« コルンゴルト ヴァイオリン協奏曲~THE SILVER VIOLIN ベネデッティ | トップページ | 睨むワイルドにゃんにゃん »

2012年11月18日 (日)

交響曲第1番「HIROSHIMA」 聴きどころ

Yamanishi

前回、佐村河内記事と同じような写真ですが、こちらは時間が少し経過した相模湾の夕日。

堤防を歩いて、洋上から見える箱根の山々。

わたしが育った町から。

この海までは、すぐのところで、波の音が聞こえた。

けれども、台風の大波などで侵食され、浜辺がだいぶなくなってしまった。

Samuragochi_sym1

   交響曲第1番 「HIROSHIMA」

     大友 直人 指揮 東京交響楽団

               (2011.4.11/12 パルテノン多摩)


テレビで特集もされ、その名前が多くの皆さんの知ることとなり、CDもプレスが間に合わないほどの状況と聞きます。

佐村河内守さん。その存在は、日本の現代音楽界において特異な存在なのかもしれませんが、そのハンディや壮絶な生き様という点を差し引いても、普段、クラシック音楽を深く聴くことのない人々の心を動かし、CD購入へと走らせるものが、彼の音楽には確実にあります。
それを真摯に受け止めなくてはならないと思います。

過去の音楽家の名前を連ねて、斜に構えて聴くということも理解できますが、事実、わたくしも当初は、そんな風な聴き方をしたかもしれませんが、すぐにそんな概念を超えて、氏の音楽が訴えてくるものを聴くようにしました。

何度も書きますが、この音楽がわたくしに与えてくれた、そして今も与えてくれる力は希望と光です。
家康の言葉に、「人の世は、重き荷を背負いて、遠き道をゆくが如し」とありますが、人生は安泰ではなく、人生そのものが苦しみの方もおります。
わたくしも、そうした負の連鎖に陥ってしまって久しいです。

でもかろうじてそんな環境に克己して向かっていけるのは、日々、音楽がそこにあるからなのでして、幾多の音楽たちが私を慰めてくれております。
そんな中でも、最強のものが、今では佐村河内音楽なのです。

わたしのブログをご覧になればおわかりのとおり、多い記事は、わたしに力を与えてくれる音楽たち、すなわち、大好きな音楽とそのジャンルでいくと、ワーグナー、英国音楽(ことにディーリアス、フィンジ)、アバド(その生き様)、オペラ(人生ドラマ)、世紀末系美音(マーラー、ベルク、シュレーカー、コルンゴルト)などです。
それらに加わった佐村河内音楽は独自な存在なのかもしれませぬ。

交響曲第1番の、わたくしなりの聴きどころを、以下列挙しておきます。

第1楽章 19’58”

 冒頭~4’00  低弦のピチカートにのって重々しい出だし
            やがてはやくも、太鼓やハープなどが登場してこの音楽が
            編成のうえでも並々のものでないことを告げる

 3’00       宿命的な鐘に乗って、この曲の主要主題が響く

 4’00~     優しい、慰めの旋律。これは主要主題そのもの

 7’00~     再度厳しい雰囲気となりテンポを増して、主要主題を展開

11’00~     やや古風なコラールふうの調べ、教会風、安らぎます

            でもだんだんと、不穏な雰囲気がただよう、なにか起きる予感

17’45~     強大なフォルテ、耳をつんざく悲壮感
           でも、それを最後に、うねるような低弦とともに、音は止んでゆく


第2楽章 34’33”    

  冒頭~2’00  ここでも不安を募らせる序奏から始まる。
           第1楽章の暗い宿命のまま

 2’00~     第1主題を弦が優しく回顧、しかしまた厳しい雰囲気に
            マーラーの晩年の境地を思わせる

 4’50~     木管が合いの手をいれるいい雰囲気
            しかし、どうしてもまた厳しい状況がめぐってきて、
            やがてメインテーマが高鳴る。
            でもまた、曲は静まり、地味な展開を繰り返す。
            なにか、強大なものが生まれる前の静けさかと苦しみか

            
11’00~     パルシファル3幕前半のような真の道を探求する様子

12’39~     急展開。雲行きが怪しくなり宿命との闘いを予見させる。
            しかし、ここでもまた音楽は沈思しつつ内面的になる

16’00~     パルシファルの2幕を想起させる。クンドリーの苦しみ。
            ミステリアスで静かなこの雰囲気は心に染み込んでくる。

21’00~     まだ沈鬱感はやまない。
           低弦がうごめき時間が止まってしまうかのよう
           シュトラウスのアルプス交響曲の日没のように主題が奏でられる

23’00~     トロンボーンに始まる金管のコラールは虚しく無情を感じさせる
           しかしとても印象的な場面で、胸に突き刺さる
            ここからまた新たな展開を予見

28’30~     宿命的な旋律が導き出され、痛切なフォルテが組成され、鐘も鳴る
            この厳しい展開は、敗北感すら感じ、不安の中に置かれたまま
            長く、哀しく、うごめく低弦で消え入る

第3楽章 26’53”

冒頭~       最初からビンビン来る、激しい闘争感、阿鼻叫喚

4’00~       それもつかの間、嵐の前の静けさが続く
            遠くで鳴る優しいあの旋律、不思議なチェレスタ

7’35~       弦の逼迫したユニゾン、ついに始まる聖戦
            ズバズバと突き刺さる音の切れ味と切迫感

9’00~       キターーッ、ついに宿命に対峙、負けない、最後の闘い
            これまでの集大成のようにあらゆる旋律が入り乱れ、
            心も、耳も、全身がその壮絶なる音塊に全開で虜となってしまう

12’00~      大いなるカタストロフをむかえる。
            木管によるコラール、トランペットの微妙なファンファーレ
             高まるファンファーレだが心も体も傷ついてしまった
             勝利かどうか不明
             まだ幾多の苦しみが襲ってくるのか、とどまるところがないのか
             不安は隠しきれない

19’00~      もう一度、高まる興奮と闘いへの兆し
             だがしかし、いま一度カタストロフが巻き起こり、
            何かが大きく崩れ去った
             今度は、今度こそ。
            清涼な空気がみなぎってきた。

21’00        浄化された平安がただよいはじめる。
             弦が安らぎ感を導きだし、ポルタメントも麗しく決まる。
             ハープの合いの手も美しく、低音の持続音も安心感を与える。

             
               
               
              ほのかな光が見え始めた。
              その光は、徐々に強く輝くようになって行き
              やがて、ついには眩しく強力な力を伴ってきて
              聴くわたくしたちを圧倒してしまう

           
             そして、わたくしたちの心の残るのは、一筋の光

以上

こうしてこの音楽は、複雑な曲折を経ても、わたくしたちに希望の強い光を与え、感じさせてくれるのです。
ありがとう!

Izu_1


相模湾の朝日

※本記事は、執筆当時のままにつき、事実と異なる内容が多く含まれております。


         

|

« コルンゴルト ヴァイオリン協奏曲~THE SILVER VIOLIN ベネデッティ | トップページ | 睨むワイルドにゃんにゃん »

コメント

佐村河内守の交響曲第1番HIROSHIMAを初めて聴きましたが、まさに至高です。クラシックファン復帰かな。

投稿: さかはし | 2012年11月18日 (日) 21時56分

Amazon鬼武者 価格 11万円
これが佐村河内守の現在の価値を表している。

投稿: よいあみ | 2012年11月19日 (月) 11時25分

エンタメみました!

Amazon音楽総合ランキングで1位?!!!!
これって音楽業界初の歴史的快挙ですね!

クラシックの新曲が音楽の総合で1位?!!!

凄いです!佐村河内守さん。

投稿: tomo | 2012年11月19日 (月) 13時36分

さかはしさん、コメントどうもありがとうございます。
お聴きになられましたか!
クラシックファンだったのですか?
これを機に、もう1枚の佐村河内も是非お聴きください。

投稿: yokochan | 2012年11月19日 (月) 22時56分

よいあみさん、コメントどうもありがとうございます。
え?なんですと!
影武者11万!
わたしも聴いてみたいと思いながらも、そんな高値とは!
そうですね、まさに皆が求める音楽ゆえでありましょう!

投稿: yokochan | 2012年11月19日 (月) 22時58分

tomoさん、コメントどうもありがとうございます。

いやぁ、知りませんでした。
素晴らしい快挙ですね。

いま何人の聴きてが、CD増産を待ち望んでいることでしょうか。
嬉しくなりますね。
これからもじっくり聴いていきたいと思います。

投稿: yokochan | 2012年11月19日 (月) 23時06分

初めまして。最近末期ロマン派をこよなく愛する、アラサー世代の者です。よろしくお願い致します。

日本で、こういう曲を書く人が登場するとは思っていなかった一人です。交響曲"HIROSHIMA"は、私も所有しています。
前衛音楽の音響美も意外と好きだったりしますが、やはりこうした音楽には、圧倒されます。まだ数回しか聞いていませんが、噛めば噛むほど凄い作品だなといつも思っています。

ようやく予算が捻出できそうなので、弦楽四重奏曲を月末にと思ったら、こちらも品薄で買うのはずれこみそうです。

投稿: Kasshini | 2012年11月20日 (火) 10時02分

現在、交響曲ヒロシマCDを待っているのは3万人と聞きました。
僕は運よく早い者組みだったらしく、昨日手元に届きました。
暗く、重く、でもそれが意味がある。
本当にさいごのコラールが輝きを放ち、涙が溢れ出てしまいました。
三枝成彰は、21世紀の先兵こそ佐村河内守と言っていましたが、まさにそう感じました。
佐村河内守は21世紀の真の天才です。

投稿: 忠興 | 2012年11月20日 (火) 16時55分

Kasshiniさん、こんばんは、はじめまして。
コメントどうもありがとうございます。

確かに、おっしゃるとおり、日本人のなかで忽然と現れた特異の作曲家ですね。
今日、音楽の友誌を立ち読みしていたら、先日の大阪のコンサートのことは、普通のコンサート評でしか扱われておりませんでした。
もしかしたら、われわれは、氏の音楽の受容史にこれから立ち会っていくことになるのかもしれません。
どのような曲折を経るかはまだ不明ですが、わたしたち、一般リスナーを虜にしてしまったことは確実ですね。

そして、シャコンヌの方も品薄なのですか!
レーベル側も驚きでしょうね。
コメント感謝いたします。

投稿: yokochan | 2012年11月21日 (水) 01時19分

忠興さん、コメントどうもありがとうございます。

3万人とは驚きです。
そして、お聴きになられた感想をお聞かせいただき、とても嬉しく存じます。
発売以来、もう何度も何度も聴いてますが、聴くたびにまだ発見や驚きもあります。
三枝氏の発言も心強いですね。
そして、21世紀の天才。共感できます。
体に無理せず、作曲活動を継続して欲しいと願いばかりです。

投稿: yokochan | 2012年11月21日 (水) 01時38分

今日の日経新聞の全面広告で佐村河内守という偉人を知りました?すぐに銀座の山野楽器にいったら、なんと山野名物の出店が佐村河内守の交響曲ヒロシマでした!佐村河内守の出店の様子をテレビ局が撮影し取材されてました。あー、あたしテレビに映ったかも。これから家族で生ける伝説の人の音楽を堪能します。

投稿: 多恵子 | 2012年11月26日 (月) 22時29分

多恵子さん、コメントどうもありがとうございます。
日経の広告ですか?
それは見なくては。明日にも図書館いってみます。
それと、山野楽器の店頭にもですか?
そしてテレビ取材ですか?
いやいや、驚きの情報の連続で、ありがとうございます。
じっくりとお聴きになってください。
最初は最期までの道のりが長く感じますが、聴き進むほどに、各所に味わいを見出すようになると思います。

投稿: yokochan | 2012年11月27日 (火) 00時38分

よこちゃんさま
多恵子です。
よこちゃんさまは明日の佼成ウィンドオーケストラ委嘱作品世界初演(オペラシティー)は行かれないんですか?
私は雑食系といいますか、佐村河内守さんジャンルはなんでも食します(笑)
明日がとっても楽しみです。

投稿: 多恵子 | 2012年11月30日 (金) 07時25分

多恵子さん、こんばんは。
明日は、所要があって無念の欠席です。

わたしも、佐村河内と名がつけば多食多弁です!

明日の様子を、またお聞かせ下されば幸いです。

いいなぁ~

投稿: yokochan | 2012年11月30日 (金) 23時59分

剽窃とは言わないまでも、いろんな作曲家の作風を稚拙に模倣している。コーダはまるっぽマーラー交響曲第三番のコーダの効果を借用している感じ。気の毒な境遇だと思うけど、才能の有無は冷静に評価されるべき。今はプロモーター(フジコヘミングも手掛ける)とレコード会社の強力押しでメディア露出が多くてど素人に憐憫訴え売れてるだけ。数年後には忘れられているでしょう。扇情にあおられてはいけません。

投稿: かな | 2013年5月12日 (日) 07時49分

かなさん、コメントありがとうございます。
佐村河内音楽のとらえ方は、皆様、それぞれでいいのかと思います。
ワグネリアンを自称するわたくしとしては、現代におけるこの音楽は、各種のフィルターを外して、これはこれでいいのだと思います。
メディアは、もうこの次はないと思いますし、明らかな違う路線のプロモーションも、いすれはひと段落するのではないかと。
ですから、氏の次の一手を注目したいと思いますし、世間は静かに、ときには忘れるくらいに見守るべきと考えます。
「シャコンヌ」は交響曲とは違う道筋を示してますし、きたるべくピアノソナタに注目したいと思います。

投稿: yokochan | 2013年5月12日 (日) 22時53分

芸術に対する評価は、ほとんどの人が一致する上手い、下手のように、ある程度基準のあるもの(絵画や演奏など)と、基準が無く好き嫌いが分かれるもの(解釈や表現など)が有ると思います。            

宇野大先生が大好きなモーツァルトを私は苦手ですし、でも、宇野大先生にはワルターのことなど教わったこともあるので、全否定はしません。金子君には多分無いなあ。

佐村河内さんの曲もここに書き込まない人でピンと来ないという程度の人もいるでしょう。

私はこれから聴けば聴くほど好きになっていくと思います。ほんとに、これほど同じ曲を集中的に聴くというのは永らく無かったですね。

投稿: ぽんた | 2013年5月16日 (木) 14時52分

ぽんたさん、こんばんは。
コメントどうもありがとうございます。

音楽における好き嫌いは、いろんな要素、たとえば、おっしゃるような宇野先生との出会いであったり、最初に聴いたものの印象であつたり、その時のシテュエーションであったり・・・、それぞれが大きくその人に左右しますね。

まさに、その思いはそれぞれ、感想もそれぞれであっていいと思います。
こうしてブログのかたちを借りて、わたくしも好き勝手書いてますし、皆さまの感想・ご意見を拝読できることも、ネットの効能でもあり、ありがたく思います。

そして、わたくしもこの曲をはじめ、弦楽作品も、これからますます聴き続けてゆくことになりそうです。
このあとは、海外も含めて、違う演奏の聴き比べの域に達することにもなるかもしれません。

投稿: yokochan | 2013年5月16日 (木) 23時24分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 交響曲第1番「HIROSHIMA」 聴きどころ:

« コルンゴルト ヴァイオリン協奏曲~THE SILVER VIOLIN ベネデッティ | トップページ | 睨むワイルドにゃんにゃん »