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2011年12月12日 (月)

ワーグナー 「ラインの黄金」 ショルティ指揮

Tokyotower201112m3

週末の東京タワーは、ブルーとレッドの美しいダイアモンドヴェール。

芝公園から望む。

Tokyotower201112m2

場所を変えて、こんな感じ。

東京の夜は美しいのです。

 

Rheingpld_solti

週末聴いたオペラ。

こちらは終末の大叙事詩。

ワーグナー 序夜と3日間の舞台祝典劇「ニーベルングの指環」。

この巨大な作品が、今年ほど、耳と心に痛いほどに響く年はないのではないか。

人間(神々)のとどまることを知らない野望と欲望、そして権力闘争。
そこでは愛も断念しなくてはならず、やがてみな破滅の結末を迎える。
最後迎える黄昏のドラマに、どのような未来を思うことができるか・・・。

序夜は楽劇「ラインの黄金」。

物語は、無邪気なラインの3人の乙女たちの歌声から始まる。
ウォークリンデの第1声、「Weia! Waga! Woge,du Welle!・・・」。
14時間に及ぶ大ドラマの始まりのこのラインの流れの讃歌を、かつてバイロイトで日本人歌手が歌った。シュタイン時代の河原洋子さん。すごいことでした。

それはともかく、黄金を守る屈託ない彼女たちに色目目線で近づいたスケベオヤジがアルベリヒ。
3人のうちどれかを手篭めにしようとしたけれど、はぐらかされ、そして目にした黄金とその効能にすっかり心奪われ、愛を断念してまで金銀財宝とともに、世界征服までを狙うことになる・・・・・・、どっかの近くの国みたいですな。

一方の神様たるウォータンは、見栄っぱりで豪華居城を巨人たちに普請させたはいいが、支払い不能の債務不履行で、妻の妹を借金のカタに取られてしまうから、実質的に破綻している一族・・・・・、まるでヨーロッパですな。
その借金を、アルベリヒから金銀財宝を奪い取ることで解消しようとする、これまたとんでもないウォータン。・・・・これまたヨー・・ですな。

少しおっちょこちょいのアルベリヒを籠絡して、まんまと財宝をせしめたウォータンも、、すなわちその世界征服が出来るという黄金から精錬した指環に魅せられ、これもまた、黄金泥棒から横取り。

アルベリヒは、その指環を手にするものへ死の呪いをかけ、これもまたこの大楽劇のキモのひとつになる。

泥棒から奪ったもので、巨人族への借金返済をしたものの、巨人さんもバカじゃない。
ちゃっかり指環と変身グッズを要求し、ウォータンも泣く泣く手放すものの、巨人は仲間割れのいい争い・・・・、どっかのチーム、いや、どっかの国そのもの。
こうして、巨人は森にこもり、鎖国状態。世間から取り残されることとなるのでした。

神様たちは、きたるべき破滅を感じつつも、ウォータンの起死回生の作戦に期待しつつも、瀕死の経済状態で新居に入場するのでした。

こんな風に、いまの世の中や世界を見渡しつつ「リング」を聴くのも面白いもんです。

それにしても、「ラインの黄金」が、「ローエングリン」の次ぎに書かれたとは思えないくらいの跳躍ぶり。
ジークフリートとその死から逆算してドラマが巨大化したワーグナー自身の台本もさることながら、番号オペラをまったく捨て去り、重唱やアリアもなくして、音楽とドラマが完全に一体となった音楽劇=楽劇を実践してしまった作者の執念。
 長大なドラマの端緒は、ラインの悠久の流れを変ホ音のプリミティブな世界でもって始まるが、ここをひとたび聴いてしまうと、一挙に全作聴いてしまいたくなるのがわたくしのサガ。
この冒頭部分が一番素晴らしいのが、ショルティ
そして、ライブならではの劇場の空気感が伝わってくるベーム。
あと、オーケストラがまさに河と森のざわめきを感じさせるヤノフスキ(ドレスデン)。

  ワーグナー 楽劇「ラインの黄金」

   ウォータン:ジョージ・ロンドン  
   フリッカ:キルステン・フラグスタート
   フライア:クレア・ワトソン     
   ドンナー:エーベルハルト・ヴェヒター
   フロー:ヴァルデマール・クメント 
   ローゲ:セット・スヴァンホルム
   エルダ:ジーン・マデイラ     
   アルベリヒ:グスタフ・ナイトリンガー
   ミーメ:パウル・キューン     
   ファゾルト:ヴァルター・クレッペル
   ファフナー:クルト・ベーメ     
   ウォークリンデ:オダ・ヴァルスヴォルク
   ウェルグンデ:ヘティ・プルマッヒャー 
   フロースヒルデ:イラ・マラニュク

 サー・ゲオルク・ショルティ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
              (1958.9 @ウィーン・ゾフィエンザール)


いまさらこの世紀の名録音に、どうのこうのはありません。
私の生れた年に録音されたこの音が、いま極東日本の私のチマチマした部屋でもあざやかに名録音として蘇る。

カルーショウ、G・パリーとくれば、もうデッカのその音のイメージが浮かびます。
芯のある迫真サウンドと分離の鮮やかさと瑞々しさ。
効果音もばっちり決まって、耳で聴くオペラの楽しさはここに尽きます。
バタバタ足音、子供たちの耳をつんざく叫び声、金床のキンコロ音、金銀財宝の音、そして極め付きは、ショルティのリングの代名詞のような、ドンナーのハンマーの「カッキーーーン」と雷のティンパニです
わたしの安い装置では、いまだにビリついてしまいますがね、死ぬまでに一度、立派な装置でカッキーン・ドカンのその快感を味わってみたいものです。

ショルティの若々しく、キレのいい指揮は、この曲にぴったり。
ずばずば決まって心地よいほど。
そして、ウィーンフィルですからどんなに鞭をくれられて大音響を出しても大丈夫。
エルダ登場の神秘的な警告の場面などは、ウィーンフィルならではの美しさです。

50年代の往年の大歌手たちの鮮明な歌唱がこうして残されているのは実に貴重。
なかでもフラグスタートのキリリとしたフリッカは最高。
そして、わたしにとって一番は、「ザ・アルベリヒ」ともいうべき、ナイトリンガーの素晴らしさ。
ナイトリンガーのアルベリヒはいくつも聴くことができるけれど、50年代が絶頂期で、声の暗さとその威力、そして不思議な美しさはこのショルティ盤が随一。
ロンドンのウォータンやスヴァンホルムのローゲも、気品とアクの強さでもって、そのうらはらのインチキくささの表出もいいです。
ラインの娘たちは、少しばかり世代が前と、古臭く感じましたが。

わたしのCDは、84年のCD化初期の外盤で、CD3枚という贅沢ぶり。
全曲2時間25分。
いまなら2CD。
そして、50年を経過し、あらたなマスタリングが施されて廉価盤になっちゃった。
隔世の感ありです。

Rheingold_solti

さて、弊ブログ、バイロイト放送を除いて通算5度目の「リング」。
「ワルキューレ」は、誰の指揮にしようかな。

 「ラインの黄金」過去記事

「バレンボイム バイロイト」

「トーキョーリング 新国立歌劇場」

 

「ブーレーズ バイロイト」

「ドホナーニ クリーヴランド」

「カラヤン ベルリンフィル」

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コメント

こんな立派なブログに書くのは恥ずかしいのですが。。。

実は最近同じショルティの演奏で最後のワルハラ城への入場の場面だけを聴きました。「ラインの黄金」ではなくて「指輪」の抜粋盤です(^^ゞ

その音の良さにびっくりしました。とても半世紀以上前の録音とは思えない鮮烈なものでした。
これなら音だけでも聴けると思い「ラインの黄金」だけを購入しました(^^ゞ

強者揃いの貴ブログに軟弱なコメントを失礼しました

投稿: パスピエ | 2011年12月14日 (水) 13時39分

学生の頃にかなりがんばってバイトをして、学生協から1割引の27000円でショルティのリングを購入しました。以来、私のコレクションの中でも特別待遇を受けているセットです。LP22枚組のアレです。
パスピエさんのように最初から「すばらしい」とは正直感じれませんでした^^;だめな私。
音響がすごいのですぐに疲れて猛烈に眠くなるのです。年と共にこの傾向が強くなってきています。。。
でもカルショーの仕掛けや手品は楽しいし、歌手もデラックスだし、結局リングとなるとこのセットだけ聴いてしまいます。
リングのセットのおかげで実に多くの名歌手を聴けた。あるイミこのリングはオペラ界のコンビニともいえる代物ですね。さまよえる様のコメントはいつも以上にさえていますね。私はいま妻と愚かなフーフげんかをしてきたばかりで元気がありません。。。

投稿: モナコ命 | 2011年12月14日 (水) 20時37分

パスピエさん、こんばんは。

ショルティのリングのハイライトは、LP時代、ワーグナー・デラックスという名前でベストセラーでしたね。

ほんとに、この録音の素晴らしさにはまいります。
長大なリング全編にわたって、この録音クオリティが保たれているのにも驚きです。

軟弱だなんておっしゃらずに、ワタクシの方がばかみたいなだけなのですよ(笑)
わたしには、ワーグナーを聴くのは最高のリラックス方法なのです。

投稿: yokochan | 2011年12月15日 (木) 19時58分

モナコ命さん、こんばんは。
私の初リングはベーム3万円16枚でした。
ショルティ盤とかぶる歌手が多いのですが、いまや両方ともに大事なリングであります。
デッカのオペラ録音に共通の隅々ゴージャス配役。
そして、ゴージャス録音。
60~70年代最高!なのであります。

おほめいただきましたが、もうタネ切れかもしれません。
わたくしも、家に帰れば同じようなことばかりでございますゆえ、ワーグナーに逃げ込みます。
フリッカ以上なものですから・・・・・

投稿: yokochan | 2011年12月15日 (木) 20時47分

オーディオ狂でclassic偏愛者の故・五味康祐さんが、『レコード音楽におけるプロデューサーの占める割合は、非常に大きい。良い例がカルショーの手になる、ニーベルンゲンの指環・四部作である。あれはショルティの指揮だからではなく、カルショーの制作したワーグナーだからこそ、我々を楽しませた。』と、お書きでした。むべなるかな‥(笑)。

投稿: 覆面吾郎 | 2020年11月15日 (日) 15時17分

五味康祐さんの、そのお言葉、知りませんでしたが、確かにその通りかもですね。
ことに初期の「ラインの黄金」は、あの時代に達成できたこと自体が奇蹟のようです。
ただ、後年のワルキューレや黄昏あたりになると、歌手とショルテイの力もあってのものになっていると思います。
録音芸術の極致といってもいいですね。
いまやライブが主流の時代で、オペラは映像芸術にもなりました。

投稿: yokochan | 2020年11月16日 (月) 08時55分

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