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2012年7月10日 (火)

シューベルト 即興曲D899 ブレンデル

Chiba_sky

今年の空の雲はちょっと違う。

空を見上げるのが好きで、歩いていても、ときおり、ぽかんと見上げたりします。

自宅の部屋から顔を出して写真を1枚。

夏のような、秋のような、春のような複雑な雲です。

完璧な晴天というものが、どうも日本にはなくなってしまったようです。

それは、地球規模の気象の変転でしょうが、そればかりでなく、いまのニッポンそのものです。

報道に煽られてしまっている心情もありますが、子供たちの死に関し、涙をとどめることができません。

わたしたちの心はどこへいってしまったのでしょうか・・・・・。

Schubert_brebdel


 シューベルト 即興曲 作品90 D.899

     ピアノ:アルフレッド・ブレンデル


31歳で亡くなってしまうシューベルトの、1827年、晩年と呼ぶにはあまりに若い30歳の時の作品。
3セットからなる、自由な楽想と形式からなるシューベルトの即興曲集。

シューベルトのあとの方のピアノ作品、後期ソナタや即興曲には、明るい澄み切った青空のような心境を映し出す響きとともに、死と隣り合わせのような悲しみの予見に溢れております。

4曲からなるこの曲集は、最初から即興曲としてまとめられていたわけでなく、4曲セットにすることも含め、その命名も後付けのようである。
しかし、個性の異なる4つの自在なる作品を、こうして「即興曲」として聴くことに、なんの違和感もないし、自由な歌心あふれるそれぞれ異なる風情の曲をまとめて聴くことは、わたしたちに、音楽を聴き、心解放されるような優しさを呼び覚ましてやみません。

「即興」とは、思うがままに表現すること・・・。
かつて中学生のときだったか、国語の授業で、「興」の漢字を使って熟語を作りなさいと、言われて、「即興」と黒板に書きました。
先生受けしましたねぇ。
わたしは、なんのことはない、すでにクラヲタ君でしたので、シューベルトのこの曲を知っておったのですよ。
全然、自由な発想じゃなかったけれど・・・・。

それは余談として、4曲ともに楽想ゆたかで、素晴らしい音楽です。
変奏曲としての第1曲は、いかにもシューベルトらしく、ゆるやかに始まりながら流れがとてもよくなり、スケールも大きく幻想的。
 常に流転しているかのようにとめどなく流麗な第2曲は、とてもロマンティック。
3曲目は、この曲集の白眉ともいえる美しさ。
こちらもロマンティックなことでは負けてませんが、ときおり刻む左手がデモーニッシュな感じがして、優美ななかにも深い何かを訴えかけてくるように思います。
そしてこの一番親しみやすい4番は、こちらも左手が特徴的で、それだけでもリートの世界に通じているかのようです。

ブレンデルのピアノは、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンと続いたウィーンの意匠をそっくり引き継いだような、明るさと歌心、そして豊かな音楽性にあふれた理想郷のようなシューベルトに存じます。

もうひとつの4曲からなる曲集D935も、さらに素晴らしいです。
ことに短いけれど、その2曲目は純情で夢見るようなシンプルで美しい音楽です。
かつて、ゼルキンが、アンコールで全霊を込めて弾いたその素晴らしさを忘れえません。
この曲集は、またいずれ取り上げたいと思います。

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コメント

年をとってきたせいか、だんだん室内楽を聴くようになってきました。学生のころにはあまり興味のなかったピアノも熱心に聴くようになってきています。
ブレンデルのシューベルト!シブイところをつきます。
初めてブレンデルの画像を見たとき「この人なに?ガム食べながらピアノ弾いてるの?」と思いました。ブレンデルの魅力はPPからその表情からは想像できないffのすごさです。即興曲、全部好きです。2曲は自分でも弾いたことがあります。ヘタクソでも自分でひいてから聴くと楽しさ倍増です。ブレンデルのようには一生ひくことができません。(あたりまえ体操^^;)
ところでこの青空の写真って、ずっと見ていると、なんか雲が動いているように見えませんか?
私だけ?眼底が振動しているとか?

投稿: モナコ命 | 2012年7月11日 (水) 09時22分

モナコ命さん、こんばんは。
旺盛でどん欲だった高校時代に、器楽・室内楽にはまり、そして最近は、そんな昔を思うように室内系を聴くようになりました。
同じく、わたしも歳取ったということですね。
そんな今、ブレンデルのシューベルトが染みますねぇ。
最初は、眼鏡の地味なオジサン、ウッディ・アレンみたいな人に思いましたが、この人で驚いたのは、バッハとリストでした。

そして、モナコ命さんは、こんな難しい曲弾けちゃうんですかぁ!
指一本一本しか動かないワタクシには、神様のようです。
さりげなくシューベルトをさらりと弾くオヤジになりたいです。

この雲は、実はそんな意識がして撮りました。
動きが感じられますね。
今年、空写真をいろいろ撮ってますが、空が変転しすぎです。

投稿: yokochan | 2012年7月12日 (木) 00時16分

ブレンデルのこれはイイですねぇ。シューベルトの即興曲は142も90も聴くといつの間にか忘れていた何かを思い起こさせてくれます。
そしてそんなことを忘れていた自分になんとなく悲しくなったりもします。
ブレンデルの知的で柔らかい響きはこの曲で私も一番取り出す演奏ですが、最近内田光子にもはまっております。
R・ゼルキンの晩年の音源がどこかにあるはずで、それが見つかればと思っているのですが。

投稿: yurikamome122 | 2012年7月12日 (木) 06時57分

yurikamomeさん、こんばんは。
久しぶりに取り出して聴いた即興曲に、わたしも心が疼くような思いを味わいました。
これらを聴いた若き日々が脳裏をよぎったこともあります。
そんな気分にぴったりなのがブレンデルかもしれませんね。
あとはケンプでしょうか。
内田さんのものはまだ聴いたことがないですが、緊張感高そうですね。
ゼルキンの演奏もあれば必携ですね。
ともかくいい音楽です。

投稿: yokochan | 2012年7月13日 (金) 00時04分

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