モーツァルト ピアノ協奏曲第9番 ゼルキン
お盆休みに、実家のいつもの山に登り、今年一番のコスモスを。
この下は海です。
これから秋にかけて、もっと色濃く、枝もしっかりとしてくることでしょう。
モーツァルト ピアノ協奏曲第9番 変ホ長調 「ジュノーム」 K271
Pf:ルドルフ・ゼルキン
クラウディオ・アバド指揮 ロンドン交響楽団
(1981.ロンドン)
久しぶりにモーツァルトを聴くと、心洗われる思いがします。
とりわけ素敵なピアノ協奏曲の数々。
ギャラントな若い番号のものでも、どこかに陰りを感じることができるし、ブッファ的な転がるような軽やかさもあります。
それが、後期のものになるほどに、深みと夕暮れの度合いを増してくるのでした。(まるで、某Uさんみたいな表現)
その若い番号の9番は、変ホ長調で、その同じ調声には、モーツァルトの作品の中でも高貴で気品にあふれる曲がいくつかあります。
39番の交響曲に、ヴァイオリンとヴィオラの協奏曲、同じピアノ協奏曲では14番と22番、晩年のディヴェルティメント・・・、あっ、あとあの美しいピアノ四重奏曲の2番もそう。
ともかく魅力的な音楽がたくさんあります。
フランスからジュノーム嬢がやってきて、フランス風の洗練された奏法や楽風をモーツァルトに植え付けた。
その結果生まれたこの曲は、フランス楽旅の前に、しっかりとフランス風の流麗さと軽やかさを見に付けてしまって生まれた桂作。
冒頭に、前奏もろくにないままに始まるピアノソロ。
そのあと、フランス訛りも感じる優美なオーケストラと、どこまでも軽やかで愛らしいピアノ。
3楽章の弾けるリズムに、どこまでも飛翔するかのような音楽。
でも中間部でのピアノの独白の澄み切った音色にはまったくまいってしまいます。
それを伴奏する弦楽のピチカート、ついで奏される澄んだヴァイオリンのユニゾン。
これら1楽章と3楽章だけでも素晴らしいのに、間に咲く第2楽章の朝露に濡れたような、しっとりとした悲しみと、そして愛らしさにあふれた音楽には、さらに、そして、ほとほと、まいってしまいます。
いまさら驚きませんが、21歳のモーツァルトです。
枯淡の境地にありながら、そしてゆったりとした音楽運びにありながら、その表情がとても若々しいゼルキン翁のモーツァルト。
80年代初めから始まったゼルキンのDGへのモーツァルト録音の功績の半分は、一歩引いて、ゼルキンにぴったりの透明感あふれるオーケストラを指揮するアバド。
このコンビの数枚の音盤は、永遠に枯れることのない、純なるモーツァルト演奏のひとつだと思います。
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コメント
この暑さを冬に貯蓄できる人物は大金持ちになれますね。
信じられないくらいの暑さです。。。先週までは溶ける感じでしたが、今週からは燃える感じです!
モーツァルトの9番、EsDur!私もオーケストラで演奏したことあります。あのころはまだ花の20代^^若かったなー。。。しみじみ。。ピアニストが私の1歳上の美人ちゃん^^好きだったなー^^-
「あの頃の私に戻って、あなたに会いたい」という歌がありますが、さまよえる様のこの書き込みを見て、不覚にも涙が出てきました。
そうだ!この曲!演奏した!
20代前半の私!若かった。前途洋洋。知識も経験もお金も何もなかったけど、時間と情熱だけはあった!
さまよえる様の書き込みを見ているとゼルキンファンの私にはすぐにでも聴いてみたいCDです。明日にでも注文します。
投稿: モナコ命 | 2012年8月22日 (水) 19時20分
今晩は、よこちゃん様。 この名曲、私はハスキル盤しか持っていませんがゼルキン盤も聴いてみたくなりました。演奏者が女性と男性とでは、違った味わいがありますでしょうか?弾き手が違えば男女に関係なく、それぞれの味わいがあって当然ですけど…ききくらべ(酒じゃあないっすよ)聴きくらべ♪
投稿: ONE ON ONE | 2012年8月22日 (水) 22時54分
モナコ命さん、こんばんは。
そうなんですよね、家庭でも使える蓄熱マシンを発明したら大当りです。
あと融雪にも使えますもんね。
お盆より、パワーアップしたこの暑さ、関東も激しいですが、東北・北海道も暑すぎのようですね。
お見舞申し上げます。
そしてまたよき思い出話をお聞きしました。
まさに、ジュノーム嬢じゃありませぬか!
ワタクシには、そのような麗しき、かつ芸術的な甘き思い出はございません・・・。
モーツァルトは、しかしいいです。
やはりモーツァルトはモーツァルトでした。
ゼルキンとアバドは全曲を残せなかったのですが、カップリングの17番も含め、最高です!
投稿: yokochan | 2012年8月23日 (木) 00時57分
ONE ON ONEさん、こんばんは。
今日は赤い軍団の若人にまんまとやられてしまいました・・・・。
で、男女、効き比べですか・・・、いや聴き比べですね。
クラウス盤は、わたしも持ってるはずです(コンサートホール盤)。
録音がショボイのですが、とても雰囲気豊かな演奏でした。
若い人が、上手に弾くより、こうした老大家がしみじみ演奏するモーツァルトに魅力を感じます。
投稿: yokochan | 2012年8月23日 (木) 01時02分
よこちゃん殿。赤い軍団に15個目の完封食らったのは2日前。今日は巨人に1-3…優勝は巨人に決まりみたいな世の中の空気に抵抗します!さぁ。さぁさぁ、ご一緒に打倒巨人軍!
投稿: ONE ON ONE | 2012年8月24日 (金) 21時41分
ONE ON ONEさま、今日の悲報は、せっかくの懐かしいユニフォーム姿なのに、へたすりゃ相手に大記録をも作られかねないニュースとともに確認いたしました。
赤いのにも頭にきますが、なんといっても、このオレンジ軍団の当たり前的な物量大ブルジョアジー路線に、無性に抵抗したくなります。
このまま走らせてなるものですか。
そして、はやくも、オフで、有望選手を独占させてなるものですか。
といっても、何もできませんが。
とりあえず、フェイスブックで暴れてみようかしら!
投稿: yokochan | 2012年8月25日 (土) 00時42分