マーラー ピアノ四重奏曲・断章 カニーノ
サヨリの握りです。
いかにも春っぽい、さっぱりと清冽な味わいでございました。
マーラー ピアノ四重奏曲 断章 イ短調
P:ブルーノ・カニーノ Vn:サシコ・ガブリロフ
Vla:セルジュ・コロー Vc:ワルター・ノータス
(1993.8 @草津)
1876年、マーラー16歳、学生時代に書かれた文字通りの若書き作品で、この章のみ完成され、ほかの楽章については不明。
イ短調に相応しく、ほの暗く、ロマンティックな曲調で、完全に正統ドイツロマン派の延長線上にある音楽。
シューマンからブラームスの流れに正しく乗っていて、そこに哀愁調も漂わすものだから、これも若きラフマニノフみたいに思える部分もあり。
この年、ブラームスは、苦心の交響曲第1番を完成させ、ブルックナーは交響曲第5番を作曲中。
そして、なによりも1876年といえば、ワーグナーが「ニーベルンクの指環」の初演にこぎつけた年。
こんな先輩たちの活動を耳にしながら、若きマーラーは、旋律的で、ロマンあふれる音楽を書いていた。
若いときから、才気にあふれていたマーラーが、出自や複雑な内面を意識しはじめ、いまわれわれの心に強烈に訴えかけ続ける幾多の交響曲を書くようになるのは、さほど先のとではない。
10分たらずのこの断章の終わりの方にあるヴァイオリンのソロカデンツァに、後年のマーラーの陰りに満ちた横顔を見る想いがする。
それは、新ウィーン楽派の世界にも薄壁1枚と感じた。
草津夏季国際アカデミーフェスティバルにおける当録音。
名手たちが、想いを込めて演奏してます。
いい雰囲気。
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