チャイコフスキー 「イオランタ」 フェドセーエフ指揮
北方の国を思わせるこの光景。
札幌の公園のひとこま。塔がいい雰囲気だしてますし、木々が完全に北国のそれです。
そして、10月に入って急に涼しく、いや寒くなりました。
音楽を聴くには快適な季節だけど、ちょっと急に寒過ぎだ。
私は、外で飲まないときは、ほぼ毎日発泡酒(たまにビール)を飲むのだけれど、その量が急速に落ちた。
気温と麦酒の摂取量は比例してますな。
しかし、北海道に行くと、乾燥してるし、冬は室内は暑いくらいに暖房してるから、ビールもこれまた美味いんだな、これが。
チャイコフスキーのオペラ「イオランタ」。
全部で13作あったチャイコフスキーのオペラ作品。
そのうち、破棄や未完、転用されたものを除くと9作。
しかし、いま名前を目にすることが多いのは、それらの中の5作ぐらいでしょうか。
「エウゲニ・オネーギン」「マゼッパ」「オルレアンの少女」「スペードの女王」そして「イオランタ」の5つ。
「イオランタ」は、1891年の作曲で作品69。
「スペードの女王」の翌年で、交響曲で言えば5番と6番の間の最充実期に書かれたわけで、オーケストレーションの巧みな筆致や鮮やかなまでに劇的な描き方、憂愁と抒情、情熱に富んだ奮い付きたくなるような美味なる調べの数々・・・。
素晴らしい作品であります。
マリンスキー劇場からの依嘱により、一晩でオペラとバレエとが上演できるようにと、ふたつの劇場作品を書くこととなり、そのひとつがこの「イオランタ」であり、もうひとつのバレエが「くるみ割り人形」(作品71)だった。
「くるみ割り」に溢れ出るメロディの宝庫を思いおこしていただければ、この「イオランタ」にも同様に美しい旋律が満ちあふれているであろうこと、想像できますでしょう。
1幕の抒情オペラと副題が付された100分あまりの麗しい恋愛劇。
「レネ王の娘」という戯曲に基づき、弟モデストが台本を担当。
15世紀、フランス南部の山中がその舞台。
チャイコフスキー 歌劇「イオランタ」
イオランタ:オルガ・ミキテンコ
レネ王:ベンノ・ショルム
ボデモン:ピョートル・ベッツァーラ
ロベルト:アンドレイ・グリゴリエフ
エブン・ハキヤ:ウラディミール・クラソフ
アルメリク:ロマン・ムラヴィツキー
ベルトラン:ニコライ・ディデンコ
マルタ:ニナ・ロマノヴァ
ブリギッテ:ベッラ・カバノヴァ
ラウラ:ラリーシャ・コステューク
ウラディミール・フェドセーエフ指揮 モスクワ放送チャイコフスキー交響楽団
モスクワ室内合唱団
(2002.3@モスクワ音楽院大ホールライブ)
レネ王の娘イオランタは、生まれながらの盲目で、王のもとから離れ、山に囲まれた別邸で乳母マルタとその夫で門番のベルトランや友人ブリギッテやラウラとともに、ひっそりと暮らしていました。
レネ王は、イオランタが盲目であることを自身に一切気付かせることなく、周囲にも言い聞かせ、皆は優しく注意深くイオランタに接していたのでした。
当然に外部からの音信もシャットアウト。門扉には、ここに入ったら死刑、とまで書いてある。
イオランタは、皆に囲まれて歌う。悲しい涙を知らずにすごしたけれど、心のうちの寂しさを。。。美しいアリアです。
一方、王の到着を知らせる使者がきて、やがて王が南方より名医を連れて登場。
医者ハキヤは、姫が真実を知り視力を強く望まないうちは治らないと強く断定し、王はこれまでの方針が間違っていたのか、と傷心。
ここでの神に憐れみを求める王のアリアも素晴らしい。
次ぎの場面・・・。
王によって定められたイオランタの許嫁ブルゴーニュ公爵ロベルトとその親友ボデモン伯爵が、山で道に迷い門前にやってくる。
ロベルトは、すでに心に決めた愛する人がいて王に断りをいれたいと情熱的な恋人讃歌を歌い、ボデモンはまだ見ぬ恋人に神聖な愛情を捧げる歌をそれぞれに歌う。
バリトンとテノールの聴かせどころです。
恐る恐る、庭に踏み入り、やがて館で眠るイオランタを発見。
魔界に踏み込んでしまったと救援を求めに走るロベルトだが、ボデモンは姫の美しさにくぎ付けに。やがて起きたイオランタと会話が始まり、ふたりとも魅かれあうように・・・。
手元にあった赤や白のバラを記念に所望したボデモンだが、イオランタが手渡すバラは白ばかり・・・・、やがてイオランタが盲目であることに気付いたボデモンは、彼女におおいに同情し、愛情を込めて光の素晴らしさと、闇にあってもイオランタの心の光を愛すと歌い、一方でイオランタは太陽の光、天からの贈り物を見たいと強く歌い始めます。
この二重唱の美しさと情熱の高まりには感動です。
やがて、王をはじめ、皆が集まってきて、ボデモンに驚くが、イオランタに盲目の秘密を明かしたとあって、なんてことしてくれた、と非難集中。
しかし、イオランタは光が見たいと所望し、王は名医による処方を進めるが、姫は仰せとあれば…的で少し消極的。
なればと、王は、もし目が完治しなかったらボデモンを家宅侵入で処刑にすると宣言。
イオランタは愛する伯爵のために、苦しみに耐え、そして光を見ることを強く望み信じる気持ちになります・・・・・。王と医者は顔を見合わせてニンマリ。
手術に向かった姫のあと、親友の救出に現れたロベルト。
そこで王とバッタリ会い、他に好きな人ができたから勘弁、と告白し、当然の成り行きに、王は喜んでボデモンを祝福。
そこへ、目に包帯をしたイオランタが、医者に添われて登場。
包帯をとると眩しさに眩みますが、木々の美しさ、そして空の光に感動します。
王の声に父の姿を認め、ボデモンの声に愛する人の姿を認め、全員でイオランタの目が見えるようになったことを喜び、神への感謝を捧げるなか、ハッピーエンドの喜ばしいエンディングとなります。
幕
どうでしょうか、シンプルな筋立てと、悪役の登場しない幸せなドラマ。
そこにつけられたチャイコフスキーの音楽も、再三書きますが美しさの極み。
正規ライブ録音で、音は極めて優秀。
歌とオケのバランスもよろしく、チャイコフスキー節を音の面でも堪能できます。
フェドセーエフは小細工を弄せず、チャイコフスキーのリリシズムと旋律美のよさをストレートに聴かせてくれます。
モスクワのオケも丸くなって、こうした曲ではヨーロッパ風になってきたように聴こえます。
歌手では、美人のウクライナ生まれのミキテンコのタイトルロールが素敵なもの。
ぼんやりと夢見心地の女性から、強い希望を持ったキリリとした女性への変化をとてもよく歌い込んでいるように感じます。
彼女は、この役やタチャーナで活躍中。来春はウィーンで、K・ペトレンコの指揮でイオランタを歌うみたいです。
あと相方テノールのベッツァーラ。
いまやひっぱりだこのリリックテノールです。
「ばらの騎士」のテノール歌手役を観たことがありますが、ともかく美声でかつよく通る声。
ポーランド出身として、イタリアオペラ以外にも、こうしたスラヴ系の歌にもとても強みがあるようです。ミキテンコと2人の二重唱には震えました。
ほかの歌手もいいです。
「イオランタ」は、愛すべき美しいオペラでした。
チャイコフスキーのオペラ、次は「スペードの女王」いきますから。
チャイコフスキーのオペラ記事
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コメント
こんばんは。
トロヴァトーレ行って来ました。とても楽しみにしていました。レオノーラ、マンリーコ、ルーナ、アズチェーナ、みんな、とても良い声でした。でも、音楽緩くて、途中で嫌になりました。線が細く冷たい感触でした。また、亡霊のような役が、アリア・重唱の時も、最初から最後まで解釈を強要するような演出は大変不愉快でした。いつものお寿司で気分転換してきました。
投稿: Mie | 2011年10月 2日 (日) 21時51分
「イオランタ」、とても美しく素敵なオペラであります。どうして人気が出ないんだろう?ちなみに、今度出るチャイコフスキー60CDボックスで、「オンディーヌ」以外の有名オペラがほとんど入手できます。当然・・・。です。
投稿: IANIS | 2011年10月 3日 (月) 19時35分
Mieさん、こんばんは。
オープニングのトロヴァトーレ観劇お疲れ様でした。
そして、とても羨ましく羨望のもとに拝読いたしました。
タマちゃんのレオノーラとフラッカーロがとても聴きたかったのですが、今回はパスでした。
新国のサイトで画像見ましたが、普通そうに見えて、舞台背景に骸骨やアズチェーナ風の亡霊の顔を見えたりして、少しキモイでした。。。
でも、お寿司とともに、羨ましいです!
投稿: yokochan | 2011年10月 3日 (月) 22時44分
IANISさん、どうも毎度です。
いまも、イオランタ、つまみ聴きしてます。
ほんとに素敵な作品でして、オーネーギンに劣らず、名旋律の宝庫に思います。
そして60CDの件、早速調べましたが、すごいですな。
きっと英語訳もなにもないのでしょうが、それしか音源がないので希少です。
困ったもんです。
投稿: yokochan | 2011年10月 3日 (月) 22時48分