バラキレフ 交響曲第1番 スヴェトラーノフ指揮
新宿のサザンテラスのイルミネーションの一部。
今年は、かなりおとなしめ。
JR東日本の前には、東北のことを思い、たなばたイルミネーション。
季節外れの天の川は、とてもきれいなのでした。
スイカのペンギンさんも、このとおり。かわいいでしょ。
みなさん、ロシア5人組を全員言えますか?
中学の音楽の授業で、その5人を習いましたがね、いまクラシック音楽愛好家になってみて、完全に死語の言葉のようになってしまってます。
バラキレフ、キュイ、ムソルグスキー、ボロディン、R=コルサコフ。
後半の3人は、メジャーでよく聴くけれど、それでも特定の曲ばかりで、その全貌をほとんど知らない。
前半の2人、バラキレフとキュイに至っては、かなり寂しい状況。
同時代のチャイコフスキーと比較して、相当にマイナーなのです。
しかし、個々に探し出して聴いてゆけば、それはまた、なかなかに魅力的なのです。
バラキレフを除いては、オペラ作曲家であるし、作品数も相当なもの。
ヨーロッパに傾かない、ロシア民族主義的な作風を貫くことが5人組たるところ。
そのバラキレフ(1837~1910)の交響曲第1番ハ長調を聴きます。
この曲は素晴らしいです!
バラキレフは5人組の指導者的存在だったようで、チャイコフスキーとも親交があり、お互いに影響を受け合ったり、アドバイスをしたりの関係だった。
この交響曲は、1897年に33年の年月をかけて完成した苦節の作品ではあるが、その中断は、他作品への熱中や、ロシア民謡の採取などの作業によるものという。
交響詩「タマーラ」、ピアノ曲「イスラメイ」などと並ぶバラキレフの代表作、交響曲第1番は4つの楽章からなる40分あまりの正統派交響曲。
ロシア的な力強さと、エキゾティックな旋律や、郷愁さそうメランコリーと爆発的な歓喜に溢れた聴きやすい音楽です。
スメタナの「我が祖国」の影響があるといわれる冒頭部を持つ第1楽章は、少しばかり古典風で、主部に入ると明るくて元気がとてもよろしく、いかにも「ハ長調の交響曲」、という感じ。
次ぐスケルツォ楽章は、リズミカルで性急な印象も受けるが、3楽章の緩徐楽章との鮮やかな対比がよろしい。
そしてとても美しい第3楽章。
ハープにのって奏でられるクラリネットの少しばかりオリエンタルで、懐かしくもある旋律が滔々と流れます。
ラフマニノフのようでもあり、チャイコフスキーの劇作品のようでもあり・・です。
ここに想うのは、やはりロシアの大地とその憂愁でありましょうか。
この楽章があるからこそ、この第1交響曲が魅力的なのです。
最後に来る4楽章は、歓喜の爆発でございます。
スヴェトラーノフの指揮で聴くと、こんなんでいいのかな?とも思えなくもないけれども、ともかく前向きな明るさ。
ここでも、ロシアの東南方のエキゾシズムを感じる。
そう、そしてスヴェトラーノフとソヴィエト国立交響楽団(74年録音時はこの赤っぽいお名前)の、聴かなくても皆さま想像のままの演奏は、こうして冬に聴くと、体が暖まります。
ウォッカなどを煽りながら聴いてもよし。
3楽章の泣き節に思いきり感情移入するもよし、終楽章の爆演に笑っちゃうもよし、です。
冬だから聴けるスヴェトラおじさんの演奏。
夏場だったら、クールで整然としたシナイスキー盤(シャンドス)を聴きます。
そして、この曲の録音にはビーチャムもあるし、フィルハーモニア時代のカラヤンのモノラル録音もあるのです。
カラヤン盤は、EINSATZさんのご厚意で聴くことができましたが、スマートなカラヤンの印象をかなぐり捨てたような演奏にございましたね。
機会があれば、バラキレフ、一度お聴きください。
わたくしは、いずれはキュイさんを聴いてみようと思ってます。
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コメント
バラキレフも射程内でしたか!
僕も昨年は五人組の音楽を集中的に買っていました。バラキレフはある程度揃えられたけれど、キュイはどうも入手困難。犬のサイトでは現役盤が6種しかありませんね。僕も1/6を持っている程度。でもバラキレフは恵まれていて、交響曲はスヴェトラとゴロフスチン、管弦楽曲もスヴェトラとホイで三省堂載っている曲の大半を揃えられ、あわせて、ブリリアントのおかげでピアノ曲と歌曲の全集を持てました。
バラキレフは、病気か何かで作曲活動が中断されていた由、第1交響曲の作曲が再開されたときには、コルサコフがロシア音楽の実権を握っていて、バラキレフはプライドその他何もかもずたぼろになったそうな。
ちなみにこの交響曲が完成したのは1897年。マーラーの第2より後。その次の第2(これがまたいいんです!)が1908年の完成で、何と「大地の歌」の完成と同じ年なんですね。死去したのも1910年!
マーラーが死ぬ前年まで生きた人なので、国民楽派の荒っぽいオーケストレーションよりコルサコフに似た美しいオーケストレーションが、ロシア的な旋律(それでも、五人組のリーダーとして働いていた時より洗練されていますが)の魅力をより引き立たせます。
交響詩の「タマール」や「ルーシ」が「はげ山の一夜」原点版のような音楽としたら、全く別物ですね。是非2番の交響曲もどうぞ。おすすめです。こちらはコルサコフの音楽よりよっぽど近代的で後期ロマン派のテイストに近いと思います。
投稿: I | 2011年12月17日 (土) 22時44分
IANISさん、おはようございます。
さすがです。
フランスばかりか、ロシアも制覇ですね!
初キュイを狙ってますが、たしかに入手しずらそうです。
オペラがたくさんありそうで魅力を感じます。
そして、バラキレフは1番中心ですが、徐々に聴いてます。
第2番もシナイスキーで持ってますので、近々レヴューしたいと思います。
ワーグナーやマーラー、シェーンベルク、ドビュッシーあたりの活躍年代で他国の状況を見ると、とても興味深いです。
ムソルグスキーが、もう少し長生きしていたらきっとスゴイことになっていたかも知れませんね。
そうそう、このCDに入ってる「タマーラ」はとても気にいってます。
投稿: yokochan | 2011年12月18日 (日) 11時47分
これまでバラキレフはイスラメイしか知りませんでしたが、皆様のコメントを読んで交響曲を聴きたくなり、中古でスヴェトラーノフ/フィルハーモニアのhyperion盤2枚組で1・2番のセットを入手しました。
投稿: faurebrahms | 2011年12月20日 (火) 05時37分
faurebrahmさん、こんにちは。
地味な5人組のなかにあって、キュイとともにさらに地味なバラキレフ。
まだまだいい作曲家がたくさんいることを、こうした度に実感いたします。
スヴェトラーノフの2度目の録音。
とてもよさそうですね!
投稿: yokochan | 2011年12月21日 (水) 10時34分
管理さんこんにちは♪
スヴェ氏とソビエト国立の初来日のTVの悲愴を聴いて初めてチャイコの魅力に目覚めた感じでした。
極めて精力的ながら洗練さもあり、ソビエト・オケの弦セクションの実力はその後の各楽団Liveでも、得と感じられます。
ソビエト国立のクラのトップは私もかつて聴いた最も美音の奏者です!
投稿: マイスターフォーク | 2011年12月21日 (水) 12時34分
マイスターフォークさん、こんばんは。
旧ソのオーケストラの名称は、それぞれ変わってしまいましたので、いまは何がなんだかわからなくなってしまいましたが、ソビエト国立はスヴェトラーノフのもとで強力な存在でしたね。
モスクワ放送もそうですが、ソ国立の音源をマスタリングされたいま聴くと、当時の粗さが消えて、弦には、ご指摘のような洗練さも感じるようになりました。
しかし、金管は強烈ですね。
このバラキレフの3楽章のクラリネットは魅力的でした。
投稿: yokochan | 2011年12月21日 (水) 22時13分
お早うございます。バラキレフの1番ですか!ブログ主様もIANIS様も他の常連の皆様も凄いですね。私は、バラキレフとキュイは例によって名前しか知らないクチです。カラヤンのモノラル録音の第1番があることは中学時代から知っていましたが・・・スヴェトラさんかナクソスのゴロフスチンで聴いてみたいと思います。
イーゴリ公の全曲は聴いたことがこれまたないです。ハイティンク指揮の映像があるのですね。序曲とダッタンの娘達の踊りとダッタン人の踊りは父ヤルヴィのボロディン交響曲全集に入っていたので久々に聴いてみました。全集魔と言われる父ヤルヴィでもバラキレフのシンフォニーは録音していませんでしたよね?生真面目なヤルヴィらしくコーラスとバス・ソロも入っています。
ベームのワルキューレは私も最高の全曲盤だと思っています。ライブのせいか少し録音がキツイですが(私の再生装置が安物だから?)、演奏はありゃ凄いの一言に尽きます。
投稿: 越後のオックス | 2011年12月23日 (金) 09時17分
連投失礼いたします。それにしてもゲ○のお話は災難でしたね。
投稿: 越後のオックス | 2011年12月23日 (金) 09時22分
越後のオックスさん、こんばんは。
そういえば、ご指摘のように父ヤルヴィにはバラキレフの録音がありませんね。
多録音家カラヤン、マリナー、そしてヤルヴィですのに。
いい曲ですので、是非お試しください。
そしてハイティンクがイーゴリ公とは、これもまたレアですよね。DVD化されているかは不明ですが、ビデオ録画を私家DVDにしましたが、観る機会はなさそうな感じです・・・。
ゲ○の失敗は、わたしも多々ありまして、こんな風にネタにできるような人間じゃないのですがね・・・・・。
そして隅々まで知り尽くしたベームのリング。
なかでもワルキューレは最高です。
レコードの迫真の音が耳に刷り込みなので、いまだにそこらのデジタル新録音よりよい音にに聴こえるわたくしです。
投稿: yokochan | 2011年12月24日 (土) 00時59分
シナイスキー盤(シャンドス)を1・2番とも中古で入手、美しい演奏に聞き惚れました。ちなみに、スヴェトラーノフ/フィルハーモニアのhyperion盤は、どうっていうことない演奏と思いました。
投稿: faurebrahms | 2011年12月28日 (水) 05時32分