神奈川フィルハーモニー 第282回定期演奏会 金 聖響指揮
あと9分。
いつもぎりぎりで飛びこむ「みなとみらいホール」。
夏至から1日、1年で2番目に昼が長い日だから、7時9分前でもこんなに明るい。
R・シュトラウス 歌劇「インテルメッツォ」 4つの交響的間奏曲
~暖炉のほとりでの夢想~
「変容」~メタモルフォーゼン
交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」
金 聖響 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
(2012.6.22@みなとみらいホール)
オール・シュトラウス・プログラム、わたくしにとって垂涎の一夜。
思えば、3曲ともに、ピアニッシモで静かに終わるコンサート。
そしてダイナミックレンジも幅広く、お家では味わえない大音響と、耳をそばだてる静けさの両方ともに楽しめるコンサート。
ゆえに聴き手も集中力を求められるが、メタモルフォーゼンでの早すぎる拍手にはガッカリ。余韻ぶち壊しですよ。
コンサートにはこんなリスクもつきものだけれど、少し前までは、特に静かに終わるオペラなどで、「余韻をお楽しみください・・・」なんていうアナウンスが事前にされていたもので、これもまた情けないというか、興ざめだったりもしますね。
まぁ、聴く側の意識の問題につきるわけですが・・・。
前置きはともかく、今回も、神奈川フィルの持ち味である、その美音を充分に楽しめた素敵な演奏会でございました。
このオーケストラで、そして響きのキレイなみなとみらいホールで聴くワーグナー以降の音楽が、いかに素晴らしいか。これはもう体験した方しかわかりません、耳のご馳走なんです。(ワーグナー以降と書いたのは、後期ロマン派男のワタクシのこだわりにすぎませんが)
まずは、オペラ「インテルメッツォ」の間奏曲。
のっけから、その美しい演奏にノックダウン。
思考停止をうながすかのようなシュトラウスならではの、甘味かつ暖かな音楽に、理想的すぎる神奈フィルの音色。
初めてお聴きになる方々も多かったでしょうが、皆さん、無条件に、聴き惚れてしまったのでは。
こんな、美しい旋律を、いとも易々と、どんな条件下でも紡ぎだしてしまうシュトラウスの天賦の才に驚きです。
この曲は、妻クリスティーネが、夫を思い、アンニュイにひたる場面なのですが、オペラでは、ソプラノの歌が曲の半分くらいまで入っております。
手持ちCD は、サヴァリッシュとカイルベルトなのですが、そのサヴァリッシュ盤での、妻役、ルチア・ポップの柔らかく気品ある歌声が、とてつもなく素晴らしいんです!
そして、歌はなくても、今宵の素敵な演奏に、8分間酔いしれたのでございます。
そうそう、今日は、いつもの聖響対抗配置でなく、通常配置でありましたことを、ここにご報告申し上げます。
これは、次の「メタモルフォーゼン」ゆえの処置かも。
で、コンサートで初めて聴いた「メタモルフォーゼン」は、神奈フィルの弦の23人が綾なす極上の絹織のようなサウンドに、無心に聴き入り、あっという間の25分間。
あっという間は、自分が、高い集中力でもって聴いたことと、聖響さんの選んだ速いテンポ設定によるところです。
神奈フィルは、かつてシュナイト翁と英雄交響曲との組合わせで、この曲を演奏したそうで、わたしは、まだ神奈フィルファンになる前のことですが、それはそれは壮絶な演奏だったといいます。
ドイツの敗北のあの時期を知る指揮者が、思いの丈をたっぷりと注いだ詠嘆の極みだったのでしょう。
でも、そんな世界とは、まったく別次元に存在する聖響さんは、スポーティーなくらいに飛ばして、哀しみも、シュトラウスの人生も、外側から眺めるが如くにあっさりとやってのけたんです。今風といえは、そういうことで、こだわりの少ない客観的な解釈は、一連のマーラーと同じこと。
歌が少なめなのも、毎度お馴染みで、こちらも慣れましたが、先月のなみなみとしたワーグナーと大違い。
でも、ここは、神奈フィルの誇る弦!
一本一本が、ともかくきれいで、それらが、キラリと光る蜘蛛の糸のように、輝きながら降りてきて、そして、ラストの方で、ユニゾンに達するとき、わたしは、感動と美しさのあまりに、涙ぐんでしまいました。
指揮者はともあれ、出てくる音が、コレなもんですから、シュトラウスの美感ばっちりでございましたよ。
アルコール注入後の「ツァラトゥストラ」、天から降り注ぐごとし、まぶしかった冒頭。
切れ味よろしく、ずばずば、さばさば進行する快速特急ツァラトゥストラ、戸惑いはあったものの、すっかり手の内に入り、垢にまみれてしまった感ありのこの曲に、とても新鮮で清烈な印象を受けました。
そこになにが残ったか、というと、通り過ぎただけの印象となってしまうけれど、ここでも、指揮者の意図しないところで、オーケストラが、勝手に煌めいて輝くものだから、わたくしは、聖響さんのくねくね後ろ姿でなく、オケメンバーを見渡しながら、ほうほう、と思い感心しつつの鑑賞会となりました。
オケのみんなは、お互いに聴きあいながら、アイコンタクトしながら、時には他の奏者の演奏に体を揺らせながれながら、雰囲気がとてもよいのです。
在京オケもたくさん聴いてきましたが、それ以外の地方オケに特有の、私にとっての、わが街、隣近所のオーケストラみたいな存在にますますなってきたと思います。
最後に、石田コンマス、最高
秋に聴ける「英雄の生涯」とともに、石田サマのためにあるような曲です。
前にも書きましたが、「ツァラ」「ドンキホーテ」「英雄の生涯」は、交響詩であるとともに、オケメンバーのための合奏協奏曲みたいな趣きがあります。
それらを、こうして、石田・山本・柳瀬という神奈フィルの名手たちで聴ける幸せを感じております。
勢いとスッキリ感は、聖響さんの持ち味だし、オケを信じて共同作業をなす心得も、最近とても快く思えてきました。
あとは、音楽に語らせる、そんなゆとりの大人の解釈が欲しいところデス。
このコンビを聴いておもうこと、「もしかしたら次はもっと変わっているかもしれない」、ということ。
若さゆえのそんな期待です。
こんなの作ってみました。
今回のアフターコンサート、すなわち、「勝手に神奈川フィルを応援するサークル」意見交換会は、いつもの中華屋さんで、オーケストラメンバー、新旧副指揮者おふたり、楽団スタッフさん、そして初参加の方も交えまして、ほんとうに楽しいひとときを過ごすことができました。
皆さま、お疲れのところ、ありがとうございました。そしてお世話になりました。
そして食いしん坊のワタクシ、野毛の焼肉屋さん・・・、とても気になりますねぇ~
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コメント
先日はどうもありがとうございました。
神奈川フィルの素晴らしさ、いよいよ磨きがかかってきましたね。
インテルメッツォはもう絶品でしたね、あんな響き、世界中のオケの他のどこで聴けるのでしょう。
いよいよ本当にタカが3億の負債くらいでこのオケをなくしてはいけない実感がわいてきます。
ソノリティの美しさはもう1級品なのではないでしょうか。
そしてアフターコンサートの楽しかったこと。
それもこれもオケがもちろん素晴らしいからですが。
そんな中にいられたことが嬉しくもありました。
よい時間をご一緒して下さりありがとうございました。
あの素晴らしかった演奏のまだR・シュトラウスが頭から離れない今日この頃です。
投稿: yurikamome122 | 2012年6月24日 (日) 06時23分
yurikamomeさん、おはようございます。
先般はお世話になりました。
普通、冒頭はエンジン始動が遅いのですが、この日のインテルメッツォでは、のっけから美しさ全開でした。
これは、神奈川ばかりか、国内になくてはならない希少なるサウンドですね。
楽しすぎて、飲みすぎてしまうのが、どうも難点でして、歳を考えなくてはいけませんが、まぁ、この回だけは、こうでなくっちゃ、ということになります。
わたしも、シュトラウス三昧してます。
投稿: yokochan | 2012年6月24日 (日) 10時00分
こんばんは、よこちゃんさま。 シュトラウス三昧のコンサート…素晴らしい演奏だったようですね。シュトラウス三昧でも私が行ったコンサートはヨハンの方でして…神奈川フィル一度聴いてみたいです。金聖響氏も生で見たいものであります。何せ聖なる響きと名を持つ方ですからね。ルックスも良いし。話が横道に逸れますが、国営放送の朝の連ドラなどで聖響氏のもと奥様が活躍されているのを見ると、売れっ子同士の結婚って難しいのかな~なんて考えちゃいます(-"-;)
投稿: ONE ON ONE | 2012年6月24日 (日) 21時51分
ONE ON ONEさん、こんばんは。
神奈フィルコンサートの記事にご訪問ありがとうございます。
これ、マジで素晴らしい音でした。
そして、神奈川フィルが、新潟のりゅうとぴあで演奏したら、それもまたさぞかし美しく響くんだろうな、と思われます。
いつかは、実現すると思いますよ。
そして、聖響さんは、オケあっての存在みたいになりつつありますが、まだまだ若いですから、説得力ある個性を掴んで欲しいと思います。
ミムラたんは、端正で美しいですなぁ~
いろいろあったのでしょうが、それぞれにますます活躍して欲しいと思ったりもしてます。
投稿: yokochan | 2012年6月25日 (月) 21時44分