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2012年9月23日 (日)

ヤナーチェク 「死んだ男の日記」 ラングリッジ&アバド

Tokyo_st1

復元が完成にほぼ近づいた東京駅丸の内北口。

この日の晩、映像やイルミネーションのCGショウのリハーサル。
そして、22と23日の夜には本番です。
あいにくと観ることができませんが、ちょっとやりすぎの感があり・・・・ですかねぇ。

神奈川県民だったから子供の頃から、首都東京への入口は湘南電車で、品川・新橋・東京駅が起点。
親類がみな池袋・板橋方面だったので、やはり東京駅でしたね。

前にも書きましたが、子供時代、東京の帰りは駅で売ってた「ミルクドーナツ」。
赤い箱に入ってた一口サイズのドーナッツで、グラニュー糖みたいなサラッとした砂糖が別に着いていたもの。
これは、ほんと美味しい東京の味でしたねぇ〜

Janacek_tagebuch_eines_verschollene

  ヤナーチェク   歌曲集「死んだ男の日記」

        T:フィリップ・ラングリッジ 

        A:ブリギッテ・パリーズ

    クラウディオ・アバド指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

                  (1987.11@ベルリン・イエス・キリスト教会)


チェコのモラヴィア出身のヤナーチェク(1854~1928)は、かつては、シンフォニエッタとふたつの弦楽四重奏、ヴァイオリン作品、グラゴールミサぐらいでしか聴くことのない作曲家だったように思うが、本場での上演や録音はいくつかあったオペラに、サー・チャールズ・マッケラスがメジャーレーベルに次々と名録音を残すようになって、オペラ作曲家としてのイメージに激変した。

日本での上演は、残念ながらヤナーチェックのオペラは、かなり少なく、新国でも一度も上演機会はない状況だが、いずれは果敢に取り上げてくれるのではと思ってます。

そして、9作あるオペラ作品の番外編。
「消えた男の日記」を。

これはもともと、ピアノ伴奏によるテノール独唱の歌曲集、ないしは、女声版であったものを、ヤナーチェクの死後、専属写譜屋だったセドラーチェクがオーケストラに編曲し、オペラ上演可能としたもの。
数年前のパリ・オペラ座の来日公演で上演されてます。
音源では、こちらのオーケストラバージョンはともかく、オリジナルのピアノ版もいくつも出てます。

この原作の詩は、モラヴィアの農村で実際にあった事実の主人公であった青年が熱い思いとして残したもの。

その事実とは、その青年がジプシーの妖艶な娘に誘惑されて恋におち、さらに子供も孕ませてしまい、村の厳格なしきたりや人々の目に耐えられなくなって、泣く泣く村を捨て、ジプシーたちと行動し失踪する・・・・というもの。

これは、まるで、「カルメン」を思いおこします。

ジプシーは、差別的用語とされているようで、「ロマ」とも称されるようだ。
どうもピンとこないけれど、インド起源とされるこの移動非定住民族は、われわれ島国の民族が思う以上に、ヨーロッパでは古来忌み嫌われていて、いろんな紛争の元にもなっていたし、ナチスによる迫害もユダヤ人の比でなかった。
そんな彼らも、いまや各国に溶け込んでいるものの、まだまだ差別は残っているようです。
男性からすると、エキゾチックな風貌のかの女性たちは、ミステリアスで情熱的にうかがえ、ドン・ホセさんやこちらの「消えた男」さんの心情がよくわかりますな・・・・・

ヤナーチェクは、早くに結婚生活に失敗し、この曲を作曲していたころ(1917)、歳の差38歳の人妻と恋に落ちていた。63歳と25歳。
でも、ほんとうの純愛で、お互いに尊敬しあうものだったともいいます。
こんなことから、かつては、ヤナーチェクは女好きとのレッテルもありました・・・・・。

曲は22の部分からなっており、さらに場面で大きく分けると3つ。
ひとつめのくくりは、若者が胸元まで編んだ黒髪を垂らしたジプシー娘に会い、その想いが高ぶるさまを歌う。

 ふたつめの部分は、仕事でジプシーがいまいる森へ向かうこととなり、自分は大丈夫、と強がるが、実際に娘と会い、誘惑され、ついに床を共にしてしまう。
オーケストラの間奏が、その模様を甘く、情熱的に奏でる。

 三つめは、後悔する若者。恥ずかしくて牛の顔もまともに見れないと歌う。
愛する妹のブラウスもこっそり盗み貢ぐ、それも悔やむ揺れ動く心。
やがて、すべての定めとなった運命を受けとめ、父と母、妹、そして愛する村に別れを告げ、去ってゆく。
ジプシーの娘が息子を抱きしめて待つところへ帰ると・・・・・。

35分あまりのこの音楽は、編曲とはいえ、ヤナーチェックの語法がしっかりと刻まれていて、さらにハンガリー風な音型とかエキゾティックな音色も各種鍵盤楽器の効果もあって巧みに描かれております。
そして何より、テノールの没頭的な歌も加わって、劇的で緊張感あふれる作品になってます。
最後の告別の場面はとても感動的で、どこか明るい展望さえ感じるのでした。

問題意識に富んだアバドは、こんな渋すぎる曲をも選び出して、鋭くえぐり取ってみせた。
シンフォニエッタは若い頃から得意にしていたが、オペラなら「死者の家から」を選択するアバド。
ジプシーにまつわる音楽だけを集めたコンサートも開いたり、ロシア系でもムソルグスキーの社会性に着目したりと、しいたげられたマイノリティを描いた音楽を積極的に取り上げてきたアバドです。
少し明るめのベルリン・フィルの先鋭な響きを得て、実に説得力ある演奏。
故ラングリッジの性格的な歌唱も惹かれます。

ピアノ伴奏のオリジナル版のヘフリガーやシュライヤーをいずれまた取り上げてみたいと思います。

ヤナーチェクのオペラ記事

「マクロプロス家のこと」

「ブロウチェク氏の旅行」

「死者の家から」

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コメント

こんばんは。
2008年、オーチャード・パリ管で聴きました。青ひげの方が印象的でした。クーンの音楽より舞台の美しさが印象に残っています。今週の王子・ピオーは素敵でした。2枚しかサインしてくれませんでしたが。

投稿: | 2012年9月23日 (日) 21時10分

Mieさん、こんばんは。
ピオーは今週でしたか。
ソールドアウトで気になってました。
サインもおめでとうございます。
パリのオペラ座公演は、わたくしは、トリスタンのみでした。
思えば、もうひとつの青髭やこちらの方が希少な上演でしたね・・・・。

投稿: yokochan | 2012年9月24日 (月) 00時19分

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