フランコ・ボニゾッリ~ナポリ・カンツォーネ
手近の野菜を手当たりしだいに煮込みます。
ホールトマトの缶詰をぶち込みます。
塩コショウ、ケチャップで味を調えます。
最後に、醤油をちょろっと入れてみます。
玉ねぎの甘さと、とろみが決めてなので、形を崩しませんように。
キリリと冷えたビールに、最高の一品です。
この煮込みに、カレー・ルゥを入れて、トマト煮込みカレーです。
100円の冷凍エビピラフと合わせてみました。
もう、最高じゃん
夏は、カレーにトマト、そして野菜だぁ。
肉がなくても、トマトがあればOKじゃん。
ほのかに酸味ただよう辛さ。
野菜の甘みも引き立ってましたよ
うんま~い
夏は、まだ始まったばかりなのに、くそ暑い。
そんな暑苦しさを増長するような、濃ゅーーいオジサンの歌を。
ジャケットだけで、引いちゃうでしょ。
でも、このオッサンの解放的で、野放図な歌は、暑さを上書きしつつも、それを忘れさせてくれるシンプルな快感がありまして、いつしか一緒になって大口あけそうな心地よい歌なのですよ。
このオッサンは、「フランコ・ボニゾッリ」さんとおっしゃいまして、1938年北イタリア・トレントに生まれ、2003年に惜しくも去ったイタリアン・テノールでございます。
テノール・ばか、その典型です。
豊かなバリトンの領域の声に、とてつもなくよく伸びる高音域。
それを自身が、強く意識してたし、パフォーマンス的に受けを狙う歌唱を披歴したものだから、一度、その歌声に生で接してしまうと、音楽的にいかがなものと言われつつも、すべてが許されちゃう愛矯ある存在だった。
コレッリとデル・モナコ、それにパヴァロッティを足して、それに破滅的な「いてまえ」路線を加味してしまった歌声は、超強力であるとともに、破綻と隣り合わせ。
そのスリル感が、また全身全霊のテノールを聴く喜び。
わたしは、二度ほど聴いたことがあって、いずれも、そんな「いけないスリル」を味わい、快感に酔ってしまったことがあります。
ガラコンサートでのこと。
トロヴァトーレ、トゥーランドット、リゴレット、だったかな。
大柄なボニゾッリ氏、いずれも、指揮者が完全に歌手にのみこまれ、必死に合わせてました。
ハイCを朗々と、どこまでも、いやっていうくらいにのばしまくり、アリアとしての形式もへったくれもなく、ともかく、気分のおもむくがままに、高音をふんだんに垂れ流してくれた。
われわれ聴衆は、興奮の坩堝で、アンコールをせがみ、そして、本編以上に野放図な高音を惜しげもなく垂れ流してくれて、大馬鹿ブラボーの大洪水大会だったんだ
ばかだねぇ~(笑)
でも、いまや、ボニゾッリのような歌手は絶滅してしまった。
ドミンゴを代表とする、知的で完璧、自身を巧みにコントロールする頭のいい歌手ばかりの世の中になってしまった。
絶滅品種のボニゾッリ。
ナポリ民謡の1枚が、ドイツのオルフェオレーベルから出ていること自体が面白い。
フレッシュなトマトをかじったら、思わず、着ていた白いシャツを汚してしまったような、そんな、笑いながら、あれっ、勘弁してよ、的な歌が次々に歌われます。
①O sole mio!
②Ti voglio tanto bene~世界でただ一人君を愛す
③Vaghissima sembianza~限りなく優雅な絵姿
④Musica proibita~禁じられた音楽
⑤'Na sera 'e maggio~五月の夜
⑥'O paese d'o sole~太陽の地
⑦Non ti scordar di me~忘れな草
⑧Mattinata~マッティナータ(レオンカヴァッロ!)
⑨Serenata~サレナータ
⑩Santa Lucia luntana~はるかなるサンタ・ルチア
⑪'A vucchella~かわいい口元
⑫Core 'ngrato~カタリ、つれない心
⑬Marecchiare~マルキアーレ
T:フランコ・ボニゾッリ
エルヴィオ・モンティ指揮
ローマ・音楽ユニオン・オーケストラ
ナポリ・マンドリン・アンサンブル
(1983.4@ローマ)
だれもが、心震わせる有名ナポリターナばかり。
さすがにレコーディングだから、大人しく歌っていながらも、ちょいちょいと、足を踏み出して破天荒ぶりを披歴してますボニゾッリ兄貴。
先達たちとは、異なる個性。
うまいけど、下手くそ。
暑い歌声にその個性は健在。
さすがのものでありました。
マッティナータの明るい陽光にさらされた天真爛漫ぶりが素敵なもの。
でもパヴァ様のように明るくなく、悲壮感が少し漂うところがヒロイックでもあり、テノールへの憧れもそそるものでした。
70年代なかば、何故か、カラヤンにご指名を受けて、トロヴァトーレを歌い、EMIにレコーディングがなされた。
あきらかにひとり浮きまくる、そんなボニゾッリ兄貴がいとおしい。
いろんなエピソードも満載の兄貴!
選んだカラヤンが悪い(笑)。
力強い兄貴の歌に、身も心も奪われ、いやなことすべてを忘れることができた80年代半ばが、私には、とてつもなく懐かしい。。。。
元気だった日本の一員として、走ってましたよ、わたしもね。
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「レオンカヴァッロ ラ・ボエーム ワルベルク指揮」
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コメント
おはようございます。ボニゾルリ。ようこそ紹介下さいました。ご案内のアリア集を私はLP2枚組で持っています。さまよえる様が2度もコンサートで聴いているとはうらやましい限りです。
その模様を「本編以上に野放図な高音を惜しげもなく垂れ流し」うまい!
そしてとりわけ「大馬鹿ブラボーの大洪水大会」!うますぎる^^
私はレコードとTVで見ただけです。TVでは「あー。。君ちょっと、髪を、髪ちゃんとしようよ」というのが第一印象でした。
歌い方はさまよえる様の表現が言い尽くしています。田の歌手とは(モナコとかコレルリとか)全く異質でした。勝手に歌っているなー。音楽的にはちょっと。でも興奮しちゃう^^このタイプいなくなりましたね。
投稿: モナコ命 | 2011年7月11日 (月) 07時10分
モナコ命さん、こんにちは!
ボニゾッリをご存知の方がいらして、とってもうれしいです!!
私たちの世代では、思い出深い存在でしたから。
いまや、正規音源は真面目なものばかりなので、そこからはみだすものが少なくなくて残念です。
ライブに接することができたことが、とても幸運でした。
ボニ兄貴は、今風の細かな演出にはついてゆけなくて、その場の体当たり演技をしそうで、そんなことを思うだけで、とてもうれしく思ったりしてます。
ほんと、こういうタイプの歌手はいなくなりましたね。
安全第一、完璧第一主義、かつイケメン。。。
寂しいですね。
投稿: yokochan | 2011年7月11日 (月) 22時25分
フランコ・ボニゾッリ。愚生は、ガルデッリ指揮の『カヴァレリア‥』(Denon)、カラヤン指揮の『イル・トロヴァトーレ』(EMI)の二つの全曲盤しか、持っておりません。確かに感興に乗ると野放図なまでの、情熱みなぎる歌唱を聴かせて下さった人のようです。実際のステージで絶好調のコンディションの歌いぶりに接すると、忘れ難い感銘を与えて下さった事でしょう。大手レーベルにさほど録音が見当たらないのは、感情を抑制し取り上げた演目にいずれも、そこそこの出来栄えを示す‥と言うタイプの人では無かったせいでしょうか。
投稿: 覆面吾郎 | 2021年7月31日 (土) 09時33分
ボニゾッリは、きっとスタジオ録音の枠組みに収まりきれなかった歌手だと思います。
使い勝手のよい、知的なドミンゴと対局にあるような存在だったと思います。
それにしても、ガラコンサートという、アリアだけに全集中できる場でのボニゾッリの歌唱はすさまじかったです。
投稿: yokochan | 2021年8月 3日 (火) 08時19分