ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」 ボールト指揮
パリの凱旋門。
フランス語で、「Arc de triomphe de l'Etoile」
「アルク・ドゥ・トリヨーンフュ・ドゥ・エトワール」
さぁ、鼻から空気を抜き出しながら、みなさんご一緒に読みましょう。
どうです? おフランスしてございましょう?
ナポレオン・ボナパルトにまつわる建造物のひとつ。
わたくしは、幸いに2度観てます。
一度目は新婚旅行で、コースには入ってなかったのに、運転手さんが気を効かせて、雨降るパリの街を走ってくれて、放射状に延びる道からライトアップされた雨に煙るこの門を望むことができた。
もう一度は、仕事で。ヨーロッパ勤務経験者の案内で、地下鉄を乗り継ぎ、シャンゼリゼのカフェで酒を飲み、歩いてこの門の下まで行き、舐めるように拝見することができた。
死ぬまでに、もう一度、この門と、エッフェル塔に登りたいミーハー1号のわたしです。
そして、凱旋門といえば思い出すレコードが、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」。
サー・エイドリアン・ボールト指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団。
1969年に発売された、1000円廉価盤の草分け、ダイヤモンド1000シリーズのなかの第1回目発売分の1枚です。
ハンス・ユイゲン・ワルターの運命(+渡辺暁雄の未完成)、ブロニスラウ・ギンペルのメン・チャイなどとともに、即座に購入しました。
その後も、何枚か買いましたが、このエロイカも含めて、友人と交換したりあげたりしてしまい、いまや手元には少ししかありません。
このボールトの英雄は、凱旋門がそのジャケット写真でありました。
当時、このシリーズのジャケットにあしらわれたヨーロッパやアメリカ、ロシアの風景写真は、音楽ととてもマッチしていて、まだ見ぬ世界への憧れとともに、音楽と風土の関係も推し量ることができて、とても刺激的だったのです。
おおらか、かつ呑気な時代ですし、いまの情報過多の世の中からすると、とても想像力をなにかにつけてかきたてられ、感性を豊かにはぐくむことのできた時代ではなかったかと思います。
CD化されたこの演奏を、それこそ40年ぶりに聴きました。
いやぁ~、どこもかしこも懐かしいです。
エロイカは、その後たくさん聴いてきましたが、思えば、この演奏が自分のその原点ではなかったのではないかと思ったりすることができましたよ。
初めて聴いた小学生時代は、運命・田園・合唱とならぶベートーヴェンの交響曲だからと、勢い込んで聴いたものだが、馴染みの旋律はなく、やたらと長いだけで、しかも少々威圧的な音の連続に、ちょっと戸惑ったものだが、このボールトのレコードを擦り切れるほど聴くことで、曲に馴染んでいった。
その後忘れ去ってた音源をこうしていま聴いてみると、長じてのちに、エルガーやRVWを通じて馴染みとなったボールトの音楽が、そのままに、ここにあることを発見できる。
昔などは、わかりようがないボールトの芸風。
いまこうして、構えの大きく、こだわりのすくないひと筆書きのような大らかで高貴なエロイカに、とても親近感と尊敬の思いを覚えることができる。
ゆったりとした大河の流れのような第1楽章。
思いのほか、早めのテンポでさらさら流れる第2楽章は、淡い英国絵画のよう。
堂々とした歩みが戻ってきて、さらに木管の鄙びた風情がいい感じの3楽章。
間合いの取り方が絶妙で、フレーズのひとつひとつに味わいのある終楽章は、まさに堂々と背筋を伸ばしたままに毅然としたフィナーレが待ち受けておりました。
音がやや丸っこくて、1957年という時代を感じさせますが、分離もよく録音はかなりいいです。
いやぁ、ベートーヴェンには似合わない表現ですがね、40年ぶりに聴くボールトの素敵なエロイカでした。
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コメント
実は私も凱旋門を2度見ました。1度目はクラヲタさんと同様20年以上前の新婚旅行、2度目は今月の夫婦旅行です。
また、ハンス・ユルゲン・ワルターの廉価盤にも、大変お世話になったのも思い出です。
投稿: faurebrahms | 2011年10月29日 (土) 22時50分
faurebrahmsさん、こんにちは。
わたしも、20年以上前の新婚旅行ですが、2度目もご夫妻で、というところがなんとも素敵ですね!
わたしには、訪れそうもないことかもです(笑)
ユルゲン・ワルターはいまも存命のようです。
可も不可もないところが、入門編として実に正しい演奏だったといまは思ってます。
懐かしいですね。
投稿: yokochan | 2011年10月30日 (日) 14時31分
管理人さん こんにちは。
スゥイ―トナ―
.シュタ―ツカペレ・ベルリンが地元にいらした時ですが、冒頭が鳴り高音弦がアレグロに刻み始めると思わずセコバイとビオラの頭のオジサンが顔合わせてニコリでした…俺達この曲好きなんだな~でした。
剛潔で印象的なエロイカでした。
投稿: マイスターフォーク | 2011年11月 1日 (火) 12時38分
マイスターフォークさん、こんにちは。
スゥイトナーとベルリン、いまや懐かしいコンビですね。
バレンボイムの指揮する同じオケとは思えないくらい。
楽員が顔を見合わせてニコリ。
なんだか、俺たちの音楽、って感じで、われわれ東洋人には及ばないドイツの根っこみたいなものを思います。
現在なら、ヤノフスキとベルリン放送が、そんなコンビになりつつあるような気がします。
それと、英国のベートーヴェンもなかなかのものでした。
投稿: yokochan | 2011年11月 1日 (火) 20時15分