ベルリオーズ 幻想交響曲 ゲルギエフ指揮
薄暮の浜松町駅。
オリンピックも、お盆も終り、日常と晩夏を迎えるこの時期に、8月の小便小僧だ。
予想外に着込んだ小便小僧は、ちょっと暑そうですが律義な制服姿は、夏の海難事故防止をしっかりと訴えておりました。
ごらんのとおり。
メッセージを掲げる健気な小便小僧なのでした。
ベルリオーズ 幻想交響曲
ヴァレリー・ゲルギエフ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(2003.5 ウィーン・ムジークフェライン)
猛暑に聴く幻想も悪くないもんだ。
しかも、よりによってゲルギエフの指揮で、だなんて。
毎年のように来日し、絶倫顔負けの超重量プログラムを連日難なくこなすこの指揮者のことがいまだによくわからない。
今年は、N・デセイと「ルチア」のコンサート形式上演、ショスタコ5番、チャイコ4番、そして「幻想」などが演目。
それと復興支援の特別コンサートも催す多彩ぶり。
ゲルギエフは、祖国の危機にも立ちあがり、平和活動にも熱心で、こうしたことにも頭が下がるヒューマンな方なんです。
爆演系と称されることもありで、80~90年代は、その濃いお姿や、爪楊枝指揮棒をチクチクと動かす指揮姿に、そんなイメージを抱いたものですが、後年、わたしが実際に聴いた時には、そのイメージはうかがわれず、むしろ焦点定まらずでした。
でもその中のひとつ、ベルリオーズのレクイエムは、劇的な場面をこけおどし的に演奏するのでなく、全体の構成をしっかりととらえた真摯な演奏でありました。
しかし、その数年後に聴いた、ショスタコの5番や10番では、ひっかかりもとっかかりもなく、さらさらと流れるのみの演奏に味気ない想いをすることとなりました。
以来、ゲルギエフのライブは、魅力のワーグナーやシュトラウスでも聴いておりませんし、音源も聴くことはなくなってしまいました。
2003年のこの「幻想」のウィーン録音は、発売時に一度聴いたっきりで、その印象は忘却のかなた・・・・。
それ以来の視聴で、全然至極まっとうの幻想に、もっと大暴れを期待していたワタクシは肩透かしをくらうことになるのでした。
ウィーンフィルの幻想といえば、かつてはモントゥー、ハイティンク、デイヴィスと趣きある演奏が思い出されますが、ここでは、フィリップス録音の素晴らしさが後押しし、克明で一音一音ゆるがせにしない重厚な解釈に聴こえます。
でも、終楽章までは、なにも起きない幻想。
そのヴァルプルギスの夜は、そこそこ荒れてます。終結のアッチェランドも鮮やかなもので、演奏会では、終わりよければ的に盛り上がりそうです。
やはり、わからない、どうも不明のゲルギエフ疑問は、最近のLSOのものでもしっかり聴かない限り、ずっと続くのでしょうか・・・・。
せっかくのウィーンフィル。3楽章の野の情景が、極めて美しいことは特筆しておきましょう。
むしろ、このCDの聴きものは、余白に入った「クレオパトラの死」かもしれません。
独唱カンタータに劇性と抒情、ベルリオーズらしい筆致を巧みに聴かせてくれます。
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コメント
毎月楽しんでおります、小便小僧ちゃん。こんな制服姿も凛々しくて良いですな。
マエストロゲルギー。数年前生で拝見いたしました。案外小柄で頭部が少々寂しげでありました。
演奏も爆演と言うよりも熱演と言った感じでした…ただ正直なところ、あまり印象に残ってないんですよ。ゲルギー指揮のCDは値段が張るので、簡単に手でませぬ。最近はCDの購入は、もっぱら中古店にてが現状であります(涙)
投稿: ONE ON ONE | 2012年8月19日 (日) 23時44分
ゲルギエフ&ウィーンフィル!組み合わせを見ただけで興奮します。私はこのカップルのチャイコ4番が好き。
ゲルギエフ先生の演奏はスタジオになると急に紳士的になって物足りなく感じます。ライブだと大興奮なのですが。
スタジオ録音だとフツーか、ちょい元気のある演奏という印象です。しかし、画像つきの演奏を聴くとエラク燃えてしまいます。ゲルギエフ先生はライブ型の指揮者だけじゃなくて視覚に訴えるタイプの指揮者のようです。でも好きです。
幻想交響曲は昭和47年の木内博指揮、山王中学校吹奏楽部の演奏がすばらしかった。その後息子の木内氏がやったようだけどぜんぜんだった。。。しかたないか。才能や能力は2代続かないのがこの世界ですね。
投稿: モナコ命 | 2012年8月20日 (月) 11時34分
こんばんは。メダリストの銀座パレード行きたかった~。でも、人ごみにまみれて迷子になるし・・・。この暑さですから熱中症の方が怖い。
ゲルギエフはロンドン交響楽団のものは相性がよくない。ウィーン・フィルは格調性があり低弦が力強いし管がパワフル。キーロフ歌劇場によるロシア物だけでなく「幻想」だって生きたサウンド。カップリング曲「クレオパトラの死」もグー。
投稿: eyes_1975 | 2012年8月20日 (月) 21時53分
ONE ON ONEさん、こんばんは。
今月もナイスな小僧ですね。
ゲルギーさんは、見た目と音楽がどうも異なるように感じます。
生ゲルギ(なんか気持ち悪い食べ物みたいですが)を体験されたのですね。
わたしの場合、聴いてるそのときは、いいのですが、あとで、あれははて?的になりました。
プロデュース能力とオペラなどの大作をまとめあげる構成力は抜群だと思います。
で、LSOやキーロフは高いですな・・・・
投稿: yokochan | 2012年8月20日 (月) 22時07分
モナコ命さん、こんばんは。
ゲルギーとウィーンフィルは相性がいいですね。
チャイコフスキーは、FMライブで聴きましたが、スタジオでは聞けない、ライブ感溢れるストレートな演奏でした。
スタジオCDだとどうも、そのあたりがあとなしめな感じです。
あの精力溢れる指揮ぶりは、ビジュアル的に興奮させるものかもしれませんね。
ゲルギーさんの音楽の魅力は大曲をそつなく、真摯に聴かせる集中力だとおもいます。
イタリアものやワーグナーもちゃんと聴かねばと思ってます。
山王中学校吹奏楽部の名前は、いつもモナコ命さんからお聴きしてて、とても気になっております。
わたしの中高時代は、優秀な楽団とは無縁だったので、なんだかとても羨ましく、眩しく思います。
投稿: yokochan | 2012年8月20日 (月) 22時21分
eyes_1975さん、こんばんは。
仕事サボって、銀座に行こうと思っていたのですが、きっと凄い人で、選手たちも米粒ぐらいにしか見えないし、暑くなる予報でしたので、断念しました。
しかし、すごい人出だったようですね。
ゲルギーとウィーンフィルの相性のよさは定評ありますね。
チャイコフスキーは素晴らしいと思います。
この幻想もよいのですが、このコンビならもっと飛ばしてもよかったのかな、と思ってしまいました。
しかし、音のパワーは凄いですね。
投稿: yokochan | 2012年8月20日 (月) 22時27分
こんばんは。お久しぶりです。
ゲルギー、ホントつかみにくい指揮者ですよね。今まで、満足するコンサートを聴けたことはないんですが、何故か気になって足を運んでしまうんですよ。今年は所沢でブラームスの2番と、ベルリオーズの幻想交響曲という、これまた???なプログラムを振るので聴きに行ってきます。個人的に、ブラ2がかなり興味深いです。怖いのも見たさというか(苦笑)。
そうそう、今月の音楽の友からの情報によると、2014年2月にマリナーが再来日の予定らしいです。来年の兵庫と続けての来日予定、嬉しいのですが、少々複雑な気分です。
投稿: ナンナン | 2012年8月21日 (火) 01時09分
残暑?が厳しいですね。
暑さに負けず小僧ですね!
投稿: edc | 2012年8月21日 (火) 20時06分
ナンナンさん、こんばんは。
こちらこそ、ご無沙汰です。
マリナー記事をそういえばしばらく書いてませんね。
そして、情報ありがとうございます。
早速、音友誌を立ち読みしました。再来年は、都響でしょうか?
確かに嬉しいですが、できれば、アカデミーと復活などはないのでしょうかね?
高齢だし、かつてのマリナーを期待したいですし、あまり無理はして欲しくないですね。
スペイン、ポ-ランド、日本と、どうも活動の場が限られてきてますね・・・・。
今年のプロムスも、英国の世代交代がはっきりしてきてまして、サー・コリンや、アンドリューも出ないのです。
マリナーに、ラストナイトを、という熱望は叶えられそうにありませんね・・・・。
ところで、つけたしのようにゲルギーですが、嫌いじゃないけど、不明の人、今年の公演のご評価をまたお聞かせください。ブラ2とはまた面白そうですねぇ。
投稿: yokochan | 2012年8月21日 (火) 20時58分
euridiceさん、こんばんは。
暑いですね、お見舞い申し上げます。
とりわけ、今日は雲ひとつなく、容赦なくて、電車からまたこの小僧を見たのですが、暑そうで・・・・。
ちょっと予想外の、リゾートじゃない8月の小僧でした。
投稿: yokochan | 2012年8月21日 (火) 21時06分