バッハ パルティータ第1番 ピレシュ
西の空、山に沈んだ夕日が、雲を染めてました。
1月の空気の澄んだ空と雲は、ともかく美しいのでした。
左、南の方角に目を転じれば、丹沢連峰。
まだ雪はありませんでした。
わたしの実家からの眺め。
こんな景色を眺めながら、少年時代から音楽を聴いてました。
バッハのチェンバロ(クラヴィール)作品は、平均律、ゴールドベルク、インヴェンションなどの大作に加え、複数の組曲作品も、その根幹をなす素晴らしい作品。
「パルティータ」、「イギリス組曲」、「フランス組曲」、それらがそう。
それぞれ、6ないしは7曲ある中から、1作品づつチョイスして1枚にまとめたのが、マリア・ジョアン・ピレシュの弾くDG盤。
それぞれ、全部聴くと長いものだから、発売以来、わたくしは、このピレシュ盤を折にふれ聴いております。
1994年と95年に録音されたこのCDのこの演奏には、舞曲中心の組曲作品ながら、尋常ならざる研ぎ澄まされた緊張感がみなぎっている。
モーツァルト弾きのイメージからスタートしたボーイッシュなピレシュ。
むかしは、ジョアオ・ピリスだった。
ポルトガル読みでは、ジョアン・ピレシュらしい。
故障から復帰して、さらにDG専属になり、より痛いほどの深みを目指していった感のあるピレシュ。
親日家でもありまして、来日も多いけれど、昨年は震災+原発にて来日中止。
より深く、さらに進化しているピレシュをあらためて、是非とも聴きたいもの。
ピリスと呼んだ方が、わたしには彼女に相応しく感じるのだけれど、こちらに聴くバッハの静謐な世界は、先に書いたとおり、緊張感をともないつつ思わず息をつめて聴いてしまうような演奏で、デンオン時代のピリスじゃなくて、少し遠くに行ってしまったピレシュという感じなのだ。
でも、透明度が高く、深い感性に彩られたバッハは、聴いていて、舞曲中心の組曲なのに、心に淡々と静やかに沁み込んでくる。
ドイツとは違う明晰なラテンの光を感じます。
このような、バッハが私はとても好きです。
アバドの音楽と同質のものを感じます。
「パルティータ第1番」 「イギリス組曲第3番」 「フランス組曲第2番」
リズム感の確かさとともに、タッチの明晰さと、指先まではりめぐらされた、しなやかなまでの感情移入。
若い頃の感性の豊かさが、ますます深まり、きめ細やかなバッハが冬の寒い夜に、津々と心に響いてくる。
部屋を暖かくして、膝かけなどもして、ホットウィスキーを飲みながら聴いてみました、ピリスのバッハ。
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コメント
この盤、バッハにしては冷たい感じがなく、私も好きです。
ちなみにJoaoをジョアオでなくジョアンと読むのは、ローマ字で教育を受けた日本人としては不思議ですが、ポルトガル語の国ブラジルに出張時、実際にこのスペルでジョアンという人物と2名(2名とも男性でしたが)出会い納得しました。
投稿: faurebrahms | 2012年1月17日 (火) 06時04分
ピリスというと初来日した時に聴いた、といってもNHKのスタジオで録音されたものですがモーツァルトのK304のヴァイオリンソナタを思い出します。ヴァイオリンは塩川悠子さんでしたが何故かピアノの印象が残っています
パルティータの1番は好きなのでよく聴きます
数日前にリパッティとレオンハルトのものを聴いたばかりでした^^
投稿: パスピエ | 2012年1月17日 (火) 10時12分
faurebrahmsさん、こんばんは。
暖かく明晰なバッハ、いいですね。
そしてそうねんですよね、どう呼んでもジョアオなのに、ジョアン。
ポルトガル語ではそうなるんですね。
言語とは難しいものです。
投稿: yokochan | 2012年1月18日 (水) 00時49分
パスピエさん、こんばんは。
ピリスは生粋のモーツァルト弾きですね。
デンオン・エラートのソナタやグシュルバウアーとの協奏曲がとても懐かしいです。
レオンハルトのパルティータ、わたしも持ってます。
この前、引退してしまったレオンハルトですね。
投稿: yokochan | 2012年1月18日 (水) 00時52分
ピレシュ様。学生時代からモーツァルトの演奏家として親しんできたピリス嬢がポルトガル語の読みに替えたんですね。「若人あきら」を「我修院達也」に、「加勢大周」を「坂本一生」にしたのとはかなり意味合いが異なるようです。
さまよえる様の一口説明から、病気で?かなり苦労されたご様子。私のピリス嬢への印象は「清潔」「上品」「洗練」です。
選曲が泣けます。パルティータの1番!えらい。。こんだけ演奏効果の高い曲があるこの曲集からわざわざ1番を選ぶとは!
イギリス組曲の3番!劇的だなー。。そういや、ブーニンがヤマハのクラビノーバのCMで弾いてました。(私も学生時代にレッスンで弾きました^^;)
最後がフランス組曲か。。。
構成としては、静、動、軽といったところですね。
私はいずれもグールド盤を愛聴しています。
学生時代にグールドのマネをしてレッスンに行くと、いつも先生に怒鳴られた。「もう1回こういう弾き方したら君のレッスンは断るから!」そんな時代でした。
あの頃ピリス様のこの1枚と出会っていたら、ピリス姫の弾き方をマネしたんだったらこういう目にもあわずにすんだのに!と悔やまれます。
投稿: モナコ命 | 2012年1月18日 (水) 17時45分
モナコ命さん、こんにちは。
やっぱり、ピリスの方がなじみある呼び方ですね。
「清潔」「上品」「洗練」、たしかにその通りです。
それに、DG後は、透明感といいましょうか、研ぎ澄まされた感性を伴ったものを感じます。
モナコ命さんは、バッハの組曲作品がお好きなのですね。
たくさんあるものですから、どれが何番で、イギリスかフランスか、いまだにさっぱりです。
さすが、ご自身で演奏される方は違います。
それがグールド風であろうと、なんであろうと尊敬いたします。
グールドといえば、インベンションとゴールドベルクは刷り込みです。
ピリスには、ゴールドベルクを是非弾いてもらいたいです。
投稿: yokochan | 2012年1月20日 (金) 16時52分