「皇帝」と「英雄の生涯」 11月神奈川フィル定期
ライトアップされた夜のお城は、その城が機能していたころには、きっと考えられない美しさなのでしょう。
きっと有事には、かがり火で、赤く燃えるように輝いた城。
こちらは、北条氏の小田原城にございます。
この城のある街に、わたしは高校時代お世話になったのでございます。
難攻不落と呼ばれた小田原城。
確かに、わたしの通った小田原の街は、海からは平たんだけれど、後背地に箱根を控え奥に行くほど傾斜があって、海と反対側にあった母校へは、坂と百段の階段を経なければ到達しなかった。
その場所は、城の一部でもあったから、いま思えば街全体が城ともいうべき巨大さなのだ。
大昔のことながら、拙者、この城を滅ぼした猿めが憎いぞよ。
戦には負けたけれども、美味しいものでは負けません。
別館にて既報のお寿司屋さん。こちら→「時よし」さん
こじんまりと上品なお店です。
このアジは、永遠に忘れられない。
こんな小田原を思いながら、「皇帝」と「英雄の生涯」を聴きましょう。
ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
Pf:ゲルハルト・オピッツ
R・シュトラウス 交響詩「英雄の生涯」
金 聖響 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
2012年11月23日 (金・祝) 14:00 みなとみらいホール
大物ソリストの登場!
11月の定期は、しかも連休の初日の昼。
晴れる確率も高く、きっと秋の高く澄んだ港の空を望むことができますね。
充実の極みにあるオピッツのベートーヴェンが神奈川フィルをバックに聴ける喜び。
少し苦手な「皇帝」より、「4番」の方が良かったなんて言ったらバチがあたるかな。
言わずと知れた名曲中の名曲のベートーヴェンの「皇帝」。
名曲すぎてなんも言えねぇ~
先に書いたとおり、「皇帝」は少し苦手。
少年時代に聴き過ぎてしまったこともその要因で、構えが大きすぎで華やかに過ぎてしまうこともさらにその要因。
今年1月、本ブログでも取り上げましたが、その時が10年ぶりに真剣に聴いたこの曲なのですよ。
その時は、2楽章の静謐な美しさに感銘を受けました。
ベートーヴェンの本当の姿は、そんなところにあるんじゃないかしら。
ドイツの本流を引くオピッツのベートーヴェンは、わたしの天の邪鬼的な思いを正してくれますでしょうか。
不安は、聖響さんの指揮がベートーヴェンだけにどんなことするのか。
オケに不安はまったくないんですけどね。
でも、思うに、オピッツ主導のベートーヴェンになるんでしょう。
ドイツものばかりでなく、ロシア・北欧ものや、フランスものなども取り上げる柔軟なオピッツゆえに、変わった解釈もするかも・・・・です。
ともかく、今シーズン最大の大物だけに大注目でございます。
今日は、ピアニストとしての比重が高かった頃のアシュケナージと、メータ&ウィーンフィルの演奏にて。
ピアニストとしてのアシュケナージの演奏は、もろ手をあげて誉めちゃいます。
タッチの美しさと濁りのまったくない澄んだ音色は、メータの指揮するウィーンの美質が満載のオーケストラとばっちり溶けあっております。
ことに2楽章は美しい~。
アシュケナージには、もっと若いときのショルティ&シカゴとの共演盤もありまして、そちらを聴いてみたいのはある種のノスタルジーなのかもしれませぬ。
R・シュトラウスの「英雄の生涯」。
1898年、シュトラウス34歳にして、その自らの生涯を音楽で語る。
15ものオペラを書いたオペラ作曲家としてのシュトラウスは、まだ第1作「グンドゥラム」を書いていたのみ。
「サロメ」ですら、あと7年のちなのだ。
賢明なるシュトラウスは、自らの生涯とは言明しなかったが、音楽は明らかにそう。
これまでに書いた交響詩のモティーフが次々と回顧されるし、舌鋒評論家や無知なる聴衆との戦いまでもがパロディとして描かれているわけだから。
愛する女性との濃厚ラブシーンもあるくらいの厚顔無恥っぷりは、これまた純粋明朗快活たるシュトラウスならでは・・・。
最後は、妻にみとられて死んじゃう。
繰り返しますが、34歳にしてこれですから、ある意味幸せすぎるシュトラウスなのですよ。
以下の部分から成り立っております。
① 英雄
② 英雄の敵
③ 英雄の伴侶
④ 英雄の戦場
⑤ 英雄の業績
⑥ 英雄の隠遁と完成
フルオーケストラの大迫力が味わえる「ツァラトゥストラ」と同様のオーディオ向けの曲。
ということは、実演で聴くと最高の興奮が味わえるということ。
ダイナミックで勇壮な出だしから、戦場の場におけるド迫力は、パーカッションが炸裂し、ホールを圧するサウンドが腹の底に響くことでありましょう。
そして、そしてですよ、この曲の魅力は、ソロコンサートマスターの大活躍。
CDでも、必ずコンマスの名前がクレジットされちゃいます。
有力オケの名物コンマスがこれまで何度もその名を刻んできた曲でもあるのです!
我らが神奈川フィルの石田コンマスがついに「英雄の生涯」をやってくれます。
まさに、「俺さまの生涯」となるでしょうか。
聖響さんも、マーラーの流儀で、素直にオケを信じ、音楽だけを鳴らして欲しいところ。
今日の音源は、ちょっと次元が高すぎますが、ハイティンクとシカゴ響の2008年のライブですよ。
これはまたなんとも完璧かつ、音楽をする行為が最高度に行きついた凄演なのだ。
11月定期の前に、コンセルトヘボウとの旧盤と合わせてまた書きたいと思いますが、年輪が刻んだ「英雄の生涯」には、奢りも高ぶりも一切なく、音楽のみがそこに存在する感ありです。
この録音の1年後、わたしはサントリーホールで、このコンビのこの曲を聴きました。
マーラーの6番と合わせて、それはいくつかある生涯忘れえぬ演奏のひとつにもなっております。 (過去記事こちら)
「英雄の生涯」の聴きどころは、あと⑥の生涯を振り返り、しみじみとする場面。
若い筆ではありますが、ここをいかに味わい深く演奏できるか、ハイティンクは文句なし。
そしてこの曲の名演に名を連ねる音盤の数々も素晴らしい人生回顧を音に残しております。
おっと、それと、このシカゴ盤のカップリングは、ウェーベルンの「夏風の中に」なのですよ。
この素晴らしく美しい音楽にハイティンクが取り組んでくれたことも感謝。
神奈フィル定期のウェーベルンにひと花咲かせるような符合にございました。
聖響さんのベートーヴェンとシュトラウス演奏の試金石となりそうな11月定期なのでした。
R・シュトラウス 交響詩「英雄の生涯」
金 聖響 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
2012年11月23日 (金・祝) 14:00 みなとみらいホール
大物ソリストの登場!
11月の定期は、しかも連休の初日の昼。
晴れる確率も高く、きっと秋の高く澄んだ港の空を望むことができますね。
充実の極みにあるオピッツのベートーヴェンが神奈川フィルをバックに聴ける喜び。
少し苦手な「皇帝」より、「4番」の方が良かったなんて言ったらバチがあたるかな。
言わずと知れた名曲中の名曲のベートーヴェンの「皇帝」。
名曲すぎてなんも言えねぇ~
先に書いたとおり、「皇帝」は少し苦手。
少年時代に聴き過ぎてしまったこともその要因で、構えが大きすぎで華やかに過ぎてしまうこともさらにその要因。
今年1月、本ブログでも取り上げましたが、その時が10年ぶりに真剣に聴いたこの曲なのですよ。
その時は、2楽章の静謐な美しさに感銘を受けました。
ベートーヴェンの本当の姿は、そんなところにあるんじゃないかしら。
ドイツの本流を引くオピッツのベートーヴェンは、わたしの天の邪鬼的な思いを正してくれますでしょうか。
不安は、聖響さんの指揮がベートーヴェンだけにどんなことするのか。
オケに不安はまったくないんですけどね。
でも、思うに、オピッツ主導のベートーヴェンになるんでしょう。
ドイツものばかりでなく、ロシア・北欧ものや、フランスものなども取り上げる柔軟なオピッツゆえに、変わった解釈もするかも・・・・です。
ともかく、今シーズン最大の大物だけに大注目でございます。
今日は、ピアニストとしての比重が高かった頃のアシュケナージと、メータ&ウィーンフィルの演奏にて。
ピアニストとしてのアシュケナージの演奏は、もろ手をあげて誉めちゃいます。
タッチの美しさと濁りのまったくない澄んだ音色は、メータの指揮するウィーンの美質が満載のオーケストラとばっちり溶けあっております。
ことに2楽章は美しい~。
アシュケナージには、もっと若いときのショルティ&シカゴとの共演盤もありまして、そちらを聴いてみたいのはある種のノスタルジーなのかもしれませぬ。
R・シュトラウスの「英雄の生涯」。
1898年、シュトラウス34歳にして、その自らの生涯を音楽で語る。
15ものオペラを書いたオペラ作曲家としてのシュトラウスは、まだ第1作「グンドゥラム」を書いていたのみ。
「サロメ」ですら、あと7年のちなのだ。
賢明なるシュトラウスは、自らの生涯とは言明しなかったが、音楽は明らかにそう。
これまでに書いた交響詩のモティーフが次々と回顧されるし、舌鋒評論家や無知なる聴衆との戦いまでもがパロディとして描かれているわけだから。
愛する女性との濃厚ラブシーンもあるくらいの厚顔無恥っぷりは、これまた純粋明朗快活たるシュトラウスならでは・・・。
最後は、妻にみとられて死んじゃう。
繰り返しますが、34歳にしてこれですから、ある意味幸せすぎるシュトラウスなのですよ。
以下の部分から成り立っております。
① 英雄
② 英雄の敵
③ 英雄の伴侶
④ 英雄の戦場
⑤ 英雄の業績
⑥ 英雄の隠遁と完成
フルオーケストラの大迫力が味わえる「ツァラトゥストラ」と同様のオーディオ向けの曲。
ということは、実演で聴くと最高の興奮が味わえるということ。
ダイナミックで勇壮な出だしから、戦場の場におけるド迫力は、パーカッションが炸裂し、ホールを圧するサウンドが腹の底に響くことでありましょう。
そして、そしてですよ、この曲の魅力は、ソロコンサートマスターの大活躍。
CDでも、必ずコンマスの名前がクレジットされちゃいます。
有力オケの名物コンマスがこれまで何度もその名を刻んできた曲でもあるのです!
我らが神奈川フィルの石田コンマスがついに「英雄の生涯」をやってくれます。
まさに、「俺さまの生涯」となるでしょうか。
聖響さんも、マーラーの流儀で、素直にオケを信じ、音楽だけを鳴らして欲しいところ。
今日の音源は、ちょっと次元が高すぎますが、ハイティンクとシカゴ響の2008年のライブですよ。
これはまたなんとも完璧かつ、音楽をする行為が最高度に行きついた凄演なのだ。
11月定期の前に、コンセルトヘボウとの旧盤と合わせてまた書きたいと思いますが、年輪が刻んだ「英雄の生涯」には、奢りも高ぶりも一切なく、音楽のみがそこに存在する感ありです。
この録音の1年後、わたしはサントリーホールで、このコンビのこの曲を聴きました。
マーラーの6番と合わせて、それはいくつかある生涯忘れえぬ演奏のひとつにもなっております。 (過去記事こちら)
「英雄の生涯」の聴きどころは、あと⑥の生涯を振り返り、しみじみとする場面。
若い筆ではありますが、ここをいかに味わい深く演奏できるか、ハイティンクは文句なし。
そしてこの曲の名演に名を連ねる音盤の数々も素晴らしい人生回顧を音に残しております。
おっと、それと、このシカゴ盤のカップリングは、ウェーベルンの「夏風の中に」なのですよ。
この素晴らしく美しい音楽にハイティンクが取り組んでくれたことも感謝。
神奈フィル定期のウェーベルンにひと花咲かせるような符合にございました。
聖響さんのベートーヴェンとシュトラウス演奏の試金石となりそうな11月定期なのでした。
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コメント
お早うございます。神奈川フィルの実演はまだ一度も聴いたことがないのですが、今、日本で一番元気がいいオケの一つかもしれませんね。聖響さんがまず頑張っているし。客演指揮者も多彩で面白い人ばかりですし。今年のこれからの公演の曲目なんか万華鏡みたいに多彩ですね。特にブラ・シェンがシモノーの指揮で聴けるなんて羨ましすぎです。
私もどちらかというと皇帝が苦手なんです。やはり中学生ぐらいの時に聴きすぎた反動かもしれません。バックハウス&S・イッセルシュテットの演奏でしたが。高校時代に初めて買ったベートーヴェン・ピアノ協奏曲全集はアシュケナージ&メータでした。この誠実な演奏のおかげで1番や4番の方が皇帝よりも好きになってしまいました。今はブログ主様からは眉をしかめられそうな(笑)古楽器使用のメルヴィン・タン&ノリントンや古楽器奏法でやっているブロンフマン&ジンマンの過激快速演奏で聴くことが多いですね。
英雄の生涯は勿論大好きです。シカゴ響の看板レパートリーでシカゴの歴代音楽監督の大半の人がシカゴを指揮して録音してますよね。ムーティも録音するでしょうか?ショルティはウィーンフィルで録音したようですが。私はシカゴの英雄の生涯は誰の指揮でも聴いたことがありません。初めて買ったCDは小澤さんとボストンでしたし。シノーポリのマーラー5番とともに私が初めて買ったCDですが。今はケンペとアシュケナージ&クリーブランドで聴くことが多いです。
投稿: 越後のオックス | 2012年5月 5日 (土) 10時28分
越後のオックスさん、こんにちは。
神奈フィルが、一番元気いいオケに見えるとのお言葉、応援する立場として、極めて嬉しいです。
新公益法人への移行を踏まえての負債解消+積上げの大難題に直面していて、存続すら危ぶまれる状況なのです。
しかし、楽員も聴衆も目一杯、音楽する喜びにあふれてます。
こんなオーケストラは、東京にはないと思います。
是非、機会があればお聴きいただければと存じます。
皇帝は、確かに苦手です。
逆に、いっそ、古楽系の方が・・・とも思ったりもしますね(笑)
英雄の生涯、ムーティはまずやることはないと思いますよ(笑)。
ムーティは「イタリア」以外は、まったくシュトラウスと縁がないご様子ですから。
それゆえ、ハイティンク盤は貴重でして、ハイティンクには、ドレスデンとのものも、音盤化してもらいたいと思ってます。
アシュケナージは未聴なのですが、アカデミー賞をとってましたね。聴いてみたいところです。
投稿: yokochan | 2012年5月 6日 (日) 13時14分