ワーグナー ジークフリート牧歌 ハイティンク指揮
数日前、雷雨をやり過ごしたあとの公園にて。
充分に色づく前の淡い感じに、雨の雫がとても美しいのでした。
夏のように暑かったり、妙に涼しかったり、激しい雷雨だったりと、ドラマティックな天候が続きますが、気がつけば、梅雨も、もうそこまで。
紫陽花の季節なんです。
今年は、5月=皐月(さつき)らしい、麗しき天気はあまりありませんでした。
みんなおかしくなってる。
花々もきっとおかしいと思いつつ、でもちゃんと美しく咲いてくれます。
桜にツツジに、紫陽花。
ワーグナーの、もっとも美しく愛らしい音楽、「ジークフリート牧歌」を。
ワーグナー ジークフリート牧歌
ベルナルト・ハイティンク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
ワーグナーらしからぬ、壮大重厚な音楽とは遠くに位置する「ジークフリート牧歌」は、ワーグナーの家庭交響曲のような存在です。
1870年、妻コジマ(リストの娘=元指揮者ビューローの妻)の誕生日の朝、妻には内緒で、ルツェルンの邸宅の回廊で演奏して、コジマを感動させた美しい桂品。
回廊の音楽とも称されるように、オリジナルは、各楽器1本の室内的な音楽。
そして、広く愛され聴かれるようになって、オーケストラ作品としてもワーグナーの名作として欠かせない存在になりました。
18分あまりの交響詩的なこの作品は、フォルテは少なめで、ほのぼのと、のどかな、まさに牧歌的な癒しの音楽です。
まだ結婚するまえに身ごもり、その後生れた愛息ジークフリートを産んでくれたことへの感謝もこめての愛情たっぷりのこの音楽は、同時期に仕上げに入っていた「ニーベルングの指環」第2夜「ジークフリート」のエッセンスが、同時に詰まった曲でもあります。
2幕の「森のささやき」のグリーンな雰囲気そのままに、3幕のジークフリートとブリュンヒルデの幸福なる愛の二重唱の旋律がメインとなっております。
ジークフリートによって、目ざめることができたブリュンヒルデ。
実は、甥と叔母の関係にあるわけですが、そんなことはお構いなしが、「リング」の物語で、ヘンテコなミーメに育てられ、そいつが父でないとわかってしまい、ゆえに母や女性の姿を憧れとともに追い求めたジークフリート。
目ざめたブリュンヒルデに戸惑いながらも熱烈求愛するけれど、ブリュンヒルデは、ちょっと待った、そんなにやみくもに、川をかき混ぜるが如く来られても、こっちにも心の準備が・・・・、とおののきます。
そんな葛藤のときに流れる美しい旋律が、この「ジークフリート牧歌」のメインテーマなんです。
ブリュンヒルデは、そんな大らかで真っすぐな世界の遺産みたいなジークフリートを愛おしく思い、やがて彼や、一族を賛美して歌うのでした。
「ジークフリート牧歌」と楽劇「ジークフリート」を関係付けて思い、聴くここともまた、ワーグナー音楽の楽しみです。
神奈川フィルの先頃の定期演奏会をお聴きになられた方は、こちらの「ジークフリート牧歌」もまた是非お聴きください。
そして、神奈川フィルで聴いてみたい音楽のひとつです
オーケストラ演奏としては、ハイティンク盤がふくよかで豊かな心地の演奏です。
あと好きなのは、バレンボイム(イギリス室内)、ヒコックス、カラヤン。
室内バージョンとして、クレンペラー、ショルティ、ブーレーズも透明感ある美しいものでした。
NHKの年末バイロイト放送のエンディングもこの曲でして、ワーグナー全曲を聴き・録音したあとの満足感とともに聴く、ご褒美みたいな癒し音楽のイメージもいまだにあります。
あぁ、望まんところは、柔らかな朝日にもと、このジークフリート牧歌の生演奏にて、自分のベットで真っ白なシーツに包まれて目覚め、ブレックファーストを膝に載せてみたいものです・・・・・。
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