レナータ・スコット ヴェルディ・アリア集
たくさんあります、バラの種類。
低木種で、ほのかに良い香りでした。
調べたけれど、マリアンデールでしょうか。
レナータ・スコット(1934~)。
彼女の名前と、その歌声、そしてステージでの仕草やお姿は、私のような世代や、それ以上の日本のオペラ・ファンには、親しみと愛着、そして憧憬をもって思い起こされる名前です。
50年代にカラスの代役として燦然とデビューし、舞台とレコーディング両面で大活躍。
当時の若々しい音源もふんだんに残されてます!
その後、一時の不調時を経て、73年にNHK招聘のイタリア・オペラ団にて、ヴィオレッタを若きカレーラスと共演。
このときが、わたくしのスコット・デビュー。
テレビで何度も観ました。
小柄で、どこにでもいそうな身近な女性としてのスコットの演じ歌ったヴィオレッタは、青臭いカレーラスとの対比において、最初は無邪気、でもブルスカンティーニの味わい深いジェルモンの説得を経て、ひとりの愛する女性として目覚め、毅然と、でも悲しみを隠しながら辛い別れを受容してゆく。
いまでも覚えてます、素敵なヴィオレッタ。
それと、同じ年の演目の「ファウスト」。
同じテレビ観劇ですが、ヴィオレッタにも通じるマルガレーテ。
おぼこ娘のような無垢なスコットが、最後は聖母マリアのような女性として、愛する人を助けようとする力強さに満ちてました。
クラウス、ギャウロウ、サッコマーニといった超強力キャストによる、日本のオペラ史上に残る名舞台だったのではなかったでしょうか!
ファウストは、この演奏でなくてはデメになってしまった。
その頃から、すぐれた自己管理をともないながら、声に重さも増して、スピント系の強いロールも歌うようになった。
数々の録音がなされました。
フレーニと重なるキャラクターで、ともに舞台に録音にひっぱりだこでありました。
ふたりとも、愛すべきソプラノ。
ふたりの共演盤もかつてありましたが、廃盤は残念。
わたしたち日本人が大好きな歌手ふたりです。
スコット(1934)、フレーニ(1935)、ともにいつまでも元気でいて欲しいです。
ヴェルディ アリア集
「ドン・カルロ」~「泣くな友よ」、「世のむなしさを知る神よ」
「アイーダ」~「勝って帰れ」
「仮面舞踏会」~「わたしの最後の願い」
「エルナーニ」~「一緒に逃げて」
「群盗」 ~ 「おお、お父様」
「マクベス」~「日の光が薄らいで」、「消えてしまえ、呪わしいしみよ」
レナータ・スコット
トーマス・フルトン指揮 ブタペスト交響楽団
(1983.9@ブタペスト)
正直、声のピークは過ぎ、全盛期の彼女の声を知る身としては、少しばかり辛いものがあるが、毅然としたたたずまいに、それぞれの役柄の心情を深い情感をたたえながら歌い込む味わい深さは格別のものがあります。
悔恨に暮れるイタイ女性ばかりを選んだ渋い演目であるがゆえに、スコットの酸いも甘いも噛み分けた歌唱は、そんなヴェルディ作品にぴったり。
作品の素晴らしさもあって、エリザベッタ(ドン・カルロ)とアメリア(仮面舞踏会)に感銘を受けた。
そして、マクベス夫人までも歌うようになった後期活動期のスコットに驚きとともに、少しばかりの悲しさも覚えてしまった。
完全にメゾの領域で、ドスも効かせて歌うスコットの声は、かつてのイメージをくつがえすほどに強烈だった。
一語一語に慎重に解釈を施す入念さと、全体を見通す自然な流れ。
スコットは相変わらずクレヴァーな歌だけれど、このマクベス夫人には驚きだった。
こんな風に、スコットは歳を経てもとどまることなく進化していました。
若い頃の耳洗われるようなベルカント歌唱から、後年の味わいを伴った劇的歌唱まで、ひとりの大歌手の足跡を尊敬の念を持って受け止めたい。
そして、一方こちらは終わってしまいました。
さよなら・・・・・。
| 固定リンク
コメント