マーラー 交響曲第3番 メータ指揮
東京工業大学の桜。
古木の桜は手入れもよくって、枝ぶりがとてもよろしい。
桜の通路の先は、本館建物で、花満開で見えませんがこちらもいい建物です。
一般の方々もフリーに入れるし、入学式にサークルの新人歓誘もあって、校内はカーニバル状態で賑やかなものでしたよ。
そしてマーラー。
マーラー 交響曲第3番 ニ短調
Ms:モーリーン・フォレスター
ズビン・メータ指揮 ロサンゼルス・フィルハーモニック
ロサンゼルス・マスターコラール
カリフォルニア少年合唱団
(1978.3 @UCLAロイスホール)
マーラー最長の交響曲。
交響曲界で一番長いとされていたが、いまやそれは140分を要するブライアンの交響曲第1番「ゴシック」にとって替わられた。
それでも、マーラーの3番は、全6楽章100分あまりで長いといえば長い。
でも聴き始めると、その長さが気にならなくなる。
冒頭のホルンの咆哮から始まり、最後の感動的な楽章があると思うと、そこまでの道のりは全然、苦にはならない。
2番が終了して、すぐさま取り掛かった第3交響曲も、夏の休暇を利用して、上部オーストリア、アッターゼーのシュタインバッハにて、ふた夏で書かれた。
アッター湖は、こんな風に、夢見るように美しい。
朝は作曲、午後はお散歩、夜は読書と、指揮者としての多忙な日々から離れて過ごしたマーラーの作り出した音楽が、こんな光景とともにあることも意識しなくてはなりません。
自然讃歌のような大らかかつ、愛情に満ち溢れた第3交響曲。
朝の眩しい目ざめとともに、夏の一日が始まり、音楽が躍動してゆく。
きっと誰もが愛してやまない、終楽章「愛がわたしに語ること」を聴きながら、こうした風景を思い浮かべてみたい。
この「愛」は、世俗的な愛ではなくって、自然への愛・人間への愛、しいては「神の愛」といったものに捉えるべき。
この交響曲を聴くと、最期には大きな何かに包まれるような感情になる。
過酷な試練や運命から逃れられない、われわれ人間。
マーラーもきっとそんな一人。
そして、ここには、マーラーの優しさがあふれ出ております。
幸福感あふれる第3交響曲。
ロスフィル時代最後の頃のメータの演奏こそ、その明るい幸せなムードの交響曲にぴったり。
カリフォルニアの陽光がたっぷり降り注いでいても、ヨーロッパ的な響きと相いれないわけではなく、音楽をあるがままに、わかりやすく明快に聴かせるメータの手腕が際立っていて、マーラーの音楽と不思議とぴったりと合っている。
メータのマーラーは、おもに1番から5番までで、6と7番はたまに、8と9、大地の歌はまったく指揮せずと、はっきりしているが、マーラーの人生観が色濃くなってくる場面を避けているかのようにも思えるがいかに。
ロスフィルのブラスセクションの素晴らしさと、弦楽のしなやかさがとりわけ素晴らしい。
弾むリズムにスピーディな展開の1楽章から、愛らしい2楽章、カッコいい3楽章、ベテラン、フォレスターのくっきりとした深みある声が味わえる4楽章。
アメリカンな風情のビムバムに続いて、終楽章では愛おしむように一音一音丁寧に語りかけてくれるメータ。そのクライマックスでは止めようもない感動が待ち受けております。
この演奏にあとないものは、ほんの少しの陰りの部分。
それは、そう、人間の存在の弱さといったようなものか・・・・。
例によって、いまのわたしのこの曲の聴きどころ。
それは100分全部と言いたいところだけど、究極にチョイスすると・・・。
1楽章は、その34分間すべてが聴きどころで、ホルンの決然とした冒頭から、最後のチョーカッチョイイ終結部まで、間然とすることなく没頭できる。
指揮もしてみたい楽章。
第2楽章は、この曲で一番地味かもしれないけれど、2番の2楽章のように、いまこの歳になって、しみじみ味わい深くなってきた。テンポの揺れ動きや明滅する各ソロ、そして微妙なポルタメントに注目。エンディングも美しく爽やか。
奇矯なモザイク細工のような3楽章は、ポストホルンのソロの牧歌的な場面とその裏返しのような軍隊ラッパ。2度目のポストホルンでは、音楽は急に神妙になり次ぎのツァラトストラを先取りする。
4楽章では、コントラルトとヴァイオリンソロの掛け合い。
5楽章から休みなく終楽章に入ってゆく間(ま)。その間を静かに埋めて行くあまりに美しい旋律。
終楽章も、そのすべてが聴きどころ。言葉は多くをいりません。
何度、この楽章で泣いたことでありましょうか・・・・・・。
交響曲第3番 過去記事
「アバド&ウィーンフィル」
「ハイティンク&シカゴ響」
「金聖響&神奈川フィル 演奏会」
「ハイティンク&コンセルトヘボウ」
「ヤンソンス&コンセルトヘボウ 演奏会」
わたしの一番好きな演奏は、アバドとウィーンフィル。
掛け値なしに一番です!
それにハイティンク・シカゴ、ベルティーニ・ケルン、そして、このメータ盤です。
演奏会では、聖響&神奈川フィルが若々しい快演でした。
古くは、ベルティーニ&N響に、小澤&ボストンも忘れがたし・・・・。
いろんな思い出一杯の、ノスタルジーの宝庫ともいえる3番なのでした。
(アッター湖の写真は、海外の観光サイトから拝借してます~行ってみたい)
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コメント
書きすぎてすいません、小澤/ボストンの東京文化会館のあの公演をお聴きでしたか。あの場には私もいました。忘れられない思い出です。
それからメータとこの盤も。私も学生時代、酔っ払ってこの曲の第6楽章、随分泣きました。そして幸せでした。その後に出たアバドとVPO、あれは美しかった。
そして聖響/神奈川フィル。あの颯爽とした若々しい第一楽章から引き込まれました。
思えば今の私のマーラー漬けはあの日から始まったのでした。
大地の歌、どうでしょうかね。
投稿: yurikamome122 | 2012年4月 9日 (月) 16時36分
yurikamomeさん、こちらもありがとうございます。
書きすぎだなんてとんでもないです。
小澤ボストンの最良の時期でしたね。
少年合唱に、楽員の女性たちがみんな微笑み、ニコニコしていたのをよく覚えてます。
私は、アバド盤が先でしたが、このメータ盤も実にいいです。復活とともに、この3番はメータのマーラーの最高峰ですね。
聖響&神奈フィルのマーラーチクルス。
最初は、こんなマーラーばっかりやって、二番煎じかも、と思ったものの、私も夢中になってました。
マーラーの音楽も演奏も、わたしたちの心を掴んでやまないですから!
合わせものへの不安と、歌手への不安・・・、でも楽しみですね。
投稿: yokochan | 2012年4月10日 (火) 22時31分