ベルク ヴァイオリン協奏曲 ズッカーマン&ブーレーズ
銀座ミキモト店頭、8月です。
9月はもう違うかもしれませんが、あと少しでクリスマスツリーが立ってしまうんですな。
季節の巡りは暑くて遅く感じますが、あと3ヶ月でクリスマスですよ。
自分も1年歳を重ね、そう考えると、もういやになってしまいますね。
ベルク ヴァイオリン協奏曲
Vn:ピンカス・ズッカーマン
ピエール・ブーレーズ指揮 ロンドン交響楽団
(1984.11.21 ロンドン)
わたくしにとって、3大ヴァイオリン協奏曲といえば、ベルク、コルンゴルト、バーバーだ。
略して、BKBだ。
アルバン・ベルク(1885~1935)。短い生涯、さほど多くない作品、でもオーケストラ曲、協奏曲、室内楽、器楽、オペラ、歌曲と音楽のすべてのジャンルを網羅している点がすごいと思う。
そのほぼすべてが好きですが、なんといっても、わたくしとしては、このヴァイオリン協奏曲と「ルル」と「ヴォツェック」のふたつのオペラに集約されます。
1935年、「ルル」の作曲中、ヴァイオリニストのクラスナーから協奏曲作曲の依嘱を受け、そして、アルマ・マーラーとグロピウスの娘マノンの19歳の死がきっかけで、生まれた協奏曲。
「ある天使の思い出に」と題されたこの曲がベルク自身の白鳥の歌となりました。
そんな思いで聴くこのヴァイオリン協奏曲には、もうひとつ、バッハの名前も重なります。
2部構成の第2楽章で、バッハのカンタータ第60番「おお永遠よ、汝おそろしき言葉よ」からのコラールがそのまま引用されていて、ヴァイオリンや木管で再現されると、そのあまりの美しさと崇高さにわたしは卒倒してしまいそうになる。
「主よみ心にかなうのなら、このいましめを解いてください。わがイエスがきます。お休みなさい、おお世界よ。わたしは天にある家に戻ります・・・・・・・」
第1楽章では、ケルンテン地方の民謡「一羽の鳥がすももの木の上でわたしを起こす・・・」が主要なモティーフとなっていて、晩年、といっても40代中年の恋や、若き日々、夏の別荘で働いていた女性との恋なども織り込まれているとされます。
こうしてみると、可愛がっていたマノンの死への想いばかりでなく、明らかに自身の生涯への決裂と追憶の想いが、この協奏曲にあったとされるのであります。
その二重写しのレクイエムとしてのベルクのヴァイオリン協奏曲の甘味さと、バッハへの回帰と傾倒を示した終末浄化思想は、この曲の魅力をまるで、オペラのような雄弁さでもって伝えてやまないものと思います。
ベルクの音楽を聴くと、師シェーンベルクとも、同僚のウェーベルンとも異なる、劇的音楽への親近性を思います。
オペラの人であり、裏返しは、オペラ指揮者でシンフォニストのマーラーのようでもあります。
シェーンベルクは革新を築き、ウェーベルンは革新の先の未来の音楽を開き、ベルクは、過去を見据えながらもオペラの歴史を継承した。
ベルクの音楽には、ほかの二人にない人間の顔を見出すことができます。
三人のバッハとの結びつきある音楽を選んだ特集でした。
新ウィーン楽派は、ブラームス、ワーグナー、マーラーとを結ぶかけはし的な存在でもあります。
ブーレーズが、この3人の作曲家を繰り返し演奏することも、こうしてわかります。
一音一音が耳にそのまま入ってくるリアルさがあり、その非情さが実に美しい。
ズッカーマンの抜群の音色のよさは、鋭利ではないけれど、ベルクの音楽の味わいを表出してやみません。
ともかく、わたしは、ベルクのヴァイオリン協奏曲が好きだ!
ベルク ヴァイオリン協奏曲の過去記事
「シェリング&クーベリック」
「ブラッヒャー&アバド」
「渡辺玲子&シノーポリ」
「パイネマン&ケンペ」
そして、神奈川フィルでは、次週から2定期連続でウェーベルンが聴けます。
新ウィーン楽派の音楽のライブは、なかなか聴く機会もありません。
横浜へ是非!
ウェーベルン オーケストラのための6つの小品
R・シュトラウス ホルン協奏曲第2番
Hr:プシェミスル・ヴォイタ
ブラームス 交響曲第2番
伊藤 翔 指揮 神奈川フィルハモニー管弦楽団
2012年 9月15日(土) 14:00 みなとみらいホール
そして、声を大にして言いたい!
石田コンマスで、BKBを!!!
ベルク、コルンゴルト、バーバーを神奈川フィルで!!!
(コルンゴルトは、藤沢で9月23日演奏されますが、いけそうもありません・・・)
| 固定リンク
コメント
こんばんは。
ご無沙汰しています。
ともかく、わたしは、ベルクのヴァイオリン協奏曲が好きだ!
大変な共感です。
未だ生で聴けません。ずっとキャンセル続きです。当方は玲子・フェラスが好きです。
藤原の夢遊病の女、初日聴いてきました。最前列ど真ん中でしたが、しょんぼり。高橋薫子以外全く良いとこなし。20年前のアリベルティの感激が嘘のようです。
投稿: | 2012年9月10日 (月) 21時13分
Mieさん、こんばんは。
どうも、大いにご共感いただき恐縮に存じます。
生では何度か聴いてますが、ツェートマイアーがよかったです。
高橋薫子さんは、何を歌っても安定してますし、心がこもった歌と演技ですね。
しかし、ほかがそうでしたか・・。
うまくいかないものですね。
ベルリーニは舞台ではまだ体験がありませんが、アリベルティをお聴きとはまた羨ましいですね。
あの頃の藤原劇団は充実してました。
投稿: yokochan | 2012年9月10日 (月) 23時26分