アイアランド 「忘れ去られた儀式」 ヒコックス指揮
向こうは海、のいつもの山の上。
木の中の木漏れ日は、朝日でした。
ジョン・アイアランド(1879~1962)。
英国音楽作曲のなかでも、かなり好きなアイアランド。
そしてまだ未聴の作品も多いし、音源化されていない曲も多い。
快活であったり、詩的でデリケートな小品も多いアイアランド。
そんななかで、一番のお気に入りが、「The Forgotten Rite」~「忘れ去られた儀式」。
と、訳していいのでしょうか?
アイアランドの比較的初期の作品で、若い時分にチャンネル諸島のジャージー島とガーンジー島に訪問した時の印象を後にまとめたもので、1912年の作曲。
そのチャンネル諸島は、英仏海峡のフランス寄りに位置するノルマンディの島々。
位置的にはフランスに近いけれど、歴史的には英国領となっており、英国王室の所有とされる島々。
しかし、イギリス連合王国には属さないという複雑な性格となっているそうな。
バイキングの名残もあり、そしてケルトの雰囲気もあり、という英仏・北欧の入り混じった独特の雰囲気みたい。
そして、なんといっても美しくも険しい海に囲まれた壮大な自然をその立地から想像できる。
ガーンジー島の画像を探しだしました。
それと、CDジャケットは、ジャージー島の古城のあと。
これらのイメージそのまま。
アイアランドの曲の中で、もっともロマンテックで、甘味な詩情と神秘的な様相と、壮絶なクライマックスを備えた大オーケストラのための小品。
マンチェスター生まれの英国人ながら、海を愛し、ケルトの文化にも深く共鳴していたアイアランドは、かつて訪れた島々の思い出を、その独特の感性でもって思いおこし、交響的な前奏曲としてまとめた。
その名もForgotten Rite。
いにしえを偲ぶ、遠い昔に海に囲まれたその地に住んだ人々や、その風物、そして自然を読み起こしたものと聴こえる。
ドビュッシーを敬愛したアイアランド独特の神秘感と、ミステリアスな曲想と響きに包まれてます。
ごく静かに弦の囁きのようなモティーフで始まるが、それは海のさざ波のよう。
そこに、木管やホルンが優しい合いの手をいれつつ、神秘的に始まる。
やがて、ディーリアスの音楽にも通じる、大オーケストラによる情熱的な、しかし、甘味でどこか荒涼感をともなった大いなるクライマックスへと高まっていきます。
でも、そこに待っていたのは、ハープの清涼なグリサンドと、高弦の澄み切った響き。
急速に曲は静かになって、ハープやチェレスタを神秘的に伴いながら消え入るように終えてゆく・・・・・・・。
10分足らずの曲ですが、こんなに詩的で、心に静寂と安らぎ、そして自然の神秘感を夢想させる曲は知りません。
バルビローリの演奏で知ったのがもう20年以上も前。
ディーリアス好きならば、そしてバックスやモーラン、ハゥエルズにも通じるアイアランドの素晴らしさが共感いただけると思います。
そして、アイアランドを集中的に録音してくれていたヒコックスとロンドン響のクールでかつ熱い演奏には涙が出ます。
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント