ワーグナー 「ニュルンベルクのマイスタージンガー」 カイルベルト指揮
東京駅、南北の駅舎の天蓋。
ロマネスク風といいますか、かなりのベタな雰囲気なので、いいのかなぁ?
改装前の東京駅はこんなに華やかだったかな?
レトロの復元は難しいものがありますからして。
この天蓋は見事なもの、その下も丸の内ホテルとして復活しましたものの、どうも私にはキレイすぎて、あざとすぎて感じます。
東京駅は、今後もビルが左右に建ち、どんどん変わっていきそうです。
ワーグナー 「ニュルンベルクのマイスタージンガー」
ザックス:オットー・ヴィーナー ポーグナー:ハンス・ホッター
フォゲルゲザンク:デイヴィット:ソー ナハティガル:カール・ホッペ
ベックメッサー:ベンノ・クッシェ コートナー:ヨーゼフ・メッテルニヒ
ツォルン:ヴァルター・カルナッス アイスリンガー:フランツ・クラールヴァイン
モーザー:カール・オステルターグ オルテル:アドルフ・ケイル
シュヴァルツ:ゲオルク・ビーター フォルツ:マックス・プロープストル
ヴァルター:ジェス・トーマス ダーヴィット:フリードリヒ・レンツ
エヴァ:クレア・ワトソン マグダレーネ:リリアン・ベニングセン
夜警:ハンス・ブルーノ・エルンスト
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バイエルン国立歌劇場管弦楽団
バイエルン国立歌劇場合唱団
合唱指揮:ウォルフガンク・バウムガルト
(1963.11.23 @ミュンヘン)
今度の11月7日に、このブログは開設8年を迎えることになります。
これまでのご愛顧、感謝いたします。
そして、どんなに辛くても、音楽が聴けるかぎり続けようと思ってます。
これからもよろしくお願いいたします。
で、やっぱり日曜だし、ワーグナーを聴いてみるんです。
ハ長調の明るい名作、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」は、長いワーグナーの作品のなかにあって、トップを競う上演時間です。
「神々の黄昏」「パルシファル」とそれぞれ同じくらいか、もう少し長いかも。
何度も書きますが、前作の「トリスタン」が半音階を駆使した技巧的な作品であり、同時に書かれた次作「マイスタージンガー」は、全音階・ハ調の、明るい調和の世界に満たされた作品で、そこには不安や情熱はなく、笑いと風刺、若者や大人の恋、そして忘れてならなのは民族愛がしっかりと描かれていることです。
「トリスタン」が、同時期と後世の音楽家に強烈な影響を与えたのに対し、それと表裏の関係にある「マイスタージンガー」は、音楽ばかりでなく、ゲルマン優位を掲げる人物や体制を刺激、いや彼らが巧みに利用したという点で、明るいなかにも陰りを生みだしてしまった作品ともなった。
いうまでもなく、戦中ナチスがプロパガンダ的に活用したわけであるが、戦後はその禊にも折り合いをつけ、本来の喜劇的で明るい作品ということで、祭典的な側面を持った楽劇としてドイツでは蘇ったわけであります。
劇場のこけら落としに、シーズンオープニングにうってつけのオペラ。
1951年、戦後復活したバイロイトの再出発にも選ばれた。
あのフルトヴェングラーの第9の年です。
その時はカラヤンが指揮で、ミュンヘンのルドルフ・ハルトマンの演出。
ヴィーラント・ワーグナーの抽象的な演出でもってスタートしたが、「マイスタージンガー」は外部演出家に。
ヴィーラントの手法が具象的な「マイスタージンガー」にそぐわないのと、なによりも、一度に「リング」と「パルシファル」の新演出を出すという激務が外部招聘ということになったのです。
そして、1963年こちらも再建なったバイエルン国立歌劇場のスタート演目として上演されたのも「マイスタージンガー」。
なんたって、「マイスタージンガー」初演の劇場ですから、そりゃもう当たり前の選曲。
その時の記念碑的ライブが、今日の「マイスタージンガー」。
当時の音楽監督、おなじみのカイルベルトの指揮と、当時、綺羅星のごとくの名歌手たち。
それに、この劇場の最強のオケと合唱。よくぞ、上質の録音でもって残されたものです。
同時に上演された「影のない女」と並んで、ドイツオペラが好きな人は必帯の音盤であります。
戦後のこの劇場の指揮者たちを見てみると、その豪華さに驚きます。
クナッパーツブッシュ、ショルティ、ケンペ、フリッチャイ、カイルベルト、サヴァリッシュ、シュナーダー。
しかし、21世紀からは、国際的な顔ぶれとなり、メータ、K・ナガノ、K・ペトレンコと非ドイツ系の指揮者たちが牽引し、演出もドイツでは一番保守的だったのに、いまやしっかりドイツ劇場のトレンドを踏襲して走り続けております。
でも変わらないのは、ここのオケと合唱の優秀さ。
ミュンヘンのオケに特有の暖かみと南ドイツ的な明るさ。
でもこの頃は、まだまだ鄙びた雰囲気も持っていて、現代の機能的なオケとも違う味わいをここに聴くことができます。
そんなオケと舞台を統率するカイルベルト。
劇場たたき上げのカペルマイスターであるが、この人の音楽にはドイツの重厚感とともに、同世代カラヤンなどにも通じるスタイリッシュで緻密な構成感もあって、いま聴いても新鮮だし、ぜんぜん現代に通じる音楽造りに思います。
生き生きとした音楽は、舞台の音と合わせて、劇場のライブ感を半世紀を経ても、こうして伝えてやみません。
歌手は、ちょっと古臭い感じの人と、やや非力なる人も混在してますが、充実の60年代を充分に感じさせてくれます。
ジェス・トーマスの力感としなやかな瑞々しさ溢れるヴァルターは、まったくもって素晴らしくて、久々に聴くトーマスの歌声に、昨今のテノール歌手のことが悲しくなってしまいました。
それと、立派すぎるホッターの父ポーグナー。イメージとしてウォータンにすぎるところが難点か。
K・ワトソンのチャーミングなエヴァも好きです。
ダーヴィットとマグダレーネはいまひとつ。
そして、オットー・ヴィーナーのザックスが弱い。声質が軽すぎるし、ザックスとしての深みに欠けるように思えます。
舞台の画像を見るにつけ感じる安心感。こんな舞台もいまや遠い昔の思い出話になってしまった昨今。
そして、そんな舞台で演じ、歌われている音盤を聴くことの、これまた安心感。
そんな希少な思いを感じることのできる60年代の「マイスタージンガー」に久々に浸りきった日曜日でした。
それにしても、秋晴れの空は気持ちいい。
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コメント
ブログ8周年!おめでとうございます。
これほど素敵な音楽関係のブログって少ないですから
思い切って出版してみませんか?
きっと売れますよ^^
下手な音楽評論家よりも核心をついていますし
偏見に満ちていて個性豊かだし!
私は買います!!!
投稿: モナコ命 | 2012年11月 4日 (日) 22時09分
モナコ命さん、こんばんは。
ご丁寧にありがとうございます。
何度か、継続断念も思いましたが、みなさまのご厚情と、ご声援で頑張れました。
なにより、いままで聴いてきた音楽を好き勝手に言葉にできるという、自らの快感が妙な具合に作用しているようです。
おこがましくも、本などは考えたこともありませんが、こちらのプロバイダーのわたくしのサーバーの残量は、計算すると、このままのペースであと20年近くいけそうです。
頑張りますよ!
これからもよろしくお願いいたします。
ご散財をおかけしてはいけませんから、当面こちらにて(笑)
投稿: yokochan | 2012年11月 4日 (日) 23時15分
ブログ8周年本当におめでとうございます。私は、ブログ主様とのお付き合いは約5年になります。私のような若輩の不束者とご多忙な時間を割いてお付き合いしてくださるブログ主様には本当に感謝です。私が申しあげたいことは、私よりもずっと沢山音楽を聴いておられて素晴らしい耳を持っておられるモナコ命様に先に言われてしまいました(笑)。ブログ主様のようなR・シュトラウスの歌劇を全部聴いておられて世紀末音楽にも造詣の深い方と巡り合えたことを嬉しく思っております。これからもお元気で楽しく勉強になる文章を書いてくださいね!
投稿: 越後のオックス | 2012年11月 5日 (月) 04時00分
8周年とのこと、おめでとうございます。
PCのお気に入りに入れて、楽しませて頂いています。
クラヲタ様は、たぶん小生と年令が近く、同様に雑種猫が好き、といった共感を覚える所があります。節目の記事にカイルベルトというのも、素敵です。そして、何よりも記事が示唆に富み、お陰さまでフィンジが小生のレパートリーに加わりました。
お仕事お忙しいでしょうが、これからも、長く続けて下さるよう、期待致します。
投稿: faurebrahms | 2012年11月 5日 (月) 06時15分
ブログ8周年、おめでとうございます♪
やっぱりそういう「締め」いや「区切り」いや「記念」の節目にはワーグナーですよね~。 思い起こせば yokochan さんとは KiKi の2つほど前のブログ以来(何せ引っ越し魔だもんで ^^;)のお付き合いになるのですね。 確か、コメントを頂戴した最初のエントリーもやっぱりワーグナーだったように思います。 (間違っていたらごめんなさい。)
そして節目のタイミングで持ってこられたのが、やっぱりなのカイルベルト。 素晴らしい!! 今回載せていらっしゃる画像といい、選択された盤といい、何から何まで「素晴らしい思い出」を喚起してくれる逸物であります。
これからもよろしくお願いいたしますね。
P.S. 久々の「小便小僧シリーズ(否、幻想交響曲シリーズ)」のエントリーもスルーしちゃったけれど、ちゃんと拝見していましたよ♪
投稿: KiKi | 2012年11月 5日 (月) 12時25分
越後のオックスさん、いつもありがとうございます。
過去記事も掘り起こしていただき、書いた本人も、ときに懐かしく読んだりしているんですよ。
ワーグナー、シュトラウス、世紀末などに偏りがちの偏向ブログですが、お読みいただき、感想も頂戴して、ほんと感謝です。
この路線は変えず、でも進化していきたいとも思ってます。
これからも、よろしくお願いします。
投稿: yokochan | 2012年11月 5日 (月) 19時10分
faurebrahmsさん、ありがとうございます。
いつも、コメント頂戴し、わたくしも、きっと同世代のお方かな、と思っておりました。
わたしの手薄なエリア、器楽・室内楽など、毎度、お教えいただいております。
そして、野外猫の自由さ、奔放さが好きです。
またくじけそうになることもあるかもしれませんが、いろいろ工夫を施しながらも、なんとか継続していきたいと存じます。
これからも、よろしくお願いします。
投稿: yokochan | 2012年11月 5日 (月) 19時20分
もう8年も経ちましたか!
毎度楽しみにしておりますyokochanさんのブログのおかげで、イギリス音楽の深みに引きずり込まれ始めてますよ・・・。このままずっと我儘偏見、継続してほしいものであります。受けるものばかりでお返しできませんが、これからも宜しくお願いいたします。
投稿: IANIS | 2012年11月 5日 (月) 20時19分
kikiさん、こんばんは。
そしてありがとうございます。
そうなんですよ、あれこれ考えることもなく、即座にワーグナー(笑)。決まり! デス。
たしかに、ワーグナー記事で、貴ブログにお邪魔したのが初かもしれませんね。
リングやバレンボイムのトリスタンも懐かしい思い出です。
まだまだ、いろんなかたちで、どうぞよろしくお付き合いのほど、こちらこそお願いいたしますね。
いくつかのシリーズも磨きをかけていきたい所存にございます(笑)
このカイルベルト盤は、これまた懐かしくて、こうした機会にこそ、と思っていた逸品です。
いまはもうこんな演奏、誰が逆立ちしてもできないと思います。
投稿: yokochan | 2012年11月 5日 (月) 20時59分
IANISさん、こんばんは。
そして、毎度ありがとうございます。
いつも兄貴には、力づけられております。
英国音楽は、思ったより懐深く、わたくしもまだまだ途上ですし、その世界はホント切りがないです。
フランス音楽を極めたIANISさんを、また底なし地獄にお連れしてしまったようで、申し訳なくも思ったりしてます(笑)
ともあれ、お互い刺激しあいながら、音楽好きの道を邁進したいものです。
どうぞこれからも、よろしくお願いします。
投稿: yokochan | 2012年11月 5日 (月) 21時04分
yokochanさん
8周年、誠におめでとうございます。様々な見識をお持ちといつも感じさせられております。ドイツの歌劇場にもお詳しいということで、いつも読ませていただいております。
カイルベルトのこの演奏は、映像でもありますよね。ただ、仰るとおりすごく長いんで、完全に最初から最後まで、というのは難関ですね。
クナッパーツブッシュ、ショルティ、ケンペ、フリッチャイ、カイルベルト、サヴァリッシュ、シュナーダー、と続く音楽監督、私も1995年7月に、この最後の指揮者で、この劇場でこれを観ましたが、休憩を挟んでもあまりの長さに、途中が抜けて(寝て)しまいましたっけ。「真のファン」ならそういうこともないんだろうな、と思いますが。
またこれからもyokochanさんのブログ、読ませていただきたいと思っています!、ヨロシク!!
投稿: 安倍禮爾 | 2012年11月 6日 (火) 13時31分
安倍禮爾さん、こんばんは。
そして、ご丁寧にありがとうございます。
ドイツの本場のご経験と、ご造形では、わたくしなど、敵うまでもなく、いつもご示唆に富んだコメントを頂戴しております。感謝いたします。
このカイルベルトの上演は映像もあるんですか?!
知りませんでした。
そういえば、CDのリーフレットの舞台写真がやたらときれいで、それっぽいです。そういうことだったんですね。
ミュンヘンでのシュナイダーの上演は、伝統的な上演でしたでしょうか。
サヴァリッシュの引越し上演で観劇しました。
その後、メータの時の上演は、ちょっと後味悪い変な読み変え版でした。
幸い、どんなにつまらなくても、長くてもワーグナーは大丈夫です(笑)
ご声援を頂戴し、ブログ継続の意欲も湧きます。
ときおり凹んで休むかもしれませんが、今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
投稿: yokochan | 2012年11月 6日 (火) 21時49分
こんばんは。開設8年おめでとうございます
いつも大変お教えいただいています。感謝しています。
当方、東京最終新幹線通いきつく感じてきました。
でも、頑張って続けます。
投稿: Mie | 2012年11月 7日 (水) 21時26分
Mieさん、こんばんは。
いつも、新鮮な観劇印象をお教えいただきありがとうございます。
思えば、いつも、最終でご帰還なのですね。
本当に、音楽をお好きでなければ、たしかにお疲れは大変ですし。キツイですね。
でも、ご夫婦で楽しまれ、時間が許せば美食に舌筒み。
わたくしには、理想的な音楽生活に存じます。
これからも、よろしくお願いいたします。
無理のない範囲で、また諸所お教えいただけたらと思います!
投稿: yokochan | 2012年11月 7日 (水) 22時53分