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2011年7月26日 (火)

ワーグナー 「タンホイザー」 バイロイト2011

Tanhauser_1_2

あらら、またまた、いや~な感じ・・・・。

バイロイト音楽祭2011が、7月25日から始まりました

画像は、バイエルン放送のネットから拝借しております。

おなじみ、ハンガリーのバルトーク・ラジオ
1ヶ月間、わりと高音質でストリーミング放送してます。
昨夜は早速ライブ収録して、音源化しました。

今年は、4部作リングがお休みで、その準備期間が2年、すなわち、リングなしの年が2年あって、その1年目。
再演の多くに混じって新演出と合わせて、5演目が楽しめる年になってます。

そして、その新演出は、セヴァスティアン・バウンガルテンによる「タンホイザー」。
バウンガルテンは40代前半の若手で、ベルクハウスやウィルソンの助手をつとめながら学んで、ベルリンを中心に頭角を現した人(らしい)。

上の画像は、歌合戦の場面のようです。
カラフルだけど、色とりどりのタンクに、地下秘密工場のような様相。
なんで、こんなところで、歌合戦すんの?
企業の社内催しみたい。

Tanhauser_2

ヴァルトブルク城が地下工場とすると、ヴェヌスブルクは牢獄。
しかも中には、怪しげな半獣たち・・・・。
なんじゃこりゃ??

Tanhauser_3

 

人々は、こんなタンクにすがって祈ってる。
このタンクには、曜日が書かれてる。
そして、アルコール化合物との表示も・・・・・?
ドイツの報道では、これはバイオガスのプラントと書かれてます・・・。

Tanhauser_4

だから、一般人と違う姿恰好をした本来の騎士たちは、工場経営陣でしょうか。

背景のマリアの絵には、「Kunst Liebe」と書かれてあります。
芸術愛、芸術への愛、愛の芸術・・・・。
それこそが孤立するタンホイザーの使命か?

Tanhauser_5

おそらく、最後の大団円。

檻の上に倒れしは、タンホイザーなり。
その上部には、経営陣とマリアと化したエリザベート(蘇りか!)
下には市民とバイオの犠牲者の半獣なり。
真ん中に控えしは、ヴェーヌスなりや。

身ごもってカエルのような腹ぼてだったヴェーヌス。
(実際、おたまじゃくし=独紙では精子、のような物体が出てましたぞ・・・悲しいよ、なんでそうなの?)
目出度く、おそらく、ご出産。

バイオハザード・タンホイザーかい?

舞台写真から、あれこれ想像。
もうやだ、こんなの。

昨年のノイエンフェルスの方がずっとファンタジーがあります。
これじゃ、まるであの、くそシュルゲンジーフと一緒だよ。

Tanhauser_6

限られた情報だけで、決めつけてはなりませんが、好きになれない昨今のいや~な演出のひとつですな!

バイロイトのサイトをずっと見ていて、演目のサイトのモティーフにラッパのような画像が昨年来、出ていたのだけれど、これは楽器じゃなくて、「じょうご(ろうと)」だったのね。
薬品をこぼさず、別容器に注入する道具ですよ。
空しい・・・・・。
ときおり、その器具らしきものが転がる音がしてます。

まだ決めつけちゃいけませんがね、音楽をいかさない舞台はいけません。

こんなんなら、なにもバイロイトでやることはねぇだろうよ。
ドイツなら、どんな劇場でも、いまどきこんなだし。

      領主ヘルマン:ギュンター・グロイツベック 
        タンホイザー:ラルス・クレーヴマン
      ウォルフラム:ミカエル・ナジ    
        フォーゲルヴァイデ:ロータ・オディニウス
      ビテロルフ:トーマス・イェサッコ  
        ハインリヒ:アルノルト・ベヅゥィエン
      ラインマル:マーティン・シュネル  
        エリザベート:カミラ・ニールント
      ヴェーヌス:ステファニー・フリーデ 
        牧童:カーチャ・ステューバー

 トマス・ヘンゲルブロック指揮バイロイト祝祭管弦楽団
               バイロイト祝祭合唱団
     合唱指揮:エーベルハルト・フリードリヒ
         演出:セヴァスティアン・バウムガルテン
           (2011.7.25@バイロイト)


初登場ばかりの歌手に指揮者。
ところが、われわれ日本のオペラファンには、おなじみの歌手ばかり。
新国の目利きのよさと、バイロイトをはじめとする欧州オペラハウスとの連携ぶりを評価したくなる。
グロイツベルク、ニールント、フリーデが新国組。

今回のオープニング視聴では、ニールントの清々しさと安定感が光り、クロイツベルクとフリーデはやや不安定。
緊張や暑さによる体調不良もあるかもしれない。
西部の娘、ムツエンスク・マクベス夫人、バラクの妻、と新国を震わせてきたフリーデの不調は残念です。
ニールントは、新国の舞台では大人のマルシャリンの素晴らしい歌唱に演技だったが、ここバイロイトでは清純な歌い口が心を打つ。
 そんな彼女、というかエリザベートも3幕では、血みどろになってます・・・・・orz

ロックも本国では歌うスゥエーデンのクレーヴマンは、やや一本調子。
その声は、同じタンホイザーを歌った、リチャード・ヴァッサールを思い起こす。
この人、乗り始めると、すごそうで、その片鱗を2幕のやぶれかぶれのヴェーヌス讃歌、3幕のローマ語りで確認できましたよ。
ナジ(Nagy)のウオルフラムのいい人ぶりと美声がよい。
この人、活躍しそうです。

歌手たちは、プロダクションを重ねて、落ち着いてゆくことでしょう。

そして、注目はヘンゲルブロックの指揮!
この人はいい。
古楽と現代音楽で着実な足場を築きあげ、いまついにワーグナーに挑んだ。
北ドイツ放送響の主席となったヘンゲルブロックの、古楽から現代音楽までを、豊かな知性に裏付けられた自然で生き生きとした解釈が、きっとこれから音楽界を席巻するのではと思わせる。
 全編にわたって、新鮮無垢なワーグナー。
弾むモティーフに、息づく歌に、適度に早めの速度感。
内声部までもよく聴こえる透明感。
いいです。
過去記事で、ヴォジーシェクの交響曲バッハのマニフィカトを絶賛しました。

ちなみに、ドレスデン版にパリ版を交えた折衷版。

こうして、ネットで音楽だけ聴いてる分にはいいんだけれど、舞台の様子を画像にしても知るにつれ、あれこれ想像して、文句つけたくなる昨今の演出。

普通じゃいけないんですか?
なんで、そうしなくちゃいけないんですか?
ワーグナー家以外の演出導入の初期、G・フリードリヒの「タンホイザー」はものすごい反発にあった。
人々にナチスを思わせる軍服を着せてしまい、そこからのアウトローたるタンホイザーを描いた。でも、それくらいはいまや生易しいもの。

3.11を経た私たちには、もしかしたら片腹痛い内容なのかもしれない。
同じ終末からの蘇生では、シェローやクプファーのリングがかつて雄弁に存在している。
バウムガルトナー氏の意図を映像でもなんでもいいから観てみて、知ってみたいものだ。

昨年のネズミ・ローエングリンが今夏放映される。
去年の課題と疑問が、1年越しにしても確認できることはありがたいことであります!

このタンホイザー、1・2幕ではおとなしかったけれど、3幕終了後、威勢のいいブーイングが飛び交っておりました。

なんだか、聖地もチープになっちまったなぁ・・・・・。

追記)26日に記事を起こしたとき、エリーザベト役のニールントと、メルベトを勘違いしてました、修正しました。

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コメント

去年のローエングリンの様子はさまよえる様から伝え聞きました。その時の「ねずみであります」発言はこちらのブログ史に残る名言です。
この手の演出というか破壊というかデフォルメはおじさんには全く楽しめません。ちゃんとしうようよ(私が妻によく言われています)と言いたくなります。
映画もリメイク物は本編よりもグロイ感じになります。コロッケのモノマネも最初はリアルにマネてからデフォルメするのだそうです。そうか、世の中、極めるとデフォルメにはいるのか。
この様子ではドイツのオペラ劇場でワグナーを私は楽しめそうにもありません。ウィーンのいつもの伝統的な正当な演出で近く楽しみたいと思っています。

投稿: モナコ命 | 2011年7月27日 (水) 10時13分

こんばんは。おひさしぶりです。
タンホイザーが書いてあるので、じっくり読んでみると、あらめずらしい、いつも温厚なyokochanさんが言いたい放題ですね。
せっかくバイロイトまで見に行って、こんなもの出されたら怒り心頭でしょうね。

それにしても、このバルトークラジオ、教えていただいて感謝します。最近はウォークマンでかんたんに録音できるので、テレビ番組まで録音したりしています。これからローエングリン、パルシ、トリスタンとあるようなので、聴いてみます。タンホイザーはもうやらないのでしょうか?

投稿: にけ | 2011年7月27日 (水) 18時12分

モナコ命さん、こんばんは。
ネズミ記事、お誉めいただき恐縮にございます。
あれ以上に疑問の残るタンホイザーです(もちろん、数枚の画像だけで想像して決めつけるのは乱暴ですが)。

ちゃんとすることが、普通じゃない、というか評価されない先鋭のドイツ。
妙な社会性を持ち込まれても、ワーグナーの音楽は立派に響き渡るところが、やはり凄いことだと思います。

演出家が、ワーグナーの音楽の本質をしっかり掴んだうえで、デフォルメ加えるのなら許せますし、説得力もあるのだと思います。
怖いもの見たさで、このバイオハザート・タンホイザーを観てみたいと思います。

でも、伝統のウィーンやスカラ座がいいですねぇ。。。

投稿: yokochan | 2011年7月27日 (水) 21時36分

にけさん、こんばんは。
そうなんです、ちょっと怒っちゃいました。
妊婦のヴェーヌスに、出来そこないのニンフたちには、エロスも夢もへったくれもありませんよ。

映画の観すぎとしか思えません。

バルトークラジオは、音質がよく、1か月ちょっと、いつでも聴けるのが素晴らしいです。
バイエルン放送、すなわち、年末にNHKで聴けるものが音源です。
1回目上演のみの放送だと思います。

投稿: yokochan | 2011年7月27日 (水) 21時41分

こんばんは。聴きました。やっぱりなぜか引きつけられる曲ですね。yokochanさんの記事におされて、ひさしぶりに全曲楽しみました。ありがとうございます。記事、リンクさせていただきました。

投稿: edc | 2011年8月 4日 (木) 20時02分

euridiceさん、こんばんは。
タンホイザーは、シンプルで、序曲にそのすべてが集約されていると思います。
めんどくさいことしてくれた演出のようですが、音楽は素晴らしいです。
2幕後半のエリザベートの必死の嘆願には、いつも心打たれます。
ありがとうございます!

投稿: yokochan | 2011年8月 4日 (木) 21時09分

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