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2012年6月21日 (木)

オペラのR・シュトラウス 神奈川フィル「インテルメッツォ」に寄せて

Ouji_2

紫陽花の色では、これが一番好きかな。

6月の神奈川フィルハーモニーの定期演奏会は、オール・シュトラウス・プログラム。

R・シュトラウス 歌劇「インテルメッツォ」 4つの交響的間奏曲

              ~暖炉のほとりでの夢想~

            「変容」~メタモルフォーゼン

           交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」

       金 聖響 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

    2012年6月22日 (金) 19:00 みなとみらいホール

今日も、Facebookページ「神奈川フィルを勝手に応援するサークル」に投稿した記事をそのまま記載いたします。
シュトラウスのオペラについて書きました。
まだ続編が書けそうです。

フェイスブックページは、こちら→

R・シュトラウスは、作曲家であるとともに、有力な指揮者でもあり、執筆家でもあり、そしてなによりも、出版会社主体のドイツにおける著作権の概念を作者ありきに覆した人でもあります。
 自己の主張という思いでなく、純粋なる音楽家として、これはおかしいという心情を貫いたシュトラウスの姿は、一般に誤解されやすい、世渡り上手のシュトラウスという側面を過ちと思わせるにたる一面です。

また、ナチスとの関係で云々される「帝国音楽院総裁」というポジションならびに、ドイツ同盟国日本が「皇紀2600年」の祝典音楽を委嘱し、晴れやかな曲を作曲して捧げたことは、反戦の士ブリテンが「鎮魂曲」を献上したことと対照的であったこと。
 ところがそんな一面は、シュトラウスの処世の表と裏のほんの一面で、ホフマンスタールのあと、最良のパートナーだった台本作者ツヴァイクがユダヤ系ゆえ、ナチス当局よりチェックを受け、しかも共同新作オペラ初演のポスターから、その名が当局より削除されるにおよび、ナチスに弓を引くこともいとわなかった芸術本位のシュトラウスを知るにつけ、色眼鏡をはずし、その音楽のみに耳を傾けるべし、との思いを抱かせます。

R・シュトラウスには15曲のオペラがありますが、そのほとんどが、わたしたちがよく聴く有名な交響詩や交響曲が作られたあと。

最後の交響詩「英雄の生涯」が、1898年34歳で、最初のオペラ「グンドラム」と2番目「火の欠乏」の間。
最後の交響曲「アルプス交響曲」は1915年51歳で、これは少しあとで、6番目「ナクソスのアリアドネ」と7番目「影のない女」の間。
そのあと、8つものオペラを85歳で亡くなるまで残すことになります。

こんな風にシュトラウスの後半生は、オペラときっても切れないものなのでした。

シュトラウスのオペラの概要を表にしてみました。

Strauss_opera_2

シュトラウスのオペラの特徴を以下に羅列してみます。

①急激な作風の変化

 最初の「グンドラム」は、完全なワーグナーの影響下にあり、3作目「サロメ」では、世紀末風デカダンスの境地で、ワーグナー後の世界に達した。

次ぐ「エレクトラ」こそ、当時の前衛の最先端で、不協和音と耳をつんざく強烈なフォルテなど、当時としては極めて斬新な音楽でした。
「サロメ」とともに、血なまぐさい題材とともに、その音楽が「春の祭典」よりもずっと前を考えると、それは驚きなのです。

ところが、その2年後、正確には、エレクトラを作曲中も、その構想を抱きつつあった「ばらの騎士」は、前衛の旗手と目され、若手の指標となりつつあったシュトラウスは、18世紀ウィーンを舞台にした貴族社会の優雅でありつつ、愛とほろ苦い官能の世界を描いたものだから、一挙に大衆路線かつ保守古典帰りとなりました。
この「ばらの騎士」は、空前のヒットとなり、当時ドレスデンで上演され続けたときは、ウィーンや周辺の都市から、「ばらキシ」観劇ツアー列車までもが仕立てられるようになったといいます。
 シュトラウスの作風の大きな変化はここまでで、あとは素材選びも含めて、大体概ねのパターンが出来上がり、多作化できたものと思われます。
この音楽の転身は、シェーンベルクらの新ウィーン楽派の硬派としての方向づけを後押ししたともいわれております。

②シュトラウスと台本作家

ただ、忘れてならないのは、ワーグナーの場合、自身が台本も創作し音楽を付けていったのに対し、シュトラウスは、強力な脚本家との共同作業があってこそ、素晴らしいオペラが次々に残されていったわけで、それは台本作者に対する超わがままなくらい厳しかったプッチーニと並び称されるものです。

シュトラウスには、ホフマンスタールという天才劇作家が切ってもきれない存在でした。
6つのオペラと、基本の発想がひとつ。

ことに「ばらの騎士」は、モーツァルトの「フィガロの結婚」を音楽もドラマも意識させる点で、この作品以降の方向性を決定づける超名作です。
速筆だったシュトラウスは、ホフマンスタールの台本の完成が待ち切れず、上がるたびに即、曲をつけてしまい、最後の幕の最美の3重唱などは、セリフなしで先に曲を作ってしまい、ホフマンスタールがそれに合わせて作詞したといいます。ふたりの往復書簡はやたらと多く、そしてとても興味深いものです。
そして、ワーグナー離れとありつつも、生涯ワーグナーの舞台芸術に敬意を払い続けたシュトラウス。
ホフマンスタールは、「ばらの騎士」は、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」でもあると述べております。
若い二人のために、身を引く熟年。少し野卑だがユーモラスな恋敵。フィガロ以上に、内容はマイスタージンガーしてます。
 さらに、後年の「影のない女」は、巨大オーケストラがピットに入る大作ですが、おとぎ話たるその内容は、こんどは「魔笛」そのもの。
こんな風に、シュトラウスのオペラは、音楽も台本もモーツァルトとワーグナーがその根底にあるものが多いのです。

しかし、ホフマンスタールの急死により、最良のパートナーを失ってしまい、次に良き伴侶となるはずだったのがシュテファン・ツヴァイク
ところがユダヤ系だったツヴァイクは、ドイツをのがれ、やがて自決してしまう。
ツヴァイクの残した台本や素材のアイデアは素晴らしく、シュトラウスを魅惑しましたが、結局味わい深い「無口な女」1作を完成したのみで、基本プランのみ残した2作(平和の日、カプリッチョ)は、グレゴールクラウスの手に引き継がれることとなりました。

このふたりの作者と、もうしばらく作業ができたら、シュトラウスのオペラはさらに書かれていたことと思います。

③シュトラウスのオペラの素材

これは極めて多彩。
古代ラテンのギリシア社会から、古代オリエントの聖書の世界、中世、16~19世紀と多士済々。
しかし、お気に入りは、ギリシアの神話の世界で、カオスとややこしい神様たちと、意志強い女性とを描くこと。5作品もあります。

で、今回、注目は「インテルメツォ」。

曲目解説でも述べましたが、これは、シュトラウス自身の家庭を述べた痴話オペラだということ。

口うるさく、姐御肌だった妻パウリーネは、よく悪妻ともいわれますが、ただでさえ、勤勉で日々同じペースの生活をし、かつ天才肌だったシュトラウスの尻をたたいたので、こんなに多作だったとも言われちゃいます。
でも、したたかだった(良い意味で)シュトラウスは、その反動で、妻や家庭も音楽として風刺して描くことができたし、なによりも妻にない多彩な女性の姿を台本作者と手を携えて描きつくすという方向づけがなされた、という意味で、パウリーネの存在は思いのほか大きかったと思います。

この「インテルメッツォ」は、主人公が楽長で、作曲者そのもの。嫉妬深い妻は、パウリーネ。パパの擁護者、可愛い息子は、そのままシュトラウスの愛息フランツ。

劇中、主人公はウィーンにオペラの仕事に出張で出かけるし、シュトラウスも大好きで日々欠かさなかったスカートというトランプ遊びもしっかり描かれてます。

このオペラが初演されて、妻役を歌ったロッテ・レーマンは「これはご主人からの素敵なプレゼントね」と評したところ、パウリーネは、「つまらぬ代物よ!」といい放ったとされます・・・・・。(喜多尾道冬氏の著書より)
ふたを開けたら口うるさくにぎやかな女性だったというオペラ「無口な女」も、思えば家庭内の物語を思わせる一品。

一方、交響曲で、自分の家の中の出来事まで買いてしまった「家庭交響曲」。

交響詩では、若いのに、自身の人生の告知「英雄の生涯」。

こんな風に、R・シュトラウスは、自己の生活・内面を音楽で告白することの好きな作曲家という側面もあるのです。
自己告白という点では、より複雑なマーラーも同一でありましょう。

先の、「インテルメッツォ」で、妻が楽士の夫にあらぬ疑いを抱き、怒りに燃えるとき、劇中の息子は「パパはそんな人じゃないよ」と母親をなだめます。
これ、なんだかとても印象的な場面で、これを書いたシュトラウスがにとても親近感を覚えます。

シュトラウスは筆まめで、旅先で折に触れ、妻パウリーネに近況報告の手紙を書いているし、息子たちにも愛情あふれる手紙をたくさん書いております。

「わが愛する息子よ!・・・お前が少しずつ成長して中で、この恐ろしい戦争の時代に無事でいられる>殊勝で勇敢なお前がそれをよしとないことはわかっているが<ことはお前にとってもわたしたちにとってもこのうえない喜びなのだ。こんな時代であればこそ、なおさら、お前は諸芸術を熱心に学び、高貴なる文化の仕事を目指し、精神の有能なる労働者たるべく努力を怠らないでいてくれるものと思う・・・・。」

これは、第1次大戦中の手紙でありますが、芸術本位、そして芸術は人のためにという信念をナチス治下でも失わなかった高潔の精神がうかがわれると思われます。

Strauss


④シュトラウスのオペラの主人公

男子が主役のものもありますが、シュトラウスのオペラは女声による主人公が多い。
15作中、11曲。

この点も、女性の心情の機微を見事に描きつくしたプッチーニと共通。
でも、いろんなタイプの女性が満載で、ひたむきでけな気な可愛い系が好きだったプッチーニとはちょっと異なる。

・恐ろしくおっかない女性・・・・・・サロメ、エレクトラ

・優美でかつ大人の訳知りの女性・・・マルシャリン(ばらキシ)、マドレーヌ(カプリッチョ)

・強い意志をもったまっすぐ系・・・・アリアドネ、皇后、バラクの妻、ダフネ、ダナエ、アラベラ

・ワル・・・・・・・ヘロディアス、クリテムネストラ

・カワイイ系・・・・ゾフィー、ズデンカ

・ゴージャス美人・・・ヘレナ、アラベラ、ダフネ、ダナエ

・小悪魔ちゃん・・・・ツェルビネッタ、フィアカーミリ(アラベラ)

・もしかして世の奥さま・・・・アミンタ(無口な女)、クリスティーネ(インテルメッツオ)

どうでしょう、多彩なものです。

男性編も、いずれまとめてみたいと思います。

そしてまだまだありますが、それはまた秋以降に。


「インテルメッツォ」過去記事 

 「サヴァリッシュ盤」

「インテルメッツォ」 交響的間奏曲 過去記事

 「プレヴィン盤」

 「メータ盤」

 
 「カイルベルト盤」

 

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