ラヴェル 「ダフニスとクロエ」 マルティノン指揮
六本木ヒルズから。
前にも、ここからのショットは掲載しましたが、東京タワーと満月が見える幻想的なシテュエーションはなかなかのものでした。
今日はラヴェル(1875~1937)のバレエ音楽「ダフニスとクロエ」全曲を。
幻想的な画像にぴったりかもです。
1912年に、ピエール・モントゥーによってパリでバレエ初演された「ダフニス」。
その時代のバレエ作品が、ほとんどそうであるように、ディアギレフの委嘱によって生まれた大作で、ラヴェルが決定的な名声を得ることになるが、その後第一次大戦に参戦してゆくこととなる。
のちにラヴェル自身が編み出した、第1組曲と第2組曲。
ことに、いまや「ダフニス」といえば、このバレエ音楽の第3部にあたる部分の第2組曲が、その代名詞のようになってしまった。
20分間で、きらびやかさと精緻さ、そしてダイナミックな興奮が味わえる名組曲でありますから、当然といえば当然。
わたしも、当たり前のように第2組曲から入門。
全曲盤は、74年頃に出た、マゼールとクリーヴランドをFMで聴き、やたらと興味をもった。
そして1975年のラヴェル生誕100年。
小澤征爾が、当時のもう一方の手兵サンフランシスコ響を引き連れて凱旋した。
テレビ・FMで視聴した演目が、P・ゼルキンのピアノでブラームスの2番の協奏曲と、こちらの「ダフニス」全曲というプログラムだった。
そしてこのラヴェルには、まったくもって感激してしまった。
録音して何度も何度も聴きましたね。
小澤さんの、しなやかかつカッコいい指揮ぶり。
アンコールは棒を持たずに、指揮台を降りて、「ピチカートポルカ」でした。
さらに同年か翌年、新日本フィルの定期でも、小澤ダフニスを聴き、もう、ダフニスは全曲に限ると思いこんでしまったのでした。
この時の小澤さんの指揮も、ビジュアル的にも素敵なもので、田舎の高校生のワタクシは夢中になっちまいました。
そして買ったレコードが、廉価盤として出ていたRCAの1000シリーズの中のミュンシュ&ボストン盤。
これには、ほんとまったくお世話になりました。
何度聴いたかわかりませんね。
もしかしたら、ダフニス全曲は、このミュンシュ盤が指標になっているかもしれません。
その後も、たくさん聴きました。
デュトワの名を高名にしたデッカ盤や、アバドのすんばらしい歌い尽くしの美演。
そしてやはり好きなのは、アンセルメやクリュイタンス、モントゥーなどの遠き昔の麗しき音色のダフニス。
そして、今日のマルティノンは、いにしえの趣きある演奏と、現代のシャープでキレイな演奏との中間にあるような演奏。
これも大好きな演奏のひとつであります。
同時期のブーレーズ(ニューヨーク)の演奏も素晴らしいものでした。
ジャン・マルティノン指揮パリ管弦楽団、1975年頃の録音。
当時のマルティノンは、フランス国立放送管弦楽団(国立管)との活動が主体であったが、EMIがクリュイタンスに次ぐラヴェル全集を作るにあたり、パリ管との共演を選択したのは、当時、実に新鮮かつ以外なことだった。
雰囲気溢れるドビュッシーは国立放送管で。
より明晰で華やかなラヴェルはパリ管で。
その選択は、とても正しく、両オーケストラを鮮やかに振り分けることができたのは、マルティノンをおいて他にありません。
ソロの活躍する名技性も必要なダフニスにおいて、名人だらけのパリ管はうってつけだし、モントゥー以来、染み付いた伝統を組織こそ変われど、しっかり受け継いでいるのはパリ管。
ほんと、ほれぼれするくらいに、木管、弦、金管のソロは素晴らしくて、その集団たる各セクションの水もしたたるような美しさといったらないです。
ショルティからバレンボイムに、その音楽監督が受け継がれた時期だけれど、オケはそんな方々とは関係なく、純正マルティノンの粋で洒脱でモダーンな指揮を受けて、実におフランスしてございます。
テンポも、じつにゆとりがございまして、急がすあわてず、かといってのんびりもせず、エレガントにスムースに、かつダンディに進行してゆきます。
いまや失われてしまった感のある、わたしたちが思い描く憧れのフランス、そしてパリ管の音色が、そのイメージそのままに、ここにあるのでした。
葡萄酒でも傾けながら楽しみたい、マルティノンとパリ管のラヴェル。
でも実は、今日ワタクシは、日本酒をぐびぐび飲んでおるのでありました。
いい音楽には、酒ならなんでもいいんです。
このところのモガ・ベイ騒ぎでむしゃくしゃしてますがね、少し気分よくなりましたよ。
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コメント
こんばんは。「ダフニスとクロエ」録音音源で挙げられているのはポピュラー・サウンドと言ってもいいでしょう。
マルティノン、パリ管はラヴェル博士のクリュイタンスに負けじと純フランス・サウンドです。
ブーレーズ、ベルリン・フィルのようにカップリングが「ラ・ヴァルス」といかにもディアギレフのバレエつながりのものもあります。
いつものことながら「第2組曲」は全曲盤は合唱が入って迫力があります。
投稿: eyes_1975 | 2011年10月25日 (火) 23時39分
eyes_1975さん、こんばんは。
ダフニス全曲には、名盤が多いですね。
冒頭から合唱が入り、神秘的かつ魔術的です。
しかも、歌詞なしのヴォカリーズですから、ラヴェルの天才性が伺えます。
合唱なしの全曲を聴いたことがありますが、出汁というか、胡椒というか七味というか、味付けが不足すぎでした。
投稿: yokochan | 2011年10月26日 (水) 23時47分