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2011年12月27日 (火)

ベートーヴェン 交響曲第9番 アバド指揮

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いろいろあった、そしてわれわれ日本人にとって辛い年だった2011年の終わりまで、あと数日。
年の変わりを意識しなくても、次の日、すなわち夜のあとには日の出は、必ずやってくるわけで、ことさらに騒ぎ立てる必要はないのだと思うが、日本人は暦や季節の変わり目を、とても大事にしてきた民族。
他国では、他国なりの変わり目があるのだろうけれど、少なくともキリスト教社会にあっては、クリスマスとイースターが最大のイベントで、そのふたつが中心となった生活習慣となっている。
クリスマスも、その年一杯から、1月の初めまで、教会歴にしたがって祝いのムードがあるのだけれど、日本は、26日になると、クリスマスムードは完璧なまでになりを潜めて、新年を迎えるムードに一変してしまう。

そして、日本の音楽界は12月後半は、第9一色。
第9しかやってないし、クラシックを日頃聴かない人までも、第9になっちゃう。
第9が、日本人大好きのベートーヴェンの最後の交響曲だし、お馴染みの歓喜の合唱だからしてゆえ。

とはいえ、そんな私にも、この第9には、この時期の雰囲気が染み付いております。

Beethoven_sym9_abbdo_vso

ベートーヴェン交響曲第9番

第9というと、ベートーヴェンで。
同じ第9でも、まさか「新世界」を第9と呼ぶひとはいないし、ブルックナーやマーラーのタイトルなしも、「ダイク」でなく、9番(きゅうばん)と呼ぶように思う。

まさに、ザ・ダイクは、ベートーヴェン。

今日の第9は、クラウディオ・アバドが超めずらしくも、ウィーン交響楽団を指揮したライブ音源で。

    S:マーガレット・プライス     MS:ヘルガ・デルネッシュ
    T:ジークフリート・イェルサレム B:ゴットフリート・ホルニク

        クラウディオ・アバド指揮 ウィーン交響楽団
                         ウィーン・ジンクアカデミー
                       (1981.1.1 @ウィーン


非正規盤ですから、多くの方にお勧めはできませんし、なによりいまや入手が難しいかもしれません。
放送音源からのダビングに思われますが、れっきとしたステレオ録音で鮮明です。

アバドの4種類(うちひとつは映像兼用)ある第9は、ウィーンフィルとのライブが85年。
ついでベルリンフィル・ザルツブルクライフが96年。
ベルリンフィルDG全集盤が2000年(ローマ映像の音源化では同一音源)。
さらに、ベルリンフィルとのヨーロッパコンサートの映像ライブが同じ2000年。

ウィーンフィルとベルリンフィルという2大オーケストラでベートーヴェン全集を残したこと事態が偉大なことだけれど、第9だけでもこれだけ。
しかも、従来ブライトコプフ版とベーレンライター版のふたつがあるというのも、アバドならでは。

そして、アバドの第9としては一番古い1981年の記録が、今日のウィーン交響楽団盤。
ウィーンのニューイヤーコンサートは、いうまでもなくウィーンフィルのものが世界基準だけれども、コンツェルトハウスでは、ウィーン交響楽団が毎年、第9を演奏している。
80年にはベームが指揮してNHK放送もされたけれど、81年にはアバドが指揮をしていたようで、当時はまったく知る由もなかった。
そもそもアバドがウィーン交響楽団を指揮したことってあったのかしら??

81年の元旦は、ムジークフェアランではマゼールがヴァイオリンを弾きながらのニューイヤーコンサート。
アバドは、ウィーンフィルのパーマネントコンダクターだったけれど、マゼールの登場で少し縁が遠くなり、ますますロンドン響やスカラ座との蜜月を深めていった時代。

ウィーンの楽団らしい柔らかい響きを生かしつつ、正攻法の堂々たる第9演奏になってます。
数年後のウィーンフィル盤と、タイム的にもほぼ同じで、アバドらしい全編くまなく目の行き届いた仕上がりのきれいな、しかもライブとは思えない精度の高い演奏。
まだ40代のアバドの若さと、それに似合わぬ悠揚たる落ち着き。
ベーレンライターという版の違いはあるにしても、性急な感を与えつつも、大胆明晰なベルリンの後期の演奏と比べて、はるかに落ち着きがある。
当時のベートーヴェン演奏の高度なまでのスタンダード演奏といえるかもしれない。
 そして、第3楽章のオペラティックなまでの歌心に溢れた人声のような美しさと静けさ。
ウィーンフィルでない分、客演という気楽さから、表情付けは当時のアバドからすると大きく感じる。
最後の歓喜の爆発は、その追いこみ具合とともに、相当なもので、おおいに興奮します。
聴衆のブラボーも盛大なものです。

あと、なんといってもソリストの豪華さ。
このソリストで、トリスタンやパルシファルが上演できまます。
ワーグナー歌手による強力な布陣。
なんといっても、ソプラノからメゾに転向した、デルネッシュの声が聴けるのがうれしい。
少しの場面ですが、聴きなじんだブリュンヒルデやイゾルデのです。
 そして、アバドお気に入りのM・プライスの清潔な声。
まだ生硬さの残る後の大ヘルデン、イェルサレム
名アルベリヒ・クリングゾルとなってゆく性格バリトン、ホルニック

こんな豪華な歌手による第9って、ほかにないかもです。

次も9番いきます。

 アバドのベートーヴェン第9 参考タイム

     Ⅰ   Ⅱ   Ⅲ   Ⅳ   TTL
 ウィーンSO(81)  17'08  11'14  17'39  24'49  71'20
 ウィーンPO(85)  17'10  14'14   17'01  23'55  71'20
 ベルリンPO(96)  15'23  13'50   13'57  22'47  65'57
 ベルリンPO(2000)  14'19  13'02   12'50  22'02  62'15

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コメント

こんばんは。
年の瀬もおしつまって、大変な年になってしまった今年も終わりです・・そんな今年こそ年末は愛と希望の第九がふさわしいかもしれません。

アバド指揮のこの第九、ニコニコ動画にアップされてました。行ってみたらまだあったので、改めて聞きながら・・です。

今年はネット交流のお陰でホフマンが参加しているマゼール指揮の第九を聞くことができたのでした。その記事をTBします。

投稿: edc | 2011年12月27日 (火) 22時55分

横レスすみません

1/14サントリー大ホール 佐村河内守シャコンヌ世界初演・・・・・なんととっくにSOLD OUT orz

んで 昨日発売開始の2/29白寿ホール 佐村河内守 弦楽作品集CD発売記念コンサート ぎりチケット買えたかも

幸せです。


失礼しましたm(__)m

投稿: チザン | 2011年12月28日 (水) 17時01分

euridiceさん、こんばんは。
震災後のメータの第九は人々を勇気づけましたが、わたしはそちらはあえて聴かずに、いまになって第九でした。
やはり名曲中の名曲でありました。
そして大好きなアバドの演奏ですからなおさら。
このレア演奏、ニコ動にもあるんですね。
なんでもありの世の中、うれしいやらなにやらですが、ご案内のレーベル。
以前もご案内いただき、失念してましたが、あらためてサイトを確認しますと、気になる演目ばかり。
すごいものです。
時間がいくらあっても足りません・・・。
ありがとうございました。

投稿: yokochan | 2011年12月28日 (水) 21時29分

チザンさん、コメントありがとうございます。
え?
もうソールドアウトですか。
というか、コンサートは封印中なので、すっかり忘れてました。
2月のコンサートチケットGETおめでとうございます。
CD発売のみを待ちわびるワタクシです・・・・。
いずれにしても楽しみですね!

投稿: yokochan | 2011年12月28日 (水) 21時38分

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2011.6.16 ずっと以前に情報を得て探し続けていたけど、もうすっかりあきらめていた Beethoven SymphonyNo.9: Tce_Maazel_25 Mar 1977_Napier, Hesse, Hofmann,Nimsgern が、ついに1978年ロンドンの「ワルキューレ」をリリースしてくれた愛好家サイトopera-club.netでリリースされました。 ベートーベン:交響曲第九番 ロリン・マゼール指揮 フランス国立管弦楽団 ラジオフランス合唱団 独唱: マリタ・ネイピア ルート... [続きを読む]

受信: 2011年12月27日 (火) 22時56分

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