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2011年11月27日 (日)

ブラウンフェルス 「鳥たち」 ツァグロセク指揮

Keyakizaka1

六本木ヒルズのけやき坂。

イルミネーションが真っ盛り。

「Snow & Blue」・・・・毎年、冬を彩る美しさなのでした。

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ヴァルター・ブラウンフェルス(1882~1954)のオペラ「鳥たち」。

デッカの退廃音楽シリーズのなかの1組、某塔ショップで以前に格安で購入し、ニンマリしていたところ、先ごろ、コンロン指揮によるDVDが発売され驚愕したものです。

退廃音楽とは、1930年代のナチス政権発足による芸術弾圧の一環で貼られた作曲家たちの音楽へのレッテル。
退廃でもなんでもなく、素晴らしい音楽なのに、ユダヤ系の出自、政治的であること、敵国音楽のジャズっぽいところであること、無調や十二音などの現代音楽であること・・・・などへのナチスの因縁付けでありました。
そのために、失われた作品や命を落とした作曲家なども多く、まったくケシカラン話である。
一方で、純正ドイツ国の音楽は守護され、ワーグナーがその代表格なところが、喜んでいいのか悲しんでいいのか、なのです。

ブラウンフェルスの退廃カテゴリーは、ユダヤ系ということ。
同カテゴリーには、メンデルスゾーン、マーラー、シュレーカー、シェーンベルク、コルンゴルトなどなど。
 有名な法律家・翻訳家を父と、リストやクララ・シューマンとも親しかったシュポーアを祖父に持つ母。ブラウンフェルスは、当然のように音楽の教育を受け順調に育っていったが、ミュンヘンの大学で法律と経済学へと方向転換してしまう。
しかし、そこでモットル指揮の「トリスタン」の上演に接し、またもや音楽へと逆戻り。
こんどは、ウィーンでピアノを学び17歳でピアニストデビューを飾る。
同時に作曲をモットルとトゥイレに学んで、作曲家としてドイツ各地で頭目をあらわしてゆくが、1933年に、自身はカトリックの信者であるという抗議にも関わらず、ヒトラーから半ユダヤということで、公職をはく奪され、その音楽も演奏禁止とされてしまう。

オペラを10作、管弦楽・室内楽・器楽・声楽と広範にその作品を残したブラウンフェルス。
「鳥たち」は、1920年にミュンヘンで初演された3番目のオペラで、その時の指揮は、ここでも(前週のコルンゴルトと同様に)ブルーノ・ワルターであった。
そのワルターも、そしてアインシュタインまでもが、この作品の素晴らしさ・美しさを讃えているのでありました(解説書より)

原作は、紀元前414年にギリシアの劇場で演じられた、アリストファネスの「鳥」という喜劇。これをブラウンフェルスが自身で台本を書きあげ、作曲したもの。
アリストファネスを読むことはないけれど、ここでは、鳥と人間、そして神様の物語として、彼らが登場する寓意劇となっている。
「アリストファネスによる2幕の抒情幻想劇」というサブタイトルがついてます。

 ナイチンゲール:ヘレン・クォン    ホーフグート:エントリヒ・ヴォトリヒ
 ラーテフロイント:ミヒャエル・クラウス  ミソサザイ:マリタ・ポシェルト
 ヤツガシラ:ヴィルフガンク・ホルツマイアー ツグミ1:イリス・フェルミリオン
 ツグミ2:ブリギッテ・ヴォルハウス   プロメテウス:マティアス・ゲルネ
 ワシ、ゼウス:ヨーハン・ヴェルナー・プライン   
 ほか、フラミンゴ、鳩、ツバメ、カッコウ、ワタリガラスなどなど多数ご出

   ローター・ツァグロセク指揮 ベルリン・ドイツ交響楽団
              (1994.12@ベルリン、イエス・キリスト教会)

前奏曲とプロローグ

 
 このオペラの美しい主旋律による印象的な前奏曲のあと、前口上のように、ナイチンゲールが登場して、コロラトゥーラを駆使しながら、幸福で、優しい愛に満ちた鳥たちの世界へようこそ、と歌う。

第1幕
 
 二人の人間、カラスを誘われたラーテフロイント(忠実な友)と、黒からすを手にしたホーフグート(よき希望)が山を登ってきて、リックを降ろして食事にしようと決め込む。
ラーテフロイントは、芸術の退廃ぶりに嫌気がさして、ホーフグートは傷心を忘却するため、この地にやってきた。
そこへツグミが飛んできて、人間に驚くが、ツグミの師であり、鳥たちの王であるヤツガシラが起きてしまう、と語る。おっとりと目を覚ましたヤツガシラ。
かつて、自分も人間であったと歌う。
ヤツガシラはかつて、鳥たちそのものが、かつてのように王を欲しておらず、憂いに沈んでいる。
そこで、ラーテフロイントは、鳥たちの城塞を築き、地上と空の間にに位置させ、神々と人間をつなぐ役割をすればいい、そして、つなぎ役として両方から手数料として税金を取るようにすればいいじゃない、というとんでもない提案をするものだから、ヤツガシラは大喜び。
鳥たちをすべて、集めようということになり、ナイチンゲールを無理やり起こし、その美声でもって、さまざまな鳥たちを終結させる。
 鳥たちは、二人の人間に懸念をいだき、攻撃を仕掛けようとするが、ヤツガシラから、彼らは友人であり、話を聴くように、ということで静まるが、ワシだけは敵対的。
ラーテフロイントは、かつて、地球が出来たときは、神様と鳥たちしかいなかった。
そこへ人間が来て、犬や仕掛けでもって、鳥たちを捕まえ、籠に押し込むようになった。
だがいまこそ、と先の計画を持ち上げ、大喝采を受ける。

第2幕

 春はじける季節、月明かりのなか、ナイチンゲールが歌い、ホーフグートは夢見心地に朦朧としたなか、二人(鳥と人間)の甘~い二重唱となる。
やがて誘いに応じ、ナイチンゲールは木から降りてきて、彼の腕にとまり、最後には優しく口づけをする。うっとりしまくるホーフグート。
草木や花々の歌までも聴こえる。この歌を聴いたものは、生涯忘れることができない・・・・と。ナイチンゲールは飛び去り、ホーフグートは地面に取り残される。

一方、完成なった鳥たちの城塞。
ヤツガシラとラーテフロイントは、大満足。
折りから、この城で初の催し、ハトの結婚式が始まる。
少し古典派風の、いかにも鳥っぽい明るい舞踏曲が始まる。
しかし、不穏な雰囲気の報が、招待客の鳥たちからもたらされる。
そこに現れたのは、プロメテウス。
最初は、そんな偉い神様とはつゆしらず、あんたは誰?と問い詰め、ちゃんとお代を払ってくださいよ、と言うラーテフロイントと鳥たち。
次第に正体がわかり、プロメテウスは、天のゼウスが目覚めたら、こんなことやってると大目玉を食らうぞ、今のうちだから、さぁ止めなさい、と忠告。
しかし、ラーテフロイントはと鳥たちは、俺たちは強いのだから、この際戦争だぁ、と取り合わない。
少しビビるヤツガシラ。
 ワシが飛んできて、わしは、ゼウスを見たぞ、その目が強く瞬くのを・・・と警告。
その時、突風吹き荒れ、ゼウスと東西南北の風たちの声がこだまし、ついに「下れ!」のゼウスの一言で、雷鳴と大嵐が起こり、城塞は崩壊。
 嵐の後には、爽やかな青空が広がります。
ホーフグートと鳥たちは、ゼウスの偉大さと全能ぶりを讃え、感謝を捧げる。
鳥たちは、みんな飛び去り、残された人間ふたり。
あ~ぁ、全部終わっちまった、とラーテフロイント。
人間社会に帰ろうということで、支度をはじめ、まずラーテフロイント。
俺は、雨に打たれてこんなにびしょぬれ、羽がある鳥たちはいいなぁ、といいつつ最初に下山。
そのあと、ホーフグート。あの月夜のナイチンゲールの歌を忘れることができず、未練を残しつつ、涙をたたえながら去るのでした。
最後に、またナイチンゲールの歌声が響き、静かに曲は終わります。

             


アリストファネスの原作との違いは不明ながら、神をも恐れぬ人間の振る舞いを鳥を戯画化して描いた、昨今の日本の雰囲気には、ちょっとばかり耳の痛い物語に感じました。
オペラだから、男女の愛も描かれなくてはならないし、バレエも入っているから、その常套手段の使い方も心憎いところ。
そして、肝心のその音楽。
 ともかく美しく、甘味で、キラキラとしております。
聴く前は、捉えどころなく手ごわいのでは、と危惧しておりましたが、完璧にワタクシ好みの音楽。
シュトラウスやシュレーカー、コルンゴルトがお好きなら、絶対にお勧めの類の音楽であります。
 ワーグナーの影響も各所にあって、鳥たちの歌や、羽ばたくところなどは、「ジークフリート」の世界だし、2幕のナイチンゲールとホーフグートの二重唱は、トリスタン的な濃厚かつクリスタルな世界なのでありまして、陶酔してしまいました。
それと、コロラトゥーラ満載のナイチンゲールの歌は、後のシュトラウスの「ダフネ」をも思い起こしました。
 最後のしみじみとした幕切れもよろしゅうございました。

ちなみに、1920年。
シェーンベルクは無調の時代で、12音間近。ベルクは、ヴォツェック前。シュレーカーは、オペラ作曲家としてモテモテ。コルンゴルトも「死の都」の年で大活躍。
そして、R・シュトラウスは、「影のない女」まで書きあげているも、まだ先にいくつものオペラを残す。

シュトラウスの作品の数々が、埋もれることなく今にいたるまで人気作品であることは、その音楽が素晴らしいことに加えて、ナチスとの折り合いをうまく付けていたから。
そんなシュトラウスも、相棒台本作者をユダヤ排斥で失ったり、いろいろと腹にすえかね、政権批判を繰り返した男気もあるのでした。
 いずれにせよ、政治が音楽に与える影響は、いつの世も大きいものです。

この退廃音楽シリーズのメイン指揮者のひとり、ツァグロセクベルリン・ドイツ響の緻密かつ雰囲気抜群の演奏は、文句ないです。
もっと濃厚にしてしまうと、何度も聴く気が失せてしまうのですが、このぐらいのすっきりぶりが、初音源としてはよいのかもです。

クォンの鈴音のような透明感あふれるソプラノには参りました。
そしてお馴染みのヴォトリヒは、悲劇性ある役柄よりは、こうした甘口の役のほうがいいみたい。
クラウスの少しコミカルなバリトンや、名リート歌手のホルツマイヤーゲルネが聴けるのも贅沢なものです。

ブラウンフェルスの音楽、今後も継続して聴いてまいります。

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コメント

まいりました^^;
さまよえる様の守備範囲の広さとオペラ(だけじゃないけど)への情熱には頭が下がります。
私はナマケモノなので、日本語の対訳がないLPやCDは聴かないのです。聴いても3分であきてしまう。。。さまよえる様はイタリア語、ドイツ語、フランス語、スペイン語ともに堪能なご様子。うらやましいというよりは尊敬申し上げます。
昨今では対訳があっても、未聴の作品を聴こうという意欲がなくなっています。音楽鑑賞って体力と気力が欠かせないんですね。今回ばかりは「ほほー、ブラウンフェルスの鳥たちですか。今度聴いてみます」とは言えません^^;
ここで質問です。
1=対訳のないオペラはどのように鑑賞していますか?
2=現代作品というか現代オペラもワグナーと同じ情熱や感動で鑑賞できますか?
3=輸入盤の英語(伊語、独語、仏語など)だけのCDケースを見てどうやって購入を決めていますか?
保守的な私の鑑賞態度を改める指針とさせてください。

投稿: モナコ命 | 2011年11月30日 (水) 16時10分

モナコ命さん、こんにちは。
ブラウンフェルスの「鳥たち」、記事にしましたが、コメントなく、まさに、閑古鳥が鳴いておりました。
コメントどうもありがとうございます。

この際ですから、ワタクシの無名オペラといかに親しくしていくか、をここにあらためて書きます(偉そうですね~笑)。
まず、お断りしておきたいのは、日本語以外は喋れませんし、わかりません。
それ風に読みあげることはできそうですが、意味なんてまったくわかりません。雰囲気のみです。

>1=対訳のないオペラはどのように鑑賞していますか?<

 対訳のないオペラは、正直お手上げです。
聴きません。その時、その歌手が何を歌っているかが、わからないと、オペラは楽しめないと思うからです。
ですから、昨今の廉価盤化したオペラには、一番困ります。


>2=現代作品というか現代オペラもワグナーと同じ情熱や感動で鑑賞できますか?<

 このジャンルは、正直難しいですね。
ドラマの良しあしに共感できるか次第です。それと、歌がちゃんとあrかどうか。
でも、日本人作曲家によるオペラは、これからどんどん聴いていきたいと思ってます。


>3=輸入盤の英語(伊語、独語、仏語など)だけのCDケースを見てどうやって購入を決めていますか?<

 購入の際は、下調べをします。
わたしの好きな時期や、お国が基本となりますが、わたしなら、キーとして、「ワーグナーの影響下、英国、世紀末、プッチーニ以降」・・・・これに関連する人々にあてはまれば、購入リストに入れたりします。
ですから、皆さま、好きなジャンルとその周辺はそれぞれとなるはずです。

見知らぬオペラの聴き方としては、まず、徹底して聴きこみます。時間かかります。
1年くらい繰り返し聴いて耳になじませます。
その間、ネット上での情報収集。
それから、英文の解説書を適当に読みます。
おおまかなあらすじを把握できたら、英文対訳を眺めつつ真剣に聴きます。
すると、音楽はそこそこ馴染みになってきてますので、英訳が完全に理解されなくても、なんとなくわかったような気がしてきます。
気になったヶ所をメモしておいて、あとで翻訳マシンで調べておきます。
 ここまで、やると、だいたいブログが書けます。
一度書いておけば、それを読み返すと、あとでの理解がさらに深まりますし、そのオペラへの愛着も増すというものです。
記事の際は、日曜日が1日終わってしまいます(笑)

そして、その作曲家のほかの作品探訪が始まるわけです。

バカですよね。一銭にもならないのに・・・。
年老いて読み返し、懐かしむため、自分のためにやってるつもりです。

投稿: yokochan | 2011年11月30日 (水) 20時52分

えらい^^尊敬!もう!言葉がありません!
好きな事にはお金にならなくても全力を尽くす!
男の鏡です!えらい!そうでなきゃ!バカ道まっしぐらのさまよえる様こそオペラ馬鹿の鏡です^^心から拍手と声援を送ります。

よっ!ようようっ!どうよっ!

私も見習います。私有コレクションに解説もなにもないSPレコードが山積しています。今まで怠けていて放置していましたが、さまよえる様を見習って「一銭にもならないけど自分のために」1枚ずつ解説と対訳を自作します。

投稿: モナコ命 | 2011年12月 1日 (木) 13時28分

モナコ命さん、こんばんは。

あんまり誉められると調子にのって、ただでさえ大変なのに、ますます深みにハマってしまいます。
頭と体がついてゆくうちは、バカをどんどん極めようと思ってますよ!

モナコ命さんの、ご奮闘と、充実の音楽ライフをお祈りしております!

投稿: yokochan | 2011年12月 1日 (木) 23時09分

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