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2011年9月21日 (水)

ハーティ 「ロンドンデリー・エアー」 トムソン指揮

Azumayama_cosmos_1

夏の日差しに少しお疲れ気味のコスモスでした。

Harty_thomson

アイルランド生まれの作曲家サー・ハミルトン・ハーティ(1879~1941)。
すでにその協奏曲作品を取り上げたおり、紹介しました。
編曲の達人として、ヘンデルの「水上の音楽」のフルオーケストラバージョンの演奏の際には、必ずこの人の名前がクレジットされてます。

今日は、もうだいぶ以前から聴いていた、ブライデン・トムソン指揮によるハーティ作品のアンソロジー盤を久しぶりに取り出してみました。

     「The Children of Lir」~「リールの子供たち」

     「Dubblin Airによる変奏曲」

     「The Londonderry Air」

     「Ode to a Nightingale」

        Vn:ラルフ・ホームズ

        Sp:ヘザー・ハーパー

     ブライデン・トムソン指揮 アルスター管弦楽団


最初の「リールの子供たち」は、ケルト伝説に基づく7つの場面からなる音楽詩で、30分以上の大作。

リールは、アイルランドの海の神で、愛する妻イーヴとの間にフィノーラという娘と3人の弟という4人の子供たちがおりました。
そのイーヴが先立ち、可哀そうに思った祖父からイーヴの妹エヴァを後妻にということで、再婚し、エヴァも当初は子供たちを可愛がったものの、リールが子供ばかり溺愛するものだから嫉妬心を起こし、あるとき、湖へ連れ出し、3人の子供たちを白鳥に変えてしまう。
人間の言葉や歌は使えるものの、最初の300年、次ぎの300年、最後の300年と、それぞれ湖を替え転々としなくてはならない運命までも科す。
そして、北の国と南の国の王子と王女が結婚することとなり、教会の鐘が響いたら、人間の姿に戻ることができるとした。
フィノーラは弟たちをよくかばって、根気強く過ごした。
そして、900年の後、えもいわれぬ美しい鐘の音が響き、4人は人間の姿に戻ることができるが、もう先がない老人の姿に・・・・。
教会の聖者は、洗礼を施し、そして4人一緒のお墓に。。。という希望を受け入れ4人の名は同じ墓石に刻まれることとなった・・・・・。


まるでローエングリンの一部のような物語。
アイルランドの美しく、厳しい自然の中で永年さまよう気の毒な白鳥たちの物語を、ハーティは抜群のオーケストレーションの才と哀愁さそうメロディの宝庫でもって、素敵な交響詩へと仕立てました。
ともかく、物悲しくも美しい音楽。
親しみやすい旋律にあふれているので、初めての方でもきっと楽しめるのではないでしょうか。
途中、ソプラノのアカペラソロが雰囲気よろしく入ってきて、静かな湖に浮かぶ白鳥の歌を思わせます。
最後、4人の死は、救われた魂が優しく昇天してゆくようで、思わず涙が出てしまいそうになります。
アルヴェーンの交響曲や、ツェムリンスキーの「人魚姫」とも類似点を見出すことができる、桂曲でございます。

次ぐ「Dubblin Air変奏曲」は、ヴァイオリンソロを伴った主題と7つの変奏曲。
そのテーマは、アイルランドのトラディショナルメロディ「The Valley lay smiling beforeme」で、トマス・ムーアのアイリッシュ・メロディから得たもの。
急緩豊かで、時として懐かしさも感じさせる曲で、全編ヴァイオリンソロが活躍する協奏曲作品でもあります。

そしてお馴染み「The Londonderry Air」。
ヴァイオリンソロと弦楽、ハープのために書かれたこの哀愁さそう名曲が、心に沁み込まない方がおられましょうか・・・・。
コバケンがどういうヴァージョンで演奏してるか、わたしはコバケン未体験(今後もきっと)だから知りませんが、このハーティ版と、そしてホームズの泣きのヴァイオリン、ブライデン指揮するアルスター管の心の底から共感しつつ切々と歌うこの演奏に、ワタクシは涙ぐんでしまうことしきりでございます。

最後は歌曲集「Ode to a Nightingale」。
キーツの詩に書かれたとても詩的な作品で、夜鶯の歌。
20分あまりの作品で、声楽部門での永年のパートナーだったアグネス・ニコルズのために書かれた。
時に、エルガーを思わせたり、ディーリアス風だったりと先達たちを思わせることもあるが、独特のウォーム・トーンはハーティならではで、ここでは、ヘザー・ハーパーの気品あふれる歌声が素晴らしいものです。
最後の場面が、とっても美しい。

 Up the hill-side; and now'tis buried deep
  In the next valley-glads
  Was it avission,or a waking dream?
  Fled is that music - do I wake of sleep?



「ハーティのヴァイオリン協奏曲、ピアノ協奏曲」

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