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2011年8月20日 (土)

ドビュッシー 「海」 カンブルラン指揮

Kanazawa

ある年の夏の終わりの海。

われながら、完璧な構図に思います(自慢しちゃってますな)。

空と渚と夕日の微妙な雰囲気。

わたしは、こんな詩的な構図が大好きなのです。

こんな景色を眺望すると、いつも脳裏にはそれに応じた音楽が鳴り響きます。
ディーリアスやグリーグ、バックス、シベリウス、ドビュッシーなどなど。

Debussy_cambreling

ドビュッシー交響詩「海」。

日本の浮世絵からインスパイアされた海の情景の音楽。
その音楽に、わたしたち日本人は、どれだけ印象派という、曖昧で、そこはかとない雰囲気を感じ、同感してきただろうか。
ワーグナーに感化された時期も経て、絵画をはじめとするフランス印象派芸術の流れを音楽面で実現化したドビュッシー。

そのドビュッシーの作り上げた音楽の世界が、濃淡は濃い目で克明に、交わりは微妙に薄く、かつドラマテックな具合があざやかに・・・・・、こんな具合にオーケストラによって描き尽されるのを今日のCDほど明確に聴くことはないかも。

シルヴァン・カンブルラン指揮の南西ドイツ放送交響楽団による、ドビュッシー・チクルスのなかの1枚。

読響の指揮者になってからのカンブルランは、実はまだ聴いたことがないのだけれど、フランクフルト時代やバーデンバーデン(南西ドイツ)の指揮者として、FM放送では、すっかりおなじみだったし、モルティエ治世下のザルツブルクの影の音楽監督としての存在には、ずっと気になっていた人。
近現代ものやオペラが大得意のカンブルランは、作曲をしない同じフランス人のブーレーズみたいな存在として感じていて、近代フランスものから、後期ロマン派、新ウィーン楽派を中心レパートリーとする、そのプログラミングがはなはだ魅力的な指揮者なのです。

ともかく音がはっきりした「海」。
ドイツの機能的な放送オーケストラなものだからよけいにそう感じる。
ロスバウトやブール、そしてギーレン。
歴代ツワモノ指揮者たちがつとめた南西ドイツ放送響(いまは、バーデンバーデン・フライブルクSWR交響楽団というピンとしない名前になってしまった)のイメージに、カンブルランの明晰で明るい色調を加えて克明にした感じの「海」。

ともかく白日のもとにある、一日の移り変わりのはっきりしたこちらの海の情景は、とてもユニークでかつ面白い聴きものでした。
 楽器ひとつひとつが、浮き上がって見えて聴こえる。
普段埋れてしまうフレーズや、ちょっとした橋渡し的な場面も、聴いたことないような感じに浮き彫りにされる。
最後のクライマックスは、たたみ込むことなく、じっくりとした盛り上げを築きあげるだけに、極めて着実な海の終焉を迎えることになる。
「海」フェチですので、たくさん音源を集めてますが、それらのなかでもユニークな存在。
 
思えば、読響はいつも実力派の、いい指揮者を引っ張ってくるものだ。
オペラも日本で振ってもらいたいカンブルラン。
南西ドイツのあとは、シュトットガルト歌劇場の指揮者となる予定。
こちらは、ライトナー、カルロス、ツァグロセクなどが歴代で、きっとカンブルランもこの劇場で名を残すものと思われるし、ワーグナーへの挑戦も大いに期待できる。

「幻想」とともに、「海」もシリーズ化しようかな。
あと、「フランクの交響曲」も。

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コメント

お久しぶりです。

カンブルランいいですよね。僕は、彼が読響の指揮者になられてから何度か足を運んでいますが、毎度毎度、オケから引き出す響きの鮮烈さにKOされています。ただ、CDは一枚も持っていないんです。ついつい、ライブで聴ける人のCDは後回しになってしまうんですよね。マリナーは別ですが(笑)。

投稿: ナンナン | 2011年8月21日 (日) 00時19分

ナンナンさん、こちらこそご無沙汰です。

カンブルランは、このCDとオペラのいくつかですが、多くはFM放送で、ライブは未体験です。
読響のプログラムは魅力あるものばかりですので、一度は聴きたいと思ってます。

そうですね、日本に始終来てくれるとなかなかCDは買いませんね。
デュトワとかブロムシュテットなんかがそうです。
そしてそう、マリナーだけは例外ですな(笑)

投稿: yokochan | 2011年8月21日 (日) 12時21分

ラベルの海、よいではないか。長年カラヤン&ベルリンフィルのDG盤を愛聴してきました。一番すり切れているLPの1枚です。ヤンソンス指揮でウィーンフィルの定期演奏会をウィーンで聴いてきました。この時のプロが海とショスタコービッチの5番という無茶な内容でした。リハーサルも聴いていたというか見てきました。
ウィーンフィルの定期のリハーサルもちゃんと入場料をとって公開するんです。しっかりしているなー。。。
その時はヤンソンスとウィーンフィルがテンポが全く合わず、「やばい!今止まる!あ!止まった。。」というリハーサルでした。ヤンソンスのテンポが遅すぎだったんです。またまた、いつもの吹奏楽ネタですが、この曲を最初に聴いたのもやはり吹奏楽の演奏、いつものように秋田市立山王中学校の演奏でした。どうも吹奏楽の影響を受けまくっています。。。

投稿: モナコ命 | 2011年8月24日 (水) 08時56分

モナコ命さまこんにちは。

山王中とはなにかご関係でもあるのでしょうか。。

いつも聴いて下さりありがとうございます。

この頃の海やダフニスを指揮された方は当団の顧問でコ―チされた方は現在音楽監督です。

日本を代表するバンドディレクタ―ですよ。


投稿: マイスターフォーク | 2011年8月24日 (水) 21時54分

モナコ命さん、こんにちは。
私の場合、カラヤンのフランスものは意識して逃げてきましたので、カラヤンの海は無縁なのですが、ここ最近のカラヤン見直しの一環で、海やラヴェルを聴いてみなくてはと思ってます。
EMIが、そうした中で、カラヤンとパリ管のラヴェルを廃盤にしてるのがけしからんことです。

ヤンソンスとウィーンフィルの演奏をお聞きなのですかぁ~?
ウィーンは一度きりの訪問ですが、しっかり計画しなくては、そんな機会はありえませんね。
うらやましいです。

毎度、感心してしまいますが、秋田山王中の凄腕は、県下の吹奏楽の実力の高さとともに、羨望を感じます。
「海」も吹奏楽しちゃうのですね。

秋田の海、とくに日の入りを堪能したことがあります。
日本海に沈む夕日、大すきです。

投稿: yokochan | 2011年8月24日 (水) 21時57分

マイスターフォーク様、さまよえる様のブログで勝手に会話するとおしかりを受けそうですが^^;
私は昭和40年代50年代の山王中学校の演奏がとても好きでした。この時の経験が今の音楽鑑賞に良くも悪くも影響を受けています。
今の山王中学校の演奏には正直全く興味も関心もありません。当時の木内博先生の演奏にとりわけ影響をうけています。
昨今はさまよえる様のようにオペラ鑑賞が中心なのでようやく音楽鑑賞も独り立ちできそうになってきています。
どうやらさまよえる様と私はほとんど同じ年代らしく、音楽の趣味や傾向が共通するところが多く、とても話しやすいので、こちらのブログが「お気に入り」のトップになっています。(勝手にすみません^^;)
ただ、さまよえる様の音楽への造詣がハンパないため、書き込みしたくても書き込む知識がなく、ただ見ているだけのスレッドが多いのも事実です。

投稿: モナコ命 | 2011年8月25日 (木) 20時56分

モナコ命様ありがとうございました。
木内博先生には個人的にも指揮を見て貰い指導受けたこともありその時の一言の重さが私の貴重な財産であり、音楽友達のほとんどは先生の教え子か影響受けた方ばかりです。


先生の音楽の授業ではチャィコの悲愴の最期を生徒達に電蓄で聴かせて…まだだ、まだだ、聞え無いところに音楽があると72才の教え子の方が言ってます。
私の上司ですが…

投稿: マイスターフォーク | 2011年8月26日 (金) 07時59分

モナコ命さん、こちらにもありがとうございます。
偏った嗜好のヲタブログをいつもご覧いただき感謝感激です。
ヲタ歴が長いものですから、自然に身についてしまったネタばかりで、恐縮です。
山王中学の木内先生というお方がご立派だったのですね。
お近く同士とお見受けしますので、こちらでどうぞ会話というか、コメント合戦をお楽しみください。
ブログの効能は、こんなところにもあります。
楽しいものです。

投稿: yokochan | 2011年8月26日 (金) 23時12分

マイスターフォークさん、こんばんは。
モナコ命さんとお近くにいらっしゃるご様子。

そして木内博先生のことを、ネット検索しましたが、秋田の音楽文化の発展に尽くされたとの記事を読みました。
なんだか羨ましく思える、人の輪です。
悲愴のくだりも、なかなかに興味深いです。
静かに終わる音楽には、拍手はいらないのではと思います。

投稿: yokochan | 2011年8月26日 (金) 23時29分

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