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2011年10月30日 (日)

フランケッティ 「ゲルマニア」 

Raibow_brdg_1

芝浦側から見たレインボウブリッジの真下。

この上には、エレベーターで登れて、お台場まで歩いて行けるんです。

しかし、地上7階ぐらいで、横は車がビュンビュン、下は海で、風は強いし、かなり怖いですよ!

Raibow_brdg_2

こんな感じ。

景色は遠いけれど、これから寒くなると澄んできてよさそうです。

Franchetti_germania

アルベルト・フランケッティ(1860~1942)のオペラ「ゲルマニア」をDVD観劇。

このまったく知られていないといっていい、フランケッティは、イタリア・トリノ生れの作曲家で、10のオペラを中心に、管弦楽や器楽作品も残している。
その生年から、同時代のイタリアを見てみると。

  ・ボイート(1842~1918)
  ・カタラーニ(1854~1893)
  ・レオンカヴァルロ(1857~1919)
  ・プッチーニ(1858~1924)
  ・フランケッティ(1860~1942)
  ・マスカーニ(1863~1945)
  ・チレーア(1866~1950)
  ・ジョルダーノ(1867~1948)
  ・モンテメッツィ(1875~1952)
  ・アルファーノ(1875~1954)
     ※自己記事、モンテメッツィのオペラより

ヴェルディ後のイタリア・オペラ界にあって、プッチーニと完全にかぶり、同時にヴェリスモの流れにも位置しております。

わたしのもっとも好むヴェルディ後のイタリアオペラの時代。
その音楽は、ご察しのとおり、後期ロマン派風であり、ヴェリスモの激情も備え、かつイタリアの歌と輝きに溢れております。
しかし、フランケッティの最大の特徴は、自身がワグネリアンであったこと。
分厚いオーケストレーションに、意味深い引用の数々、ときに、ワルキューレやタンホイザーの響きさえモロに出てきます。
ヴェリスモ+ワーグナー+マイアベア・・・・・、こんな感じです。

全盛時代はひっぱりだこだったフランケッティで、プッチーニとのコンビで有名なイッリカは、「トスカ」の台本をまずフランケッティに渡し、作曲が進められることとなった。
しかし、多忙さや、思うように進まないことを理由に、同時に「トスカ」の作曲を熱望していたプッチーニにその台本がまわされることとなり、あの名作が誕生したわけだ。
ボエームもそうだけど、プッチーニには、なんだかそんな経緯が多いです。
我儘で愛すべきジャコモさん。
 一方、割りをくったフランケッティには、イッリカの台本による「ゲルマニア」がめぐってきたのでありました。

こちらは、1902年3月11日(!)にスカラ座で、トスカニーニ指揮、カルーソーのタイトルロールで初演され、大成功し、その後も第二次大戦まで頻繁に上演されたようだ。
こんな埋もれたオペラをベルリン・ドイツ・オペラが2006年のシーズンに取り上げ、その時の映像作品が本日のDVDなのです。

「GERMANIA」~「ゲルマニア」は、ローマ時代のドイツをあらわす呼称で、「ドイツ」と了解して支障ないと思う。
イタリアオペラだから、「ジェルマニア」と劇中では歌っております。

時は1806年。ドイツは神聖ローマ帝国として、その下に各地の諸侯が割拠していたわけだが、帝国はもはや無力で、隣国フランスのナポレオンの威力にさらされ、ナポレオン・フランス国の息のかかった「ライン同盟」のもとに諸侯各国が名を連ねることとなった。
 「ゲルマニア」は、こうした時代背景にあったドイツでの、フランスに敵対する若いレジスタンスたちの物語であります。

1806年のニュルンベルク。

プロローグ

1
 
学生たちが、たくさんの書物や手紙に囲まれて、全国に流布する反政府運動の書きものをしたためている。
実は、ここの地下に、反政府匿名図書の執筆者ジョヴァンニ・フィリッポ・パームをかくまっているのでした。
2

学生たちの精神的な指導者ヴォルムスは、シラーの言葉を引用し、理想論を展開しますが学生たち、そして仲間のクリソゴーノはどうも賛同できない。。。
そこへ、リッケがやってくる。
3

彼女は、いまはスパイ活動のため長期留守をしている過激的な思想の持ち主フェデリコ・ローヴェと恋仲で、彼からの便りを求めてやってきたのであるが、なにもなくがっかり。
それどころか、ヴォルムスが言い寄られる始末。
長い留守中に、ヴォルムスにひと時、心を許してしまったリッケは反省しているとともに、フェデリコが帰ってきたら、決闘をして殺さざるをえないと言われ、まずい過去に口をつむぐこととする。
 5

そこへ、当のフェデリコが帰ってくるが、なにも知らない彼はヴォルムスと抱き合ったり、彼女と抱き合ったりして、勇猛果敢な大アリアを歌って皆を鼓舞して盛り上がる。
がしかし、フランス警察たちが踏み込んでくる。
パームはしょっ引かれ、皆は逃げる。
彼を金貨と引き換えに売ったのは、仲間であったひとりの少年であった。

第1幕

 皆は、シュヴァルツヴァルトの森へ逃げている。
ここで静かな生活ができそうと、安心しているが、ヴォルムスの死も伝えられ、男たちは落胆し、リッケは少し安心。

8

神父が現れ、フェデリコとリッケの結婚をつつましく宣言し、人々はつかの間の幸せを歌う。

9

ふたりきりとなったフェデリコとリッケは、熱い二重唱を歌います。
 ところが、運命は逆転。
死んだと思ってたヴォルムスが、大怪我を負いながらも帰ってきたのです。
喜ぶフェデリコと暗澹と沈むリッケ。

11

旅立つヴォルムスを送りにいったフェデリコが出ていったあと、リッケは痛恨のアリアを歌います。
ここで、フェデリコに、変わらぬ愛を誓いながらも、ヴォルムスとの過去を手紙に託し、その場を出奔します。
ひとり帰ってきて、その手紙を呼んだフェデリコは激情し、ヴォルムスへの復讐を誓って激しく歌います。

第2幕

 数年後、ケーニヒスブルグ。
反ナポレオンのルイーズ女王を信望する地下組織の集まり。
ヴォルムスやクリソゴーノの姿も見える。
ここに、かつてパルムを密告した少年が連れられてきて、処刑が宣言される。
しかし、グリエルモ卿が少年をかばい、彼も反ナポレオンには必要と説き、一同は剣を納める。
そこへやってきたのは仮面姿のフェデリコ。

14

彼は、ヴォルムスをこずき倒し、決闘を挑み、会は不穏な雰囲気となってしまう。
剣を構えるふたりの上階には、女王が現れ、平和なドイツを乞い歌う。

15

それに心うたれた一同に、決闘間際のふたりは、再び心をひとつにして、戦うこととし、勇猛に戦場へ向かう。

エピローグ

 戦場あと。

16

舞台には、戦乙女(ワルキューレ)が現れ、戦士を探し、武具を置いて戦いの終わりを暗示します(これは、原作にあることなのか、演出の意図なのか不明であります)。
リッケが、フェデリコを探してやってきて、彼のうめき声を聴きだして、瓦礫から救い出す。
瀕死のフェデリコは、リッケの罪は知っているが、いまはもう幸せに死ねる、と歌うも、リッケは必死に生きることを説く。

17

でも、永遠の生と父の国を垣間見つつあるフェデリコは、もう死の旅へ。
最後に、ゲルマニアよ、おまえは自由だ!と叫び、こと切れる。

             

プロローグがやたらと長いのと、尻すぼみぎみの第2幕。
対訳がなくて、想像しながらの視聴でありますが、何度も聴くうちに、濃厚で分厚いオーケストラサウンドと、それを圧する歌手たちにあてられた力強い歌と情熱的で美しいアリアたちに魅せられるになりました。
フランケッティの音楽は素晴らしいのでありました。

曲中に、ドイツの子供の歌「Do you know how many stars」~「Weisst du wie viel Sternlein stehen」が引用されたりしていて、なかなかに緻密かつ知的な部分も見受けられます。
ドイツ万歳のオペラでありますからして、上演不可の時期があったことも頷けますが、なによりも、イタリアの境遇と重ね合わせ、イタリア魂を鼓舞した背景が、初演時、大受けした要因でありましょう。

 フェデリコ・ローヴェ:カルロ・ヴェントレ 
   ニッケ:リーゼ・リンドストレム
 カルロ・ヴォルムス:ブルーノ・カプローニ 
 クリソゴーノ:マルクス・ブリュック    
   パルム:アンテ・ジェルクシカ
 ヤーネ:サラ・ファン・デア・ケンプ    
   神父:アルチュン・コチニチアン
  ほか 

  レナート・バルンボ指揮ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団
             ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団
     演出:キルステン・ハルムス
        (2006年 ベルリン・ドイツ・オペラ)


ヴェントレの暑苦しいまでの熱唱は、こうした曲では相応しく、聴いてて快感を覚える。
ヴェントレ? 聴いたことある名前だな、と思って調べたら、新国の「トスカ」でカヴァラドッシを聴いたのでした。
その時は、少し一本調子に思ったのだけれど、あの人だったのね。
 リンドステレムは、初聴きだけれど、この人の声はでかくて、高域はややキツイがなかなか感情移入の豊かさで、クールでスピントする声は素晴らしいと思った。
彼女は、ゼンタやヴェーヌス、トゥーランドットやサロメを持ち役とするドラマテック・ソプラノで、ちょっと注目かも。
恋敵役は、カプローニ。この人が一番イタリアしてた。
顔は濃いけど、こちらのマイルドなバリトンはヴェルディを得意にしている様子。
あと濃い系のひとり。いい人役のブリュックもいい味だしてました。
バイロイトでベックメッサーを歌ったこともある人のようです。

こうして、地味だけど、レベルの高い歌手が揃っているのがベルリン・ドイツ・オペラ
一時、音楽監督だったバルンボの生気あふれるオーケストラも魅力で、イタリアの歌と分厚いワグネリアンサウンドが存分に楽しめましたよ。
女性演出家のハルムスはいまや、この劇場の監督としてなかなかのリーダーぶりの様子。このゲルマニア演出は、全般に暗めなのがちょっとイマイチだけど、変なことをしてないところがいい。

ベルリンにある大きなオペラハウス3つ。
ベルリン国立歌劇場、ベルリン・ドイツ・オペラ、ベルリン・コーミッシュオーパー。
世界基準の前者、実験的な劇場の後者、その中間を行きながらも、珍しいオペラを上演するドイツ・オペラ。
世界一のオケや実力オケもたくさんあるし、東京の比ではないベルリンを痛感。


このDVDは、前から欲しかったけれど、昨年某ショップの閉店セールで格安ゲット。
ところが、いまやレーベルを変えて、さらにお安く売ってました・・・残念。

フランケッティ、覚えておいていい作曲家であります。
ちなみに、息子も作曲家だったみたいですよ。

最後に、写真写りのいい、美人のリントストレムを。

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コメント

このオペラの知っている曲は、カルーソーのアリア集に含まれる、『学友よ、ききたまえ』『ああ、ここに来て。愛しい人よ目を閉じないで』の、2曲だけなんです(笑)。LPでメジャー-レーベルが、抜粋にしろ録音してくれた記憶もないですし‥。映像では『クリストフォ-コロンボ』も、出されていたのでは?LD時代にマイアベーアの『アフリカの女』や、サン・サーンスの『アンリ8世』のようなオペラも出されていたようですから、これらのDVD化での再リリースも、望みたい所です。

投稿: 覆面吾郎 | 2019年5月30日 (木) 08時49分

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