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2011年11月13日 (日)

ヴェルディ 「ルイザ・ミラー」 クレヴァ指揮

Syayoukan2

明治~大正にかけての、とある館の一間から。

とあると申しましたが、画像ストックから、以前訪問した、青森の金木町にある太宰治の「斜陽館」なのです。
当時の大地主・津島家に生まれた太宰治。
才覚ある人々を輩出したこの家の歴史も垣間見ることができました。

Syayoukan3

窓の外は、折りから降り出した雨模様の庭園。

美しいのであります。

Verdi_luisa_miller_moffo

ヴェルディのオペラ「ルイザ・ミラー」を。

26作(改作を除く)あるヴェルディの歌劇のうち、14番目の作品は、中期様式の始まりともいえる存在で、ひとつ前が「レニャーノの戦い」、ひとつ後が「ステフェリオ」とそのあとの「リゴレット」、「トロヴァトーレ」「トラヴィアータ」と名作が続く。
ズンチャッチャと番号形式のアリア中心の前期、オーケストラがより雄弁になり祖国愛から心理ドラマへの傾倒を深めつつある中期、音楽と人間ドラマとの深い融合と歌とオーケストラとの高次元な高まりの後期。

どうしても、後期作品ばかり聴いてしまうのは、ヴェルディファンに怒られるかもしれませんが、同時代の北のワーグナーとの対比において、わたし的に互角に聴けうるのは後期作品だと勝手に思っているからであります。
ワグネリアンから見たヴェルディゆえに、ひとえにお許しください。
事実、26作中、まだ半分の13作品しか音源は揃えておりません。
レコード時代、フィリップスがガルデッリの指揮で進めた前期~中期の録音の数々。
いつか聴きたいと思いつつも、結局は、オペラの題名と存在を覚えるだけで終わってしまって今日にいたってます。
いつかは、ワーグナーやシュトラウス、プッチーニと同じように、全曲コンプリートしたいと願うヴェルディ作品であります(モーツァルトも!)。

「ルイザ・ミラー」は、前期中期の橋渡し的な性格を有しつつ、有名なアリアや耳にうれしいヴェルディならではの弾むリズムに、伸びやかな旋律の数々。
そして劇的なオーケストラの扱いなどに、中期の幕開けを感じます。
それらが、まだ散漫に成り立っている印象もなくはないが、やはりヴェルディはヴェルディ。
聴いていて、人の気持ちにすぅーっと入ってきて、心掻き立てる歌とリズムでもって、いつの間にか夢中にさせてしまう魅力を持ってます。
ワーグナーの魔性とまた違った、ヴェルディのあらゆる人に訴えかける力であります。

原作は、ベートーヴェンの第9のフリードリヒ・フォン・シラーの「たくらみと恋」。
悪計によって富と地位を得た新興勢力と、やや落ち目の退役軍人の家庭。
それぞれの出自の若い男女の悲恋の物語であります。

1849年、ナポリ・サンカルロ劇場にて初演。

17世紀 スイスのチロル地方。

第1幕  

 第1場 村の街角

 今日は、ルイザの誕生日で、人々がそのお祝いに集まっていて、その美しさを讃えている。でも、ルイザは浮かない顔で、愛するロドルフォが来てくれないことを語り、父ミラーは、その背景のわからない男に不安を覚える。
ルイザは、彼と会ったときのときめきを歌う。
そこへ、当のロドルフォがやってきて、父ミラーとも挨拶し、恋人同士・村人・父ミラーがそれぞれの思いを歌う重唱となり、やがてミラーを残し教会へ消えてゆく。
 次に現れたのは、ヴァルター伯爵の秘書官ヴルムで、彼はミラーに対し、あなたの娘を愛してます、以前の約束どおり結婚させて欲しいと語るが、ミラーは、わたしは父親として子供の気持ちを優先したいとアリアを歌って答えるものの、ヴルムは、実はあの男(ロドルフォ)は、ヴァルター伯爵の息子なのですよ、と打ち明けて立ち去るので、ミラーの不安な心境はより複雑になる。

 第2場 ヴァルター伯爵の城の中

 伯爵にヴルムが、ロドルフォが村で娘と恋仲になっていると告げるので、よし、わたしが話してみようとなる。ヴルムが去った入れ替わりにやってきた息子に、ヴァルター伯は、同じ屋根のもと一緒に過ごしていた従妹のフェデリカと結婚するようにと命じる。
彼女は未亡人となり帰宅してきている。
フェデリカと久しぶりの対面に、少年少女時代の館での日々を語るも、ロドルフォは、神の前に嘘はつけないとして、実は愛する人がいると語り、フェデリカは嫉妬心を強くいだく。

 第3場 ミラー家の部屋

狩りの帰りの人々の歌声が聴こえる。狩りのあとに来る約束のロドルフォを待つルイザ。
父ミラーは、彼女にロドルフォはカルロといい、ヴァルター伯の息子であることを告げ、さらに城では結婚の準備が進められていると語るので、ルイザは蒼白となる。
 そこへ、ロドルフォがやってきて、名前は変われど、自分の愛する気持ちに変わりはないと父娘に熱く語る。
さらにそこへ、ヴァルター伯が入ってくるので、驚く一同。
ヴァルター伯は、財産目当ての結婚話で騙したとして、ミラー親娘の逮捕を警官に命じるので、ロドルフォは剣を抜き、体を張って阻止しようとして、さらに、父親に対し、あんたの成功の秘密をばらしてやる、とすごむので、やむなく父親一行は退却する。

第2幕

 第1場 ミラー家の部屋

 村人がやってきて、ルイザに一人の老人が警察に連れていかれるのを見たと話すので、ルイザは父親の捕縛を確信する。
そこへヴルム登場。ヴルムは、父親を助ける方法があると言って、手紙を口述してルイザに書かせる。それは、ロドルフォを愛していなかったこと、そして財産目当てであったこと、という内容のもので、書きながらルイザは苦しい胸の内を歌う。
さぁ、あとひとつ、とアコギなヴルムは、城に一緒に来て、ある婦人に、わたしは、ヴルムを愛してますと話せと父ミラーの助命と引き換えに強要するのであった。

 第2場 ヴァルター伯の城の一室

 伯爵は、盲目の愛に走った息子を思っている。そこへ、ヴルムがやってきて、先代の伯爵の従兄を二人して暗殺したことをロドルフォが感づいているのではと、不安になり恐れている。伯爵は、大丈夫だ、おまえは守ってやると約束する。
それより、ルイザはどうした? 万事うまくいっている、いまここに来てるし・・・・。
 フェデリカが入ってきて、ルイザとご対面。
ヴルムは、父親がどうなってもいいのかね・・、とルイザに耳打ちし、フェデリカの愛している人は?の問いかけに、ルイザはヴルムと答える。
そのときの、苦しそうな様子を見逃さなかったフェデリカが、さらに食い下がって問い詰めると、あらためて、ヴルムとの返事をもらい喜々とするフェデリカであった。

 第3場 城の庭園

 ロドルフォのもとに、農夫が一通の手紙を持ってくる。
ロドルフォにと、ルイザから預かったものとのことで。
手紙を読み、ヴルムを呼ぶようにと農夫に頼み、そして、ルイザの直筆の言葉に愕然とし、裏切りをなじるロドルフォ。
悲しんで、そして楽しかった日々を思って、あまりに美しく素晴らしくも有名なアリア「静かな夜には」を歌う。
 ヴルムがやってくるが、ロドルフォは、ここで俺たちは死ぬのだ、と決闘を申し出てピストルを構えるが、へたれのヴルムは空にむかって発砲して逃げ去る。
その音を聞いた父ヴァルター伯と人々が出てくるが、ロドルフォは、父さん私は裏切られたよ、と語り、父はそれでは変わりにフェデリカと結婚したらいいと提案し、気持ちの切り替えにもなるしと、ロドルフォは、了承してしまう。

第3幕 ミラー家

 悲しみに沈むルイザを慰めようと、村娘ラウラと人々がやってくる。
教会では、ロドルフォとフェデリカの結婚式が行われているが、そんなことは彼女に言いようがなく、彼女はデスクで手紙をしたためている。
人々が去ったあと、父ミラーがやってきて、自分を救うため犠牲を払ったことをヴルムから聞かされて、娘を優しく慰める。
ところが書いている手紙の中身を見て愕然とする。
それは、ロドルフォに宛てた遺書のようなもので、ミラーは涙ながらに老いた父をひとりにしないで欲しいと懇願し、ルイザも神にそむいたことを反省し、それならばと、生まれ故郷のこの住みなれた村を離れましょうと提案し、父娘は貧しくとも見知らぬ土地への思いを歌う。外では教会のオルガンが響き、この音色もこれが最後とルイザはひとり思う。
 ロドルフォが静かに執事とともにやってきて、父とヴルフをここに呼んでくるように、と命じて、自分は隠し持った毒薬を秘かにテーブルの飲み物の中に入れる。
ルイザは、ロドルフォの出現に驚き、手紙を書いたことを認め、そして喉の渇きを覚えたロドルフォに先の飲み物を注ぎ、彼は飲み、残りを彼女に飲み干すように言うが、ここでは彼女は拒む。
ルイザの裏切りをなじるロドルフォ。この飲み物には毒が入っていると語るロドルフォ、彼女は、手紙はヴルムに書かされたことを告白し、カップを飲み干す。後悔するロドルフォ。
人の気配にやってきたミラーはこのありさまに愕然とし、二人は自分たちを天国が受け入れてくれると歌い、ミラーは娘よ待ってくれ、と悲しみに暮れる3重唱となる。
父の腕のなかで事切れたルイザ。そこへ大挙して飛び込んできた父親一行。
最後の力をふりしぼり、罰を受けよと、ヴルムを刺殺し、父にはこれがあなたの罰だ、と叫んで、ルイザの傍らに倒れる。

                幕
 
  ルイザ:アンナ・モッフォ              ロドルフォ:カルロ・ベルゴンツィ
  ミラー:コーネル・マックネール    フェデリカ:シャーリー・ヴァーレット
  ヴァルター伯爵:ジョルジョ・トッツィ  ヴルム:エツィオ・フラジェッロ
  ラウラ:ガブリエレ・カルトゥラン    農夫:ピエロ・デ・パルマ

   ファウスト・クレヴァ指揮 RCAイタリア・オペラ管弦楽団
                         〃      合唱団
                            (1964@ローマ)


あれよあれよと進むスピーディな物語の展開に、ストーリーだけを読むと、荒唐無稽に思えるけれど、ヴェルディの音楽は聴けば聴くほどに素晴らしい。
ロドルフォの高名なアリアを筆頭に、大きなものではないが、各人物たちにも素敵なアリアが随処にあって聴きごたえあります。

悪漢は、後年のものほど音楽が悪人らしさを後押ししていないように感じるし、悲劇の掘り下げも同様にまだ未完成の感ありだけれど、ヴェルディお得意の母亡き父娘の愛情劇は、とても麗しく、3幕などは涙が出そうになる。

わたしのCDは、古目のRCA録音で、当時、このメンバーでたくさんのイタリアオペラ録音がなされています。
モッフォの美人ジャケットが目立つけれど、その歌は少しばかり声の衰えを感じます。
蝶々さんやミミは、奮い付きたくなるほどに素敵なのに、このルイザは陰りが多過ぎるような気もします。でも、悲しみの色合いがほどなく出てくるその歌声には、わたしはとても魅力を感じます。薄幸の女性、それも、可愛い系でない大人の雰囲気の歌声。
そんな素敵なモッフォさまでございます。

そしてこの音盤のなんといっても目玉は、ベルゴンツィの耳洗われるようなスタイリッシュで気品に満ちたテノールなのです。
これぞヴェルディというべき、絶品の歌唱に、思わず嘆息し、わたしはあの名アリアを聞きながら、窓の外の秋空を眺めたものです。
まだ存命の息の長い歌手生活を送ったベルゴンツィ。
いつまでも元気にいて欲しいと思います。

マックネイルの暖かなバリトンと、ヴァーレットの少しハスキーなメゾが印象的。
トッツィフラジェルロも当時の低音歌手たちの充実ぶりが偲ばれる歌唱でした。

クレヴァはメトを中心にアメリカで活躍した人で、キビキビとしたオーケストラと歌心は十全なものでありました。
この人が振った、カタラーニの「ワリー」を近々取り上げる予定。
あと、わたしはまだ未聴のマゼールの指揮のDG盤が聴いてみたい。

以上、ヴェルディでした。
 

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コメント

ルイザミラー!ようこそ取り上げてくれました。私はドミンゴ盤とパバロッティ盤を愛聴しています。クレヴァのがあるんですね。
さまよえる様がベルゴンツィを激賞しておられます。また多くの声楽の専門家やオペラファンが同様に「最高のテナー」のひとりとしてベルゴンツィをあげます。
わからない。。。大変申し訳ないがベルゴンツィの魅力がわからない。声も歌い回しもビブラートも見た目も名前も好きになれない。。。どうしたものか。
ご案内のルイザミラー、近く聴いてみます^^ただし、最後までベルゴンツィのテナーに耐えれるかどうか。
そういや、カラヤンもアイーダのラダメスに選んでいたし、晩年のマリアカラスもカバラドッシに選んでいました。そんなに良いテナー??(ファンのみなさん、ごめんなさい)
私はベルゴンツィよりなら市原多朗氏のほうが好き^^

投稿: モナコ命 | 2011年11月13日 (日) 20時23分

私がこれまで聞いた唯一の「ルイザ・ミラー」がまさにご紹介の音源です。素晴らしい歌手陣を擁したこの演奏で充分に満足してしまっているのでしょうか。それとも、やはり中後期に意識がいってしまうからでしょうか。

脇役の帝王(?!)ピエロ・デ・パルマをここでも聞くことができることに目を細めています(^-^)

投稿: 深夜便 | 2011年11月13日 (日) 21時00分

モナコ命さん、こんばんは。
「ルイザ・ミラー」お好きなのですね。
そして、率直なご意見ありがとうございます。
ベルゴンツィが苦手なのですか。
わたしは、もう長いこと彼のファンです。
というか、往年の歌手たちはみんな好きなのです。
逆に、ドミンゴとパヴァロッティには、ちょっと食傷ぎみでして、カレーラスの方がしっくりきたりします。
そして、市原さん、いいですね。
彼のルイザミラー、DVDもあるようですね。

投稿: yokochan | 2011年11月13日 (日) 22時11分

深夜便さん、こんばんは。コメントありがとうございます。
わたしも、ルイザミラーはこの音源のみです。
往年の歌手たちによるこの盤は、いまは廃盤のようで、希少かもしれません。
しかし、マゼール盤とマーク盤を聴いてみたいと思ってます。

そしてそうです、ピエロ・デ・パルマの味のある端役。
ここでも光ってました。
先週のスカラ座のトリスタンでも彼は登場してました。
いいとこ見てらっしゃいますね!

投稿: yokochan | 2011年11月13日 (日) 22時39分

こんばんは。「ルイザ・ミラー」劇版はレヴァイン、メトロポリタン。ドミンゴ。クイヴァー。プリシュカといったメンバーが唯一の手持ち。ヴェルディがウェーバーに興味を持ったこともあるのか「序曲」は「オベロン」「魔弾の射手」に似ているのか迫力があります。少し、ドイツ的でしょうか。カラヤン、アバドがベルリン・フィルで「序曲」を取り上げてますが、劇版はレヴァインがドミンゴと何度か共演していたようです。

投稿: eyes_1975 | 2011年11月16日 (水) 00時40分

eyes_1975さん、こんばんは。
レヴァインの全曲盤をお持ちですか!
ほぼ同じ顔ぶれのメットDVDとともに、気になっている存在です。
中期のヴェルディは、序曲や前奏曲がシンフォニックになって、それだけでも聴きごたえある存在になってきた点でも特色ありますね。
ベルリンフィルの演奏を聴いたあとに、たとえば、今回のCDのようなローマのオケを聴いちゃうと、正直がっかりします。
でも、全曲に漲る本能的なサウンドは言葉にしがたいものがあります。レヴァインやメトのオケも、そうしたオペラの語法といいますか、なにかをしっかり持っていたコンビであります。

投稿: yokochan | 2011年11月17日 (木) 00時35分

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