ジョスカン・デ・プレ アヴェ・マリア ヒリヤード・アンサンブル
教会に静かに佇むマリア像。
マリア信仰はカトリックのものですが、われわれ日本人にも馴染みやすい。
九州を中心としたキリシタン信者たちも、観音様と混ぜ合わせるようにして、マリア像を拝み、迫害から逃れようとした。
カトリック信仰とまた違った、いわば地キリスト教ともいうべき「カクレキリシタン」。
今年、天草に出張したおり、その足跡をいろいろ見てきました。
こちらは、でも、それと違って関西。以前訪れた、「夙川教会」です。
聖母マリアの象徴、白い百合の花とともに、清楚で心洗われる一角でした。
ジョスカン・デ・プレ 「アヴェ・マリア」
ヒリヤード・アンサンブル
(1983.2 @ロンドン テンプル教会)
中世ルネサンス期、いわゆるフランドル楽派の代表的な作曲家、ジョスカン・デ・プレ。
1440~1521年の生没年。
わたくしのブログで、異質に思われるでしょう、この世代とジャンル。
でも実は、相当にはまって聴き込んだ時期があるんです。
レコード時代の終り頃、ハルモニアムンディが大量に1500円の廉価版化。
EMIから、デイヴィット・マンロウのシリーズ。
これらに触発されたのが事実。
同時に、あらゆる音楽ジャンルを貪欲なまでに聴き込んでいこうという意欲的な若い自分がありました。
1980年前後、クラシックでは現代や中世ルネサンス音楽までも、その自分のレパートリーにしていこうという広範な好奇心にあふれていた時期にございます。
そして聴きまくりましたよ、先に紹介のレコードを次々に購入して。
音楽ファンなら、土日に心安くまとめ聴きをしますが、ワーグナーやヴェルディ、マーラーばっかりだったのに、あの当時、土日には、ジャズとルネサンス音楽ばかり。
ご近所でも変だと思ったでしょうね。
(話は違いますが、クラシックばかりを聴いてた少年が、いきなりビートルズを聴きだした中学時代、近所の方がどうしたんですか?なんて親に言ったりする時代でした)
そんな風に、傍から見ても、聴いても、音楽を聴く嗜好は大違いと聴こえるんですね。
いまは、あまり聴くことはなくなってしまいましたが、学生から社会人の頃、レコードからCDに変革してゆく直前。わたしの音楽生活の確かな一時期だったのが、ルネサンス音楽でした。
ジョスカンの音楽は、ともかく抒情的で、ポリフォニーの美しい彩が、シンプルに発し、絹織物のように静やかに織り込まれて、やがて美しい全貌をあらわすような繊細さと秩序に満ちております。
代表的な作品「アヴェ・マリア」は、まさにその典型。
プ・ロカンティオーネ・アンティカの名唱も過去ありましたが、80年代のヒリアード・アンサンブルのものは、さらに厳しい精度を増して、ともかく美しい。
抒情的なモテトをたくさん書いたジョスカンを知ったのは、わたしのブームのちょっと後ですが、いまこうして、豊饒なオーケストラやオペラの合間に聴きと、本当に、心洗われるような澄んだ心境にいざなわれます。
日曜の晩、お酒も飲み終わって、お風呂入ってさっぱりして、さぁ寝ましょうという前に聴くような安らぎの音楽。
マリア様の、言葉発しない優しい眼差しを、温かく感じる音楽です。
美しいです。
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コメント
yokochanさんもそういう時代があったのですね。
僕は、FM世代ですから、今でも名前は違え、「朝のバロック音楽」(だったかな?)のおかげで、“開明”させていただきました。相変わらずベートーヴェン、オペラ、マーラー、クセナキスですが、それでもシュッツ、モンテヴェルディ(やっとマドリガーレが9巻揃いました)、ジェズアルドのマドリガーレが揃いつつあります。最終的にはパレストリーナとジョスカン全曲制覇が目標になりますが、20年前は不可能と思われていたのに、今は古楽の隆盛のおかげで、それも「夢」でなくなったのが、ありがたい。
それにしても、ヒリヤード・アンサンブルの美しさといったら・・・!それが、シュトックハウゼン(「マントラ」のCDは絶品です)にもいくのだから、凄いですよ。
ヒリヤード、今後ますますCDの棚に増えていきそうです。
投稿: IANIS | 2012年12月 9日 (日) 22時41分
ジョスカンのアヴェ・マリア!
これは絶品ですね。しかもヒリヤード・アンサンブル盤。
こんなに純度高い曲、演奏は滅多に無いですね。
私もルネサンス曲は若い頃ハマりましたが、最近はそれほどは聴かなくなりましたが、こういう記事を拝見しますと疼きますね。
学生時代には、一夜漬けの試験勉強の友がしばしばPCAのルネサンス曲と安ブランデーとかだったことを思い出しました。(遠い目)
投稿: golf130 | 2012年12月 9日 (日) 23時37分
IANISさん、こんばんは。
わたしも、FM人間でしたから、たいていのクラシック番組は制覇してました。
朝のバロックは、忠実な羊飼いのテーマ曲、服部幸三氏に、皆川達夫氏のおふたりに多くを教えてもらいました。
懐かしい~。
しかし、さすがですね、モンテヴェルディはマドリガーレですか、しかも殺しのジェズアルド!
わたしの方は、いまは、なかなか古楽にまで手が回らなくんってしまいましたが、こうして久しぶりに聴くと、心洗われる思いでした。
ヒリヤードはスゴイですよね。
バッハも聴きました。
シュトックハウゼンまであるんですねぇ。
ちょっと聴いてみたいところです。
投稿: yokochan | 2012年12月10日 (月) 20時50分
golfさん、こんばんは。
このヒリヤードのジョスカンは、ご指摘のとおりの高純度で、耳がそばだちますね。
贅沢にも、PCAが少し緩く感じちゃったりもしました。
レコード時代末期にわたしもそこそこ集めたルネサンス系ですが、CDではさほどでありません。
でもたまに聴くと、ほんとうにいいものです。
学生時代の試験勉強のお伴に、古酒と古楽、いいもんですすねぇ。
わたしは思いきり、マーラーとかワーグナーを聴いてたような覚えがあります。これじゃダメですね(笑)
投稿: yokochan | 2012年12月10日 (月) 20時59分
不思議とここも一致しておりますです…(笑)。私もこれにはまりまくったことがあります。というか、今も時折聞きます。そしてこれを聞くとちょっと胸キュンというか、目頭が熱くなります。
LP時代の終わり、CD時代が始まった頃でした。プロカンティオーネ・アンティカや、マンロウのLPを散々買い込んでは、毎日聞いていましたっけ…。
結婚したての頃でした…。あの頃買い込んだLPはもう全て手放してしまいましたが、このアヴェ・マリアなど、CD化されると同時に買いなおしたものです。ウィリアム・バードの三声、四声、五声のミサ曲や、オケゲムの世俗音楽集、ダウランドのリュート歌曲集など、当時の愛聴盤の数々が、この演奏とともに思い出されて、またまた長々とコメントしてしまいました。
しかし、この音楽…ホント良いですねぇ。確かレコ芸で皆川達夫さんが激賞していましたっけ…。なんか賞をとったと記憶していますが、間違っているかも知れません。そんなことなど、どうでもよくなる名曲中の名曲の名演だと思います。
投稿: schweizer_musik | 2012年12月10日 (月) 21時21分
yokochanさん
いやあ、ジョスカン・デュ・プレですか!、遠い遠い昔を思い出しますね!。マンロウの死は、本当に大きな痛手でした。この人の遺した録音をチビチビ聴くと、やはり偉大な音楽家だったんだなあ、と理解できる気がしますからね。
投稿: 安倍禮爾 | 2012年12月11日 (火) 00時01分
schweizer_musikさん、どうもです!
レヴェルこそ、当方、素人ですので違え、ぴったし同世代感ですね。
レコ芸の服部・皆川評をあとで調査しつつ、ハルモニアムンデイとEMIマンロウには、まったくもってお世話になりました。
あの頃のレコード廉価盤は、70年初期の1000円から進化して、3000円級のレギュラーの廉価版化でしたので、平均1500円でも、ともかくありがたいシリーズでした。
あの頃以降の第二世代的な、ヒリヤードアンサンブルのジョスカンも当時、完璧な存在でした。
投稿: yokochan | 2012年12月11日 (火) 22時44分
安倍禮爾さん、こんばんは。
先日はプチ飲み会がありました。
次回はお会いできることを楽しみにしております。
マンロウの死は、その時はさほどのことはなかったのですが、その後にハマった中世・ルネサンスの音楽で、EMIのマンロウ・シリーズをむさぼるように聴き、その損失に多大な悲しみを覚えました。
あんな未知の昔の音楽を研究し、いま、生き生きと再現してしまった能力は驚きでした。
投稿: yokochan | 2012年12月12日 (水) 22時34分