バッハ ゴールドベルク変奏曲 レオンハルト
昼の約束で、そのあと散策しまくり。
以前は、客先があって、定期的に訪問する浅草でしたが、そちらも移転してしまい、足が遠のいてしまいましたが、たまたま別件にての浅草行きでした。
相変わらず、観光客は多いのですが、耳を澄ませると言語が以前と違う。
隣国二国の言葉はほとんどナシ・・・・、変わって、東南アジア系の方々と背の高い欧米の方々が目立ちました。
国際的な観光地でありますから、いまの情勢を正直に反映しておりますです、はい。
バッハ ゴールドベルク変奏曲
Cem:グスタフ・レオンハルト
(1975 パリ)
あの連日の猛暑がウソのように、涼しくなった毎日。
冷房を一晩中いれるわけにいかないから、夜は切って寝ていた夏の日々は、ともかく汗をかいてしまい、寝苦しい毎日でした。
そんなときは、どんな音楽も受け付けず、眠りを誘う曲なんてありはしなかった・・・・。
これまではそんなことがなかったのに、今年はともかく辛かった・・・・。
そこで、取り出したるは、バッハのゴールドベルク変奏曲。
昨年は、真夏にゼルキン盤を聴いてましたから元気な夏だった様子です。
真偽は不確かながら、不眠に悩む伯爵のために演奏された曲とされておりますが、いま、この早秋の頃、夜も長くなり、空気も澄んできて、とてもお似合いの音楽ですな。
最初と最後のアリアをはさんでの30の変奏曲。
それらの変奏曲も、真ん中をピークに、多様なスタイルで変幻自在さを装いつつも、じつに緻密で厳格な構成によって書かれている驚きのゴールドベルクです。
繰り返しを励行すると70分の大曲。
繰り返しなしでも50分かかりますね。
そしてなによりも、チェンバロばかりでなく、モダン・ピアノによる演奏も他のバッハ作品以上に普遍的になりました。
もちろん、グレングールドの功績であります。
さらにジャック・ルーシェが切り開いたジャズのジャンルとしてのコラボレーション。
多感な中学時代は、厳然たるクラシカル音楽としてのバッハが、こんな風にジャズ化されてしまうことに嫌悪感を覚え、そんな行為許すまじ・・・・といった気分に捕らわれたものであります。
長じて、そんな教条的な感覚は遠のき、あらゆるスタイルを柔軟に受け入れ、それでもバッハ本来の顔やテイストを失わない、大バッハの偉大さにこそ、オールジャンルの無敵さと偉大さを感じるようになったのでした・・・。
チェンバロでの演奏のわたしのこの曲のルーツは、EMIへのヘルムート・ヴァルヒャの録音でした。
盲目のバッハへの帰依者たるヴァルヒャの演奏はオルガン曲においても、厳格であると同時に、どこか甘味で緩やか、そして微笑みを感じるようなバッハでありました。
その後、さらに厳しさと鋭利な息詰まるようなリヒターを聴き、80年代、社会人として聴いたのが、グスタフ・レオンハルトのものでした。
世代的には、さほど乖離があるわけではないのに、ヴァルヒャとリヒターとの違いは、トータルにバッハを演奏しながら、レオンハルトは古楽演奏のジャンルのパイオニアのひとりであったこと。
そしてアーノンクールやコープマンらの先鋭さと軽快さと異なり、しっとりとした中に厳しい造形と生真面目さと孤高のクールなスタイルがあった。
さらになんと言っていいのでしょうか、余剰なものがない、シンプルでピュアな姿とでもいう感じが終始ただようのです。
これはオルガンでも、指揮でも同じ感覚です。
極めつけは、「マタイ受難曲」でした。
久しぶりに聴いたレオンハルトのゴールドベルク、不芳な日々に、心洗われるような清冽さを味わいました。
何度聴いても、変奏がすべて終わり、最後にアリアが再び奏でられるとき、心の中に熱いものがこみ上げてきて涙腺が刺激されます・・・・。
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コメント
レオンハルトのゴルトベルク!
1960年代の録音とともに、(その前、モノラル録音もありますがそちらは未聴)折り目正しく、しかし精神の自由さを感じる演奏で、今だ色褪せない魅力を持った名演。
秋の夜にピッタリの選曲でもありますね。
投稿: golf130 | 2012年9月29日 (土) 07時35分
golfさん、こんばんは。
60年ものも、モノラル盤も未聴のわたくしですが、レオンハルト盤の魅力は、こちらでも筆舌に尽くしがたいものがありますね。
さすがは、ゴールドベルクの達人のgolfさん。
レオンハルトに3種の録音があることを知りませんでした。
これからの季節、この曲、そしてバッハはぴったりですね。
投稿: yokochan | 2012年9月30日 (日) 00時20分
今晩は。私はチェンバロのゴルドベルクよりもモダン・ピアノのそれのほうが好きだったりいたします。初めて聴いたのが作曲家としても高名な高橋悠冶の演奏でした。中学2年の時のことです。母の職場の同僚で手持ちのLPレコードを処分したがっている人がいて(LPからCDへの転換期でしたから)、その人に10枚ほどのLPを1500円ぐらいのお金で譲ってもらったのです。アルゲリッチのシューマンやホロヴィッツの展覧会の絵やカバレフスキーに混じって高橋氏のゴルドベルクやバッハのピアノ協奏曲(チェンバロ協奏曲)もありました。連日のようにそのLP約10枚を聴きまくったものです。初めてのゴルドベルクがレオンハルトやヴァルヒャや新旧グールドという人は珍しくないでしょうが、ゴルドベルク・デビューが高橋悠冶という人はあまりいないと思います。自慢にはなりませんが…高校時代に初めて聴いたグールド新盤はその斬新な解釈が大変なショックでした。件のレオンハルト盤は、本当に最近になって聴きました。DHMの50周年記念ボックスに入っていたのです。モダン・ピアノの演奏ばかり聴いてきたのでレオさんの演奏はかえって新鮮でした。最近はアンドラーシュ・シフの演奏も好きです。でも一番はシトコヴェツキーの弦楽オケ版です。私って本当にヘンな奴ですね…
投稿: 越後のオックス | 2012年11月21日 (水) 19時36分
越後オックスさん、こんばんは。
いつもご愛読ありがとうございます。
感謝感激です!
チェンバロのゴールドベルクはこちらのレオンハルトとヴァルヒャ、リヒターしか正直聴いてませんで、わたくしもピアノの演奏で聴くことが多いのが実情です。
ご指摘のように、いまやいろんなヴァージョンで聴けるゴールドベルクですね。
フーガの技法もしかり、やはりバッハの音楽は懐が深いです。
高橋悠冶、アキ子は、現代音楽の世界の人々だったので、なかなか手が出せない方々でした。
バッハもあったなとの印象ですが、いまこの歳にして聴いてみたいですね。お教えいただきありがとうございます。
そんな音盤が入っていたコレクションとはまた、いいご縁だったのですね。これもまた音楽の出会いがもたらす素晴らしい世界だと思います。
ゴールドベルクに関しては、相当にお聴きになってらっしゃるのが、ブログ仲間のgolf130さんです。
いつも教えられてます。
投稿: yokochan | 2012年11月23日 (金) 00時04分
再びすみません(汗)
レオンハルトの演奏は、はるか昔、平均律を自身で演奏する際の聖典として、その堅実なスタイルに繰り返し聞き惚れた思い出があります。その後で、自身の演奏を聞く時の落胆ぶりと言ったら……(笑)
投稿: Booty☆KETSU oh! ダンス | 2013年2月 4日 (月) 19時21分
Booty☆KETSU oh! ダンスさん、こんばんは。
ご自分もお弾きになられるのですね!
何もできない無芸のわたくしには羨ましいかぎりです。
レオンハルトの演奏は、指揮もオルガンも含めて、真摯かつ真面目で求道者のようですね。
完璧すぎますから!
投稿: yokochan | 2013年2月 5日 (火) 21時53分