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2012年12月 4日 (火)

ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」 グシュルバウアー指揮

Ichou

晩秋と本格的な冬は、境目がほとんどないのでしょうかね。

初冬がなくって、11月の後半から冬になってしまいました。

銀杏が散ったこんな光景も、本来は秋の終わりなのだけれど、気候は冬本番なところが、この冬の厳しいところ。

崩壊じゃなくって、落下だろ、と思う、不幸な事故。
お悔やみ申し上げます。
この時期、あのあたりで雪が舞ってるということにも驚きました。

Guschlbauer

   ベートーヴェン 交響曲第6番 ニ長調 「田園」

  テオドール・グシュルバウアー指揮 ニュー・フィルハモニア管弦楽団

                         (1973 @ロンドン)


「田園」は、大穴、グシュルバウアー。

1975年だったか、発売時からずっと気になっていたグシュルバウアーの「田園」。

ひょんなとこから入手できまして、じっくりとしみじみと聴くことが出来ました。

これがまぁ、実に、気持ちのいい、自然の中で深呼吸するみたいな演奏なんですよ。

グシュルバウアー氏のことをご存知ない世代も増えたかと存じますので、ここでそのプロフィールをウィキその他の情報からまとめてみます。

1939年ウィーン生れ、73歳。
アバドやメータと同じく、そのひと世代後のスワロフスキー教授門下生。
仏エラート・レーベルの指揮者として60年代後半から活躍し、モーツァルトのスペシャリストとして、マリア・ジョアオ・ピリスのピアノ協奏曲のリスボンでの指揮や、バンベルクでの交響曲録音で高名となった。
その後は、ちょっと地味で、本格録音は、今回の田園や、ゼ・グレート、ワーグナー、来日しての読響とのドヴォ8などが70年代。
さらに鍵盤奏者として、先輩アバドのロッシーニ録音では、チェンバロでレシタティーヴォの通奏低音を担当しておりました。

その後、N響にもやってきて、シェーンベルクやルーセルなど意外性のあるレパートリーを披露してくれて、思わぬ名匠の誕生に、日本では密やかな人気と期待を呼んでいたグシュルバウアーさん。
ウィーンの「こうもり」、二期会の「魔笛」など、オペラでの来日も重ねてます。
さらに、録音では、ストラスブールでのポストもあって、ブルックナーの交響曲や「ローエングリン」などの名品もあったりしますね。

ウィーン生まれというブランド以上に、柔和で優しい音楽づくりと、嫌みのないすっきりとした個性が、われわれ日本人受けするものと思います。
眼鏡をかけた誠実としかいいようのない風貌も安心感あふれるものですね。

ところが、ウィーンという街は、なかなかオーストリア人に厳しく、自国の演奏家に対して異様なまでに選別意識がありました。
オペラ座のオケはともかくとして、グシュルバウアーがウィーンフィルの指揮台に立ったことってあったでしょうか。
ウィーン少年合唱団にもゆかりの地元の指揮者に対して・・・・

この「田園」では、相性のよかったロンドンのニュー・フィルハーモニアを指揮してます。
クレンペラー亡きあと、ムーティ選出までの揺れ動いていた時期のもの。
でも、このロンドンオケならではの、弦と艶やかな美しさと、木管・金管の柔らかな響き。

理想的な第1楽章です。
繰り返しも行って、ゆったりのんびり、散策の歩調も気持ち良く、思わず手を後ろ手にして歩いてしまいます。
ちょっと、いまのこの時代からするとムーディに流れがちな2楽章ですが、こんな風な演奏こそ、ずっと子供時代から親しんできた最大公約数的な野の光景です。
神奈川県人ですが、母の実家の近くには、小川のせせらぎと鳥のさえずりが聞かれる弁天様がありまして、いまでもその風景は脳裏に浮かびます。
まさに、そんな感じの情景の音楽の再現なんですよ。

快活な3楽章も、急がず慌てずで気楽です。
嵐に至るとそこそこ荒れてきますが、ホール・トーンをしっかり拾った録音のせいか、切迫感や攻撃性は薄目で、遠目でなる遠雷と嵐です。
なにも、セコセコするこはないじゃない。
そんな感じで、嵐の去った平安を、緩やかな気持ちで迎えることができます。
テンポは、快調な5楽章の感謝の響きです。
弦のマイルドな美しさは、フィルハーモニアならではで、クレンペラーの厳しい薫陶と、英国伝統のニュートラルカラーが、ここでは麗しく結びついた感があります。

録音のありかたにもよりますが、こんなソフトフォーカスのアナログ的な「田園」が実に心に響くのです。

グシュルバウアーさん、いまどうしてる?
いまいちど、大巨匠としてモーツァルトやベートーヴェンを聴かせて欲しいです。

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コメント

グシュルバウアーの顔を初めて拝見しました。予想外に精悍ですな。
私は意外に彼の演奏は好きです。戴冠ミサはグシュルバウアーが一番だと(勝手に)思っています。

投稿: リベラ33 | 2012年12月 5日 (水) 01時43分

グシュルバウアー氏、現在も元気のようですよ。2009年にはベルギーのリエージュ・フィルでブルックナーを数曲振ったようです。昔、ストラスブール・フィルを振った「第7番」がエラートから出ていましたが当時から結構ブルックナー好きだったのかも知れませんね。

投稿: einsatz | 2012年12月 6日 (木) 20時47分

リベラさん、どうもこんばんは。
グシュルバウアー姿、初見ですか。
背が高くて、黒ぶち眼鏡で、超まじめの印象ですよ。
わたしも、戴冠ミサ好きです。
あと、アヴェ・ヴェルム・コルプスでしょうか!

投稿: yokochan | 2012年12月 6日 (木) 22時06分

einsatzさん、こんばんは。
情報ありがとうございます。
ベルギーのリエージュですか?
また渋いところですね。
ナクソスあたりが好みそうなオケと指揮者ですので、ブルックナー全集なんてやってくれませんかねぇ。
でも、グシュルバウアーのブル8や9なんて想像もつかないのですが・・・・

投稿: yokochan | 2012年12月 6日 (木) 22時26分

クラシックLPに関心を持ち出し、立ち読みでレコード会社の広告を拾い読みしていた頃、当時日本コロムビアが発売窓口でした、Eratoレーベルの広告に載っていらっしゃいましたね。ホントにお懐かしいお方ですよ。バンベルク交響楽団、ボーンマス-シンフォニエッタ、ニュー-フィルハーモニア管弦楽団等を振り、続々新譜出しておいででした。Warner様、集大成してboxセット出して下さいませんかね?

投稿: 覆面吾郎 | 2020年1月25日 (土) 10時10分

グシュルバウアーは、ピリスとのリスボンでのモーツァルトの協奏曲、戴冠式ミサなど、モーツァルトの専門家みたいにして、最初は扱われてましたが、ワーグナーやブルックナーもレパートリーに持つ本格派だったのですね。
N響や読響でも、いろんな曲を振ってましたので、ご指摘の集大成もふくめ、音源発掘が望まれる演奏家のひとりです。

投稿: yokochan | 2020年1月27日 (月) 08時57分

グシュルバウアー指揮ロンドン・フィルのウィンナ・ワルツ
が重量感があって気に入っています。

投稿: 東丈 | 2021年4月11日 (日) 17時19分

東丈さん、コメントどうもありがとうございます。
その存在は知ってましたが、グシュルバウアーのウィンナ・ワルツ、EMIから出てますね。
今度聴いてみたいと思います。
あとは、読響とのドヴォルザーク8番が復刻されないかと願ってます!

投稿: yokochan | 2021年4月15日 (木) 08時24分

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