フィンジ 「いざ花冠を捧げよう」 B・ターフェル
うだる夏でも静謐感漂う日本庭園。
そして、虚空に浮くかのような鯉。
しばし、涼みました。
フィンジ 歌曲集「いざ花冠を捧げよう」
Let us garlands bring〜シェイクスピア詩
Br:ブリン・ターフェル
Pf:マルコム・マーティノー
(1995.2 @ヘンリー・ウッド・ホール)
ジェラルド・フィンジ(1901〜1956)の決して多くない作品のなかで、歌曲集はCDにして約3枚分ぐらいはあります。
いずれもフィンジらしい、静かに聴きてに語りかけてくるような優しさとやわらかさにあふれてます。
その中でも、少し古風で、少し哀しく、少しユーモアもあって、そしてそれゆえに愛すべき作品が「いざ花冠を捧げよう」です。
5つの曲からなってます。
1.「Come away, come away, death」〜来たれ 死よ
2.「Who is Silvia?」〜シルビア
3.「Fear no more the heat o' the sun」〜もはや日照りを恐るることもなく
4.「O mistress mine」〜おぉ 愛しい君よ
5.「It was a lover and his lass」〜それは恋する若者たち
一番に印象的で心にグッとくるのが、1曲目
Come away, come away, death
Come away, come away, death,
And in sad cypress let me be laid;
Fly away, fly away, breath;
I am slain by a fair cruel maid.
My shroud of white, stuck all with yew,
O prepare it!
My part of death, no one so true
Did share it.
Not a flower, not a flower sweet,
On my black coffin let there be strown;
Not a friend, not a friend greet
My poor corpse, where my bones shall be thrown:
A thousand, thousand sighs to save,
Lay me, O where
Sad true lover never find my grave,
To weep there!
シェイクスピアの書いた哀しい歌は、道化の歌。
死よ来たれ、悲しみのうちに糸杉の中に横たえてくれ
一輪の花も捧げることはしないでくれ
悲しき誠の恋人が見出すことのない我が墓・・・
恐ろしく悲しく、自ら見捨てられたことに自虐を歌う詩に、フィンジは透徹の眼差しでもって孤高の音楽をつけました。
これを聴いて心動かされない人はいますまい・・・・・。
Fear no more the heat o’ the sun
Fear no more the heat o’ the sun,
Nor the furious winter’s rages;
Thou thy worldly task hast done,
Home art gone, and ta’en thy wages;
Golden lads and girls all must,
As chimney-sweepers, come to dust.
・・・・・・・・・・・・・
No exorciser harm thee!
Nor no witchcraft charm thee!
Ghost unlaid forbear thee!
Nothing ill come near thee!
Quiet consummation have;
And renownéd be thy grave!
戯曲中、毒殺されてしまったかと思われた女主人公を悼んで歌われる、痛恨の哀歌。
こちらも物悲しく、楚々とした気持ちに誘われる。
もはや、灼熱の太陽をも恐るな・・・あらゆる禍々しい災いを列挙し、それらからは開放され、恐ることはないと歌います。
最後は哀悼の意を評し、静かに印象的に終わります。
ほかの3つは、明るめのシンプルな歌。
5曲目の鳥の鳴き声を快活に歌う曲で、心は晴れてゆきます。
美しく哀しいフィンジの音楽。
静かに、心に染み込んできます。
B・ターフェルはオペラやドイツ物ではアクの強さが目立ちますが、自国ものを慈しむように、そして過度の思いを乗せずに、静かな語り口で歌って聴かせてます。
このCDは、V・ウィリアムズ、アイアランド、バターワースなど、珠玉の英国歌曲が収められてます。
折にふれ聴く、愛聴盤のひとつです。
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