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2012年1月 7日 (土)

ムソルグスキー 「展覧会の絵」 アバド指揮

Tatsu_ginnza_1

銀座の和光のショーウィンドウを写してみました。

龍と玉、いわゆる宝珠。

ちょいと調べたら、龍は中国、玉はインドがその起源だそうな。

中華街で、お祭りには、玉を龍が追いかける踊りがありますね、あれですよ。

Tatsu_ginnza_2

片方の手には、宝珠をグワッシと掴んでました。

登り竜、宝珠を掴む。

なんだか、縁起よろしく、幸せを前向きに掴みたくなりますよ!

Mussorgsky_abbado_lso

ムソルグスキー作曲、ラヴェル編曲の組曲「展覧会の絵」。

数日前の「皇帝」と同様、やたらと久しぶりに聴く名曲中の名曲。

オリジナルのピアノ版はともかく、オーケストラ編曲も定番のラヴェル以外に、いくつかあるし、各種編成の版も頻出。
ELPによるロック版も高校時代聴きました。

でもやっぱり、ピアノかラヴェル版ですな。

今日は、ムソルグスキーの使徒といってもいい、クラウディオ・アバドのふたつの演奏で。

まず、1981年11月のロンドン交響楽団との演奏。
ムソルグスキー没後100年の年ゆえに、アバドの並々ならぬ打ち込みぶりがうかがわれる。

RCAレーベルに録音した原典版「はげ山」で、初ムソルグスキーを記録したアバドは、それ以前より、「ボリス・ゴドゥノフ」を盛んに指揮していて、それまでR=コルサコフらの手直しによって、より劇的に、華美に装飾されていたムソルグスキー像をくつがえしてしまうような、厳密なる原典見直しを「ボリス」に対しても行ってきた。
その執念は、ベルリンフィルとの全曲録音や、スカラ座、コヴェントガーデン、そしてウィーン、ザルツブルクでの上演に結実している。
ウィーン国立歌劇場の来日公演に、こんな渋いオペラ作品を持ってくるなんて、いかにもアバドならではで、わたしもピットのアバドに近い席で金縛りにあったように観劇したものでした。

そのアバドが、ラヴェル編曲とはいえ、「展覧会」を指揮したらどうなるか。
初出のレコードをすぐさま買って聴いてみた82年のわたくし。
その渋さにびっくり。
ラヴェルの顔は少なめで、辛酸をなめ尽くしたかのようなムソルグスキーの顔が浮かぶような演奏だった。
その印象はいまも変わらない。
当時だったら、シカゴを使うこともできたのに、よりフレキシブルでニュートラルなロンドン響を使った意味も、これならわかる。
オケのすごさが、却ってムソルグスキー、しいてはロシアの民の忍従のような姿を消してしまうから。
何度も姿を変えて出てくるプロムナードからして地味。
古城におけるサキソフォンは嘆きの悲しみが楚々と伝わるようだし、ビドロの重々しいさはロシアの民が寒い中、寡黙に行列に並んでるよう。
キエフの大門ですら、その延長線上で、聴いていて、ボリスの空しい戴冠式を思いこしてしまった。
30年前に、こんな個性的な展覧会をやってしまったアバドに敬意を表したい。

Mussorgsky_abbado_bpo

ロンドン響との録音から12年、1993年5月に、今度はベルリン・フィルハーモニーとライブにて再録音。
こちらも94年に発売時、即購入。
前回はレコードで、キエフの大門での大音量ではスピーカーが少しビリつき困ったけれど、CD時代の今回は、そんな問題なく、安心して音の大伽藍を楽しむことができた。

アバドのこの曲への基本的な姿勢は変わらず、真摯に社会派ムソルグスキーに向き合い、ラヴェルの華やかさには背を向けたユニークな演奏。
LSO盤より、強弱の幅が強くなり、ことに繊細極まりない弱音、そして弱音で歌うアバドの素晴らしさが味わえる。
この繊細さがあって、野卑な場面や、強大なフォルテも活きてくる。
だがしかし、そこはツワモノ、ベルリン・フィル。
随所に、オケのウマさがにじみ出てしまい、このオケ独特の明るさを伴った音色が顔をだす。カラヤンの亡霊もチラホラ・・・・。
いやそれは考えすぎだけど、アバドはその点で、すこしやりにくかったのではないかと。
好きに振る舞えたロンドン響での方がムソルグスキーらしさがストレートに出ていたような感じです。
しかし、指揮するアバドは燃えていた。アバドの声が聴こえました!!

同時期録音の「ボリス」では、オケは完全にアバドの手足となって凄まじいまでの効果をあげていたし、このCDのカップリングにある「はげ山」や、ほかのこれまた渋い合唱作品もいぶし銀と劇的な効果が相乗作用をする素晴らしい演奏。

名曲ゆえに、オケも黙っちゃいなかった・・・・。

そんなアバドのふたつの「展覧会の絵」でございました。

ルツェルンでもう一度願います!

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コメント

お早うございます。やはりブログ主様はアバドの「展覧会の絵」はどちらもお持ちでしたか。私はロンドン響を指揮した旧盤しか聴いたことがありません。いい意味几帳面で学者肌な演奏だと思った記憶があります。確かに彼はムソルグスキーの使徒と呼ばれるのふさわしい業績を残してきましたね。
 私が始めてこの曲をラヴェル編曲版で聴いたのは中一の時でアンセルメ&スイス・ロマンド管の演奏でした。華麗で豪華なオーマンディ&フィラデルフィア(CBS)とカラヤン&ベルリンフィル(60年代)、件のアバド&ロンドンなどが記憶に残っています。ラヴェル以外の人の編曲だとストコフスキーとアシュケナージの編曲が意外にいいです。私は前者はホセ・セルブリエール指揮ボーンマス響のナクソス盤、後者はアシュケナージ自信が指揮するフィルハーモニア管の演奏で聴きました。どちらの編曲もラヴェル版よりも土臭いです。ショスタコの四重奏曲の名編曲で知られるバルシャイの管弦楽編曲で聴いてみたかったですね。

投稿: 越後のオックス | 2012年1月 8日 (日) 08時54分

こんばんは。手元にはアバド、ベルリン・フィルがあります。こちらはたぶん、輸入盤でもまだ買えるのではないかな。
ゲルギエフ、ウィーン・フィルが迫力ありますが、カラヤン、ベルリン・フィル初録は「キエフの大門」の鐘が魅せるサウンドでロシア勢に負けていません。デュトワ、モントリオール響。プレヴィン、ウィーン・フィル。ハイティンク、コンセルトヘボウ。メータ、ロサンゼルス・フィルなんかベストに入ります。
何コレ(コレクション)になってしまいました。(笑)

投稿: eyes_1975 | 2012年1月 8日 (日) 16時51分

さすがにアバドファンのさまよえる様ならではの選曲というかCD選出です。「展覧会の絵」は私には目が離せない曲であるため、ほとんど聞いております。(数少ない自慢^^)
アバド盤ですね。しぶい。。。しぶすぎる。。。
デラックスな音色のシカゴじゃなくてロンドン響と協演するあたりもアバドらしい!
ベルリンフィル盤はさすが!という感想を持ちました。うますぎるよ^^;
そういえば「はげ山」をアバドは原点盤で演奏していました。地味だけど味わいがあるなーという印象です。

投稿: モナコ命 | 2012年1月 8日 (日) 20時40分

越後のオックスさん、こんばんは。
展覧会、いろいろとお聴きなのですね。
展覧会は、贅沢にも見過ぎ、いや聴き過ぎてしまい、食傷して、幻想やフランク、海ほどにフェチになりませんでした。
チェリビダッケとロンドン響の来日放送やオーマンディRCA盤などを若い頃に聴きまくりました。

その後に聴いたアバドLSOは、衝撃でした。
まさにムソルグスキー。
ほかの編曲版には手がまわらない状況です。
いずれにせよ、よく出来た原曲ですね。
今後の可能性もまだありそうで、ある意味楽しみです。

投稿: yokochan | 2012年1月 9日 (月) 00時09分

明けましておめでとうございます。

管理人さんの写真集は都会の中の貴重な自然の一瞬とらえてますね。
お人がら感じられます。


アバトの展覧会は頭から力みが抜けた伸びやかなトランペットの響きが全曲にたいする姿勢が感じられます。

イギリスオケの金管はほとんどの奏者はアマチュア・brass bandのトップだった方々です。

全英のbrass bandコンクールは異常にlevelが高く、あのハンスガンシュもオ―ストリ―の代表バンドで参加しましたが入賞はかないませんでした。

イギリスの奏者はオケの中ではどちらかというとやや地味かと思いますが本当は凄いのです。

展覧会は腕前の陳列になりやすいですがアバトはじっくりムソルグスキ―を聴かせてくれますね。

投稿: マイスターフォーク | 2012年1月 9日 (月) 12時01分

eyes_1975さん、こんにちは。
そうそう、なにこれ珍百景ですなぁ(笑)
気にならなくなりましたら、最初はこんな使い方あるんだと驚きました。

たくさんお聴きですね。
あげられた中では、プレヴィンとデュトワぐらいがダブります。メータはNYPO盤です。
どんな演奏でも、展覧会は個性がでますね。
ラヴェルよりの、パリ管やフランス国立管で聴いてみたい曲でもありますね。

投稿: yokochan | 2012年1月 9日 (月) 13時15分

モナコ命さん、こんちは。
ムソルグスキー大好きのアバドは、はげ山だけでも4回録音してます。

そして、展覧会フェチなのですね、モナコ命さんは。
わたしは、少し離れていた曲ですが、思えばムソルグスキーとして捉えなおして、あらためていろいろ比較したくなってまいりました。
デラックス系のオケで聴くのも楽しそう。
シカゴ、フィラ管、ボストン、パリなどなど。
そういえば、K・クライバーが取りあげてくれてたら、さぞかし・・・という感じです。

投稿: yokochan | 2012年1月 9日 (月) 13時22分

マイスターフォークさん、こんにちは。
街中の人の多いところで写真を撮るのは結構度胸がいりますが、いつもカメラを持参し、思ったらひょいひょいと映してます。

ロンドンをはじめとする英国各地のオーケストラは、それぞれの個性を認識するまでには聴いてませんが、どちらも優秀で、はずれがありません。
おっしゃるように、伝統的にブラスのレベルは高いですね。
ブラスアンサンブルの数も多いですし、ホルストやブリテンらの作品も数多くあります。
アバドのロンドン盤は、そんなオケの力量をさりげなく引き出していて、渋い名演となってました。
このコンビは、わたしにとって懐かしく大切な演奏がたくさんあります。

投稿: yokochan | 2012年1月 9日 (月) 14時01分

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