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2011年7月23日 (土)

ルネ・コロ singt ワーグナー&シュトラウス

Yuri

とある公園でみかけたユリの花。

このあたり、ユリの甘い独特の香りに包まれておりました。
一本でも存在感ありまくりの香り。
ちょっと間違えると毒々しい。

けれど、夜にほのかに香ってきたりしたらもう、ロマンティックな気分になっちゃう。

そう、ワーグナーR・シュトラウスの夜の音楽を聴きたくなる。

Rune_koro_wagner_strauss

ルネ・コロ

もう引退してしまったけれど、たゆまぬ自己統制で長い歌手生活を送ったテノールのひとりだ。
もっと歌えると思ったけれど、潔く身を引いた。
でも、最後のオペラ公演といわれた人生に疲れてしまったような名舞台「タンホイザー」を観劇したけれど、その後、またやってきて、フォルクスオーパーの「こうもり」に出演していたが、これは未観劇。

コロは、私のワーグナー受容とともにその経歴もずっと同じくしていて、デビューから引退までを見守った歌手のひとり。
何度も書きますが、ワーグナー好きになったのは1972年頃。
コロのデビューのひとつ、ショルティの「魔笛」や「タンホイザー」「パルシファル」「千人交響曲」、カラヤンの「マイスタージンガー」「メリーウィドー」、スウィトナーとの「ワーグナー集」、・・・・、70~72年頃の録音を次々に聴きまくった。
甘い声ながら、ワーグナーを力強く、一点の曇りひとつなく歌うコロの美声に酔いしれたのだ。
その頃の録音に、イタリアオペラの二重唱をオジェーと歌ったものがあるが、まったく発売されることがなく、いまに至っている。

その後、巧みな声のコントロールと神経質なまでの自己鍛練でもって、重たいワーグナーのロールを手掛けるようになったコロは、私たちワーグナー・マニアにとって希望の光であり、神様的存在となった。
払底していた、ヘルデン・テノールに、P・ホフマンやJ・イェルサレム、シュンクなどが登場し、嬉しい時代を築き上げた80~90年代。
その橋渡しと牽引役は、ルネ・コロだった。

こんな思い出話を書きだすと止まりません。

コロが来日すると、ほとんど聴いてました。
唯一聴けなかったのが、「トリスタン」と先にあげた「こうもり」。
おかげさまで、「タンホイザー」「マイスタージンガー」「リング」「パルシファル」を体験することができ、それらのタイトルロールのコロの歌と演技は、いまだに脳裏にしっかりと焼き付いております!

オールマイティのドミンゴが、ワーグナーのテノール役をほぼすべて録音している(ジークフリートだけは抜粋)が、ルネ・コロもほぼ同じ。
唯一ないのが、ジークムントの全曲。
かつて若き日に録音したスゥイトナーとのアリア集に収録されているが、「父が約束した剣」と「冬の嵐は去り」の2曲のみ。

その欠落を少し補う企画が、1992年に録音された今日のCD。
ワーグナーとR・シュトラウスの、夜にまつわる曲を集めた1枚。
しかも、ティーレマンが指揮をしております。

 ワーグナー 「ヴェーゼンドンクの5つの歌」

         「トリスタンとイゾルデ」第3幕~トリスタンの夢

 R・シュトラウス 4つの歌曲~「誘惑」

 ワーグナー 「ワルキューレ」第1幕
          「父の約束した剣」、「君こそは春」(ジークリンデ)~
          「冬の嵐は去り」

 R・シュトラウス 「4つの最後の歌」~「夕映えに」

     テノール:ルネ・コロ

     ソプラノ:イングリット・ハウボルト

  クリスティアン・ティーレマン指揮ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団
                 (1992.11@ベルリン・イエスキリスト教会)


歌うならば根こそぎ。
そう、男声歌手によるものとしては珍しい「ヴェーゼンドンク」と「4つの最後の歌」。
コロの美声と、考え抜かれた緻密でかつ繊細な歌唱は、普段聴きなれた女声によるものと比して、まったく違和感がなく、むしろ新鮮な輝きと味わい深さを感じさせてくれる。

名歌手が、言葉のひとつひとつを噛みしめながら歌うと、時に息が詰まるようで、そして時に白けてしまうものだが、コロの声は、毎度聴きなれた甘さと厳しさのバランスの取れたものなので、最初から最後まで気が抜けず、そして親しみをもって聴くことができる。

ジークムントにしては、ちょっと入念にすぎ、老獪だが、これもまた「コロのジークムント」として印象深いものであった。
そして、トリスタンの迫真の歌唱は、クライバー盤より12年を経て、場数を踏んだ安定感と空しさ、そして悲しさまでをも巧みに歌い出していて、久方ぶりに聴いたワタクシは、疲れ切った自分と重ね合わせてしまい、そら恐ろしいほどに同感してしまった。
やけくそにならない、なりきれない冷静なトリスタン。
それでいて、疲労と悲しみ、そして悲哀に溢れたトリスタン。
ほんの9分程度のこの場面に、いまのワタクシは大いに入れ込んでしまった!

そのトリスタン的世界を、しっかりと歌い込んだのがコロの「ヴェーゼンドンク」歌曲集。
なんて、悲しくって、寂しいのだろう。
憧れも、ここでは寂しいです。

最後は、シュトラウスの人生の夕暮れの境地を淡々と歌ってくれます。

ティーレマンの指揮は、実に雰囲気よろしく、コロの歌の邪魔をせずに神妙に同化しているように聴こえました。
そして、オケが実にうまかった!

真夏だけど、夜や夕暮れの寂しさ、悲しさを、まるで人生のように歌っているルネ・コロの名唱でございます。

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コメント

「こうもり」観ました。その前がベルリンドイツオパーの「タンホイザー」(コウトではなく指揮ティーレマン)、きっかけはハンブルグ歌劇場のタンホイザー放映(指揮アルブレヒト)、どちらもNHKホールでしたね。
若い頃のウィーン気質やチャールダーシュ姫(アンナ・モッフォ)の映像も宝物です。手持ちDVDにはサヴァリッシュ指揮のリングありますが、まだ全曲観てなくて、そのうちと思っています。

投稿: ご~けん | 2011年7月24日 (日) 05時55分

ご~けんさん、こんにちは。
ルネ・コロは、日本によく来てくれましたね。
大きなホールでもしっかりよく通る声は、さすがと思いました。
リサイタルで「詩人の恋」も聴きました。
ご指摘の、オペレッタも頃ならではですね。
ヘルデンテノールであり、オペレッタ歌手でもあり、リート歌手でもありました。
多彩なテノールです。
サヴァリッシュのリングにおける名唱は、ベーレンスとともに最高に思います!

投稿: yokochan | 2011年7月24日 (日) 13時43分

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