンはTVで見ましたがその時代はアメリカの名手図鑑でした!

投稿: マイスターフォーク | 2011年5月17日 (火) 19時24分

マイスターフォークさん、こんにちは。
そうそう、レコードは聴きまくると溝が擦れて白くなるんですね。
子供時代のソノラマレコードがそうなりました(笑)

フランスのオーケストラの管は、独特でしたね。
クリュイタンスのラヴェルや、プレートルのトスカなどが耳にこびり付いている響きです。

CD時代になってから、幻想集めに拍車がかかりましたが、嗜好をこらしたジャケットの美しさは、レコードの比ではありません。お手軽なCDですが、ちょっとさびしいですね。
小澤後は、ボストン響は、ずっと来日がありませんね。
レヴァインも体調不良のようで、フィラデルフィアのようにならなければよいのですが。

投稿: yokochan | 2011年5月19日 (木) 11時36分

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