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2012年4月11日 (水)

マーラー 交響曲第5番 マゼール指揮

Tokyotower_1

先週末の東京タワー。

青空きれいです。

Tokyotower_2

震災の影響で先っぽが曲がってしまった。

その心棒部分を交換する工事が始まってまして、撤去により、しばらく短い東京タワーとなるとのこと。
スカイツリーの稼働でもともとは予定されていた工事とのことながら、この1年、曲がった先端を眺めてきたので、複雑な心境。

Tokyotower20110318_3

こちらが、去年の3月。曲がりたての頃。

こっちの方が曲がってる?

Tokyotower_3Tokyotower_5jpg

先ほどの画像を拡大してみよう。

すると下部分に作業の人発見。

上部仮設部分にクレーンがあるので、そちらにもきっと。

スカイツリーに比べると、恐怖の比は少ないかも、ですが、わたしには信じがたいことにございます・・・・。
安全第一、ごくろーさまです。

Mahler_sym5

   マーラー 交響曲第5番 嬰ハ短調

   ロリン・マゼール指揮 ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
                    (1982.9・10 @ウィーン)


マーラーの作品の中でも、一番人気の5番。
私がマーラーを聴きだした頃はそうでもなかった。
1974年頃でしょうか。
当然に1番と4番から入門。
70年代初めは、この5番は難しい曲として、演奏会にもなかなか登場しなかったし、レコードも少なかった。
バーンスタインやハイティンク、クーベリックの全曲録音の一環としてのみ捉えられていたイメージで、ワルターは古いモノラル盤だったし、クレンペラーもこの曲は録音せず、バルビローリも少々地味だった。
 ところが、この曲の真価を一挙に高めたようなレコードが登場した。
それがシカゴの指揮者になったショルティの演奏でありました。
72年の発売だったかと思いますが、わたしはマーラーという作曲家がよくわからなくて、FMで放送されたその演奏もチンプンカンプン。
でも、録音上で、この5番が人気曲になる取っ掛かりは、きっとこのショルティ盤です。

5番初レコードは、76年のメータ盤。
メータは、先人が先鞭をつけたオーケストラ映えがする音楽を、いとも鮮やかに、わかりやすく演奏し、録音し、ベストセラーをかっさらうウマいことする指揮者だった。
このメータ盤で、5番に燃えまくったワタクシは、5番はもちろんのこと、マーラーを怒涛のごとく聴きまくったのです。
80年代になり、マーラーの演奏会も急増。
社会人となったワタクシも、マーラーとワーグナーばかりを、コンサートとオペラに投資しまくり。
その頃の5番の演奏会は、ベルティーニ&都響、マゼール&ウィーンフィル、アバド&ロンドン響、ショルティ&シカゴ、小澤&新日フィルなど。
どれもその音と指揮者の姿を鮮明に覚えておりますよ。

今日は、その中から、実演後に買って、これもずいぶんと聴きまくったマゼール盤を久方ぶりに取り出して聴いてみるのです。

1902年の作曲、1904年の初演。
同時期に取り組んでいた歌曲、「リュッケルト」「亡き子」「角笛」などとの関連性もあって、純粋オーケストラ交響曲でありながら、歌声交響曲のようにも感じられる。

そして、アルマとの結婚で幸福の絶頂にもあり、妹ユスティーネがウィーンフィルのコンマス・ロゼと結婚。ぎくしゃくしだしたウィーンとの関係も継続できている。
ちなみに、妹夫妻の娘アルマ・ロゼは父親の血を引いてヴァイオリニストになったが、ロンドンに逃げ及んだ父に反して、ナチスに捕まり、アウシュヴィッツ送りとなってしまう。
しかし、ヴァイオリンの名手であったことから、ユダヤ人オーケストラのコンマス兼指揮者となり延命。
でも解放前に、病死してしまうという悲劇の人であった。
マーラーの血筋がアウシュヴィッツの因縁までに及んでいる。
マーラーが、あと20年長生きをしていたら70歳だったけれど、交響曲はいくつ書いたろうか。そしてユダヤ人としての血をぬぐいきれなかったから、退廃系作曲家としてのレッテルを貼られてその名は埋没してしまったかもしれない・・・・かも。

よく言われるように、「暗から明」という、ベートーヴェン以来の古典の常套という交響曲としてのあり方の美しさ。
だがしかし、長大なスケルツォがことさらに不可思議な存在として真ん中にあることの不思議。
1楽章と2楽章は悲劇的な様相を担っているのに、スケルツォはあっけらかんとしたレントラーを持ったソロが活躍する音楽。あんなにシリアスだったのに、その対比が面白い。
まさに映画音楽みたいなアダージェットを経て、これまた能天気でありながら、その大爆発は興奮の坩堝と化す終楽章。
奇矯な存在として、7番と双璧かもしれない。

NHKホールで聴いたそのままのマゼールの音盤。
いかにもマゼールらしく、いろんなところで、ためて伸ばしてちょん切って、ということをやらかしてくれているが、この5番では、それらがこの曲に対して巧くハマっていて、全然嫌味にならない。
大見栄切るような1楽章や2楽章も面白いが、もっとも特徴的なのは、3楽章の再現部(?)、ティンパニがこの楽章のリズムを静かに刻んで弦が入ってくるところ。
ものすごくテンポを落として、その後の爆発との対比を鮮やかに聴かせている。
やりすぎだけど、そうでもない。
耽美的なアダージェットに喜遊に溢れた終楽章。
ウィーンフィルが地の音でそれに応えているのも嬉しい。
でもライブの方が、最後にピークを置いてむちゃくちゃ盛り上がっていた。
この録音は少々大人しく、キレイすぎる。

1楽章では、やはり冒頭のトランペットとそのあと続く全奏がいかに決まるか。
次ぐ2楽章とともに、うなりを上げる弦楽セクションの激しさと情熱のほとばしりに注目。
スケルツォ楽章では、オケのソロたちの名人芸を堪能しましょう。
それとアダージェットは、もう頬に手をあてて、思いきり浸りきります。
連続する明るい終楽章では、最後のクライマックスの高らかなフィナーレに向けて、熱くヒートアップする様を夢中になって楽しみましょう。

以上、マーラーの第5でした。

マーラーの交響曲第5番 過去記事

「尾高忠明&札幌交響楽団 演奏会」

「アバド&ルツェルン祝祭管 DVD」

「ヤンソンス&バイエルン放送響 演奏会」

「カラヤン&ベルリンフィル」

「レヴァイン&フィラデルフィア」

「金聖響&神奈川フィル 演奏会」

「メータ&ロサンゼルスフィル」

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コメント

マゼールという指揮者は、音楽がまっすぐ進みそうに何食わぬ流れをしている時、突然直角に曲がってしまうので、聴いているこっちが面食らってしまい、こっちのその反応を楽しんでいるかのようなお下品で趣味の悪い演奏家かと思いきや、そのスキに真後ろに悪魔が聳えたり目の前に泡立ちクリームの大海原が拡がったりと、やはり一筋縄ではいきませんよね。でもクリーヴランド時代、なんだか大人になって面白くなくなった彼が、ウィーンに行ってわりと初期にこの演奏をして、ベルリン時代の彼が戻ってきたように思いっきりウィーン・フィルをドライヴしたライヴは凄かったですね。私の青春時代の思いでの演奏でもあります。このCD、6番とカップリングで8000円くらいしました。私の買ったCD第1号です。

投稿: yurikamome122 | 2012年4月17日 (火) 06時43分

こちらにもありがとうございます。
マゼールという人は確かに、急カーブ・急停車・急発進と百面相の変幻ぶりの才人ですね。
危ないこのオッサンが、ついにN響を振りに来るみたいです。
おっしゃるように、ベルリン放送響とドイツオペラ時代のマゼールは最高でして、クリーヴランドのごく初期とウィーン初期時代は、好き勝手の変人ぶりで、楽しませてもらいました。
この5番は、彼らの6番と9番と並ぶ傑作だと思います。
3CDでの8000円。覚えております。
わたしは、どちらも2枚組レコードでしたが、CDはずっと後になってからでした。
8000円あったら、いまではCD買わずに、寿司屋か居酒屋でたらふく、という発想になってしまった時代です(笑)

投稿: yokochan | 2012年4月17日 (火) 23時19分

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