ドヴォルザーク ピアノ協奏曲 リヒテル
神田神保町をさまよう。
靖国通りと、すずらん通りの間の路地には、渋くて味わい深いお店がいくつか点在してます。
50年以上の歴史を持つ「さぼうる」。
神保町歴は長いけれど、じつは数回しかいったことない。
いつも酔ってたし・・・・・。
少し行けば、「古瀬戸」。
ちょっとお高いけれど、ゆっくりと珈琲を楽しむには満足の空間。
城戸真亜子さんの書いた壁画に囲まれてランチもいけます。
会社員時代の出向先が、すずらん通りに面したビルにありましたから、ここは社内の密談によく利用しましたね。
ここが開店した頃ですから、25年くらい前でしょうか。
「ミロンガ」は、場末感漂う洋風居酒屋だった。というか、そんな風に使っていましたから。
お隣の「ラドリオ」で飲んで、こちらに梯子。またはその逆みたいなことをよくやってました。
この「ミロンガ」に行ってるころは、白髪の江戸っ子おばあさんがいて、もしかしたら娘とも思っていた女性とふたり、しゃきしゃきと切り盛りしてました。
お二人とは、よく上司のことなど、会話したものですよ。
いまは経営も変わっちゃったみたいで、おばあさんは亡くなってしまったとか・・・・。
もう四半世紀前ですから人は変化します。
でも店そのものは残るわけで、人は限りあり、でもその意志は悠久、ものは不変なのです。
「ラドリオ」も外観はそのままに、なんとなく前と違うような。
この真ん前が、事務所ビルのB面でしたね。
この日は、午後3時頃のことで、お腹は一杯だし、お店は中休みだしで、臨場感ありませんね。
今来た道を、神保町駅方面に戻りますと、中華の「徳萬殿」があります。
この店は、わたしが神保町にいた時に、このビルとともに開店しました。
いまはどうも大盛り系の店として名を馳せてますが、当時は普通に美味しい中華。
よく食べたのは、あっさり系のタンメンとミニ炒飯のセット。
進化したのか、コンセプトを変えたのか・・・・。
大盛りならば当時、すずらん通りにピアノ屋さんに並んで、元気なおばちゃんと、もの静かな厨房の旦那、ふたりの中華屋さんがあって、そちらは、黙ってると大盛りを食わされてしまう人懐こい店だった。ことに中華丼がすごくて、お盆に溢れだす具には往生しました。
いまは、ピアノ屋さんも含めて、地上げされてビルと化してます。
その隣は、「ふらいぱん」。
昔も今も、こちらも変わらない風情。
昼は定食屋、夜は居酒屋。
昼の「まぐろ中落ち定食」は、鮮度いい中落ちがたっぷり味わえます。
ここも四半世紀以上でしょうか。
夜の部も、ほんと安くて、人情味あるお店。
亭主のゲンさんはいまも健在です。とっつき悪いけど、すこぶるいいオジサンですよ。
懐かしい~。
神保町路地散策、変わらず、いつまでもあって欲しい街です。
ドヴォルザーク ピアノ協奏曲 ト短調
Pf:スヴャトスラフ・リヒテル
ヴァーツラフ・スメターチェク指揮 プラハ交響楽団
(1968.5 @プラハ)
ヴァイオリン、チェロ、ピアノと3つのドヴォルザークの協奏曲のなかで、もっとも地味。
というか、ドヴォルザーク作品でもマイナーな曲に属する作品。
断トツの存在、チェロ協奏曲の20年前1876年、35歳の作品ですが、どこを聴いても、どこをとっても、この音楽はドヴォルザークそのもの。
自身が、ピアノのヴィルトゥーソ的なものから離れて作曲したというとおりに、独奏ピアノの存在は少しばかり地味で、華やかさとは無縁で、旋律を滔々と弾きこなすというより、オケと一体になって、味わい深いボヘミア的、かつ敬愛する先達ブラームス的な世界を健気に求めてゆくという風情であります。
イメージとしては、つねに地味な中期以前の交響曲みたいな存在なんです。
だからこそ有名になれないけれど、それゆえにドヴォルザークの体臭がしっかり刻まれた桂曲でもあるんです。
全体でほぼ40分。
感傷的ながら親しみ感じる第1楽章は、オケ優位の交響的な雰囲気。
2楽章では、ピアノが常に先導し、ドヴォルザークの数ある交響詩のような文学的かつ幻想的な雰囲気で、最後の方は夢見心地の緩やかさ。
安住感を持つ、麗しの楽章。
そして、活発で民族的な3楽章は、協奏曲のおわりに相応しい元気のよさとフィナーレ感を持つものです。
けっして、地味な凡作じゃありません。
ソロとして華やかな演奏効果のあげにくい音楽であるがゆえの地味さ。
その地味さこそ、ドヴォルザーク中期の魅力なのかもです。
リヒテルは、ことあるごとにこの曲を演奏していて、超有名なところでは、カルロス・クライバーとバイエルン国立歌劇場で、EMI録音があります。
そして、そのずっと前、プラハの春でのライブは、まさに「プラハの春」の出来事の年。
ソ連からきたリヒテルと、チェコのスメターチェクという外見上・政治的なことは、まったくさておいて、素晴らしいドヴォルザークに感動できます。
カップリングはスメターチェクの「新世界」なのですが、まるで「猿の惑星」のようなジャケットは、かなり意味深長なのですよ。
神田近辺とドヴォルザーク~「ヴァイオリン協奏曲」
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コメント
おはようございます。
おおっ、これは私も大好きな演奏です。
いいですよね。
リヒテルのドボP協ではクライバー盤より、はるかにリヒテルのピアノが冴えていますね。
曲の美質も全開かと思います。
実は、私も機会があれば採りあげようとしていた盤。
「新世界」の方も、かのUNOさんもイチオシの名演ですよね。
投稿: 親父りゅう | 2012年6月 6日 (水) 08時03分
おっしゃるとおり、チェロ協奏曲やバイオリン協奏曲はいろいろ聴きましたが、ドボルザークのPF協奏曲はリヒテル&クライバー盤だけでした。反省。。。
どうしてもドボルザークの協奏曲=チェロ協奏曲だけが印象に残っています。ご案内の演奏、購入して聞いてみます。
それにしても!
さまよえる様の音楽の守備範囲も、外食の守備範囲も実に広い。とりわけ下町の大衆食堂における知識経験は卓越しております。下町食堂のエンサイクロペディアと呼ばれているゆえんです。(呼ばれていないか)
おいしい店の知識が少ない私は、いつもおなじみの店で呑気に飲んで食べて酔っ払って帰ってくるという、日本のおとうさんまっしぐらコースを邁進中です。
投稿: モナコ命 | 2012年6月 7日 (木) 16時03分
親父りゅうさん、こんばんは。
この音盤をお持ちで、愛聴されている方がいらっしゃってとてもウレシイです!
コレ、隠れた名盤ですよね。
60年代から70年代初めのリヒテルは幻級の存在でしたが、こんな味わいのあるピアノだったのですね。
新世界もいい演奏だし、録音も悪くない。
Uさん好みの1枚かもです、といえよう。
投稿: yokochan | 2012年6月 8日 (金) 00時04分
モナコ命さん、こんばんは。
チェロ協奏曲が有名すぎて日陰者の扱いのピアノ協奏曲。
そして何故かリヒテルですね。
あと、バーンスタインがフランツと録音してたりしますので、そちらも聴いてみたいと思ってます。
わたしの飲食はB級下町系が多いですね。
安くてボリュームがあって、お一人様OK系です。
思えば、いつも同じもの、というのが存外に贅沢なのかもしれません。
わたくし、いつもフラフラのさまよい人生ですからして。。。。
投稿: yokochan | 2012年6月 8日 (金) 00時18分