ベートーヴェン 交響曲第4番 ケンペ指揮
冬のイルミネーション時期を迎えております。
省電力光輝度のLED製品の充実と浸透により、節電と自粛のムードは少し遠のいた感があります。
寒い冬には、心も目も暖まるキレイなイルミネーションは必要と思います。
クリスマスとお正月をピークに、そのあとは一挙に寂しくなってしまうのも考えもの。
さらに、今年特に思うことは、東京の繁華街ばかりの異常な明るさ。
なにもかも東京という図式は今に始まったことはないけれど・・・
でも、こんなグリーンやブルーの彩色のツリーやイルミは落ち着きます。
ベートーヴェン 交響曲第4番 変ロ長調
ルドルフ・ケンペ指揮 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
(1973.4 @ミュンヘン)
ケンペのベートーヴェン全集は、レコード時代、何の予告もないままに、忽然と姿をあらわした驚きのセットだった。
世は、オイルショックによる世界的な不況の時期で、レコード業界も節電からレコーディングが減少したし、製品も原料節減からカッティング枚数が減り、しかもペラペラの薄いレコードとシングルのジャケットばかりとなった時代。
ケンペはドレスデンとのR・シュトラウス全集が出て、大いに名を上げたが、いまもって地味な存在で、そんなケンペがいきなりベートーヴェン全集を出してきた。
しかも、オケはドレスデンでなく、地味なマイナーオケだったミュンヘンフィルだったのだ。
ミュンヘンフィルは、73年の札幌五輪(夏季がミュンヘン五輪)のときに来日したが、当時はクナのレコードぐらいしかなくて、あまり知られていないオケだった。
ケンペは来ずに、ノイマンが来る予定が病気で不可となり、F・リーガーがやってきた。
だから余計に地味な感じが・・・・。
レコード時代は、まともに聴けなかったこの全集を、CD化になってようやく全貌を把握できたのが10年前でしょうか。
ケンペの真摯な生真面目さと、オペラ指揮者ならではの硬軟自在の柔軟さ。
ワーグナーとシュトラウスはたくさん聴いてきたなかで感じられた、過度な表現を排しながらも、実に豊かな音楽性と知性を感じさせる落ち着いた音楽が、ここに並々とあることをしみじみと痛感したのでありました。
いま、4番のみをこうして聴いてみても、まったく当時の思いと同じです。
酸いも辛いも、まだまだこれから味わわなくてはならない年頃ですが、それでも人並み以上の辛酸をなめつつある途上のわたくしの心に響くシンプルかつ豊かな4番。
第2楽章のクラリネット独奏にたおやかにまとわりつく弦の何気ない美しさや、ピチカートひとつに、なんだかとても心奪われてしまうのでした。
それほどに、細部に美しいヶ所を見つけることのできる桂演でした。
一方で、カルロスなみの快足調の3楽章は、ダイナミクスも豊か。
肝心の1楽章の大らかなる歩みは、今回チクルスの穏健演奏の確固たる場面です。
終楽章は演奏時間こそ繰り返しなしで5分ですが、とてもゆったりと堂々たる表現。
ブルーからグリーン系のピュアで気持ちのいいケンペのベートーヴェンでした。
1807年の完成。英雄から3年後、第5・第6と連続して書かれた時期。
自己顕示欲あふれる兄弟にはさまれながら、美しさと健気さだけが取り柄でない、しっかりした妹みたいな交響曲。
けっこう好きです4番。
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コメント
同全集から「英雄」だけ聴いてみましたが
なかなか聴きごたえがありました。
一本調子に陥らない巧みさを感じました。
投稿: 影の王子 | 2012年12月 5日 (水) 22時43分
影の王子さん、こんばんは。
ケンペ&ミュンヘン・フィルの「英雄」は、ミュンヘンオリンピックの銃撃の悲劇の追悼のおりに演奏したコンビのものです。
テレビでみたそんな思い出もあります。
芯が通ってますね。
投稿: yokochan | 2012年12月 6日 (木) 22時12分