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2013年1月20日 (日)

ニコライ 「ウィンザーの陽気な女房たち」 クーベリック指揮

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資生堂パーラー銀座の建物には、季節に応じてレトロでちょっとポップな飾り付けや、ちょっとした覗き窓がありまして、お店に入らなくても、こうして楽しめちゃいます。

今日は、1月の神奈川フィル定期演奏会で、その冒頭に演奏される序曲のそのオペラ全曲を聴いてみました。

  ニコライ  「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲

  ハイドン   トランペット協奏曲

           Tr:三澤 徹

  ブラームス=シェーンベルク編 ピアノ四重奏曲第1番

    下野 竜也 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

            2013年1月25日 (金) 19:00 みなとみらいホール


ユニークなプログラムでしょ。
今シーズンのテーマ、「マーラーとその時代、爛熟ウィーンへの旅」。
ウィーンゆかりの作曲家に、マーラー後のシェーンベルク。
なんとも味わい深い、下野氏ならではの演目です。


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  ニコライ  「ウィンザーの陽気な女房たち」

   サー・ジョン・ファルスタッフ:カール・リッダーブッシュ 
   フォード(フルート氏):ウォルフガンク・ブレンデル
   ペイジ(ライヒ氏):アレクザンダー・マルタ
   フェントン:クラウス・ハーカン・アーンショー スレンダー:ヘインツ・ツェドニク
   カイウス医師:アルフレッド・シュラメク 
   フォード夫人:ヘレン・ドナート   ペイジ夫人:トゥルーデリーゼ・シュミット
   アンナ・ペイジ:リリアン・ズキス
   
      ラファエル・クーベリック指揮 バイエルン放送交響楽団/合唱団

                          (1977.4 @ミュンヘン)


オットー・ニコライ(1810~1849)は、ウィーン・フィルの創始者で知られ、作曲家としては、オペラ「ウィンザーの陽気な女房たち」の序曲ばかりがやたらと有名です。
しかし、その生没年を見ると、39歳の早世で、生前係わりのあったメンデルスゾーンとほぼ同じ活躍時期で、シューマンやショパン、少し遅れてのブラームスなどが音楽年譜に見てとれます。
ロマン派まっさかりのニコライなのです。
オペラは5つ、交響曲や管弦楽作品もあるようです。
プロイセン出身のドイツ人で、ウィーンとの係わりはさほどは深くないところが、実は面白いところです。
というのも、最後のオペラとなってしまった、「ウィンザー・・・」がウィーンでは上演できず、ウィーンを去ってベルリンに職を得て、その地で初演にこぎつけたのです。
その後間もなく亡くなってしまうニコライなのでした。

独語による喜劇的なオペラ芝居、ジングシュピールのカテゴリーに属し、モーツァルト、ウェーバー、マルシュナー、ロルツィングらに並ぶ系譜にニコライの名をしっかり刻んだ桂作です。
原作は、いうまでもなく、シェイクスピアの同名の戯曲で、ヘルマン・フォン・モルゼンタールの台本によるもの。
原作にほぼ忠実な内容です。

この物語のオペラ化で、まっさきに思い浮かぶのが、ヴェルディの「ファルスタッフ」で、80歳の最晩年のヴェルディの自在な境地を味わえる名作ですが、そちらは、「ウィンザーの陽気な女房たち」に加え、同じシェイクスピアの「ヘンリー4世」も加味した台本(ボイート作!)となっているところが一味もふた味も違うところです。

その他に、サリエリ(ファルスタッフ)とヴォーン・ウィリアムズ(恋するサー・ジョン)もオペラとして残してますし、エルガーはオーケストラ曲としても書いておりますから、シェイクスピアの原作がいかに多くに作曲家の筆を刺激したかがよくわかります。

全3幕7場、2時間10分の適正サイズで、その音楽は序曲が楽しめる方ならだれでも聴きやすく、明るくて生き生きとした内容となってます。
有名なナンバーやソロはありませんが、そんな中でも、お気に入りを見つけ出すのもあまり知られていないオペラを聴く楽しみです。
 でもどちらかというと、アンサンブルやドタバタぶりを楽しむのがこのオペラのような気がしまして、きっと舞台や映像では面白みが増すものと思いました。
正直、音源だけではちょっと地味なのです。

録音では、かつてEMIにFDの主役の音源があったはずですが、その後にDGからクレー盤、デッカから今回のクーベリック盤、CPOからシルマー盤、さらにクナッパーツブッシュのライブが復刻されているような状況で、映像はまだないと思われます。
FMでかつて放送されたサヴァリッシュのミュンヘン上演を、わたしは録音して楽しんでましたが、いかにもサヴァリッシュらしい、きびきびとした明快な演奏に記憶してます。

そして、日本では昨年、ウィーン・フォルクスオーパーが来演して、この作品を上演しております。ウィーンでも新演出されたばかりのホットな舞台を日本でも指揮したのが、われらが神奈川フィルの首席客演指揮者に就任するヤッシャ・ゲッツェル氏なのでした。
本場でも絶賛されたゲッツェルの指揮は、さぞかし鮮やかなものでしたでしょうね。

さて、今日の音盤の指揮はクーベリック。
バイエルン放送響が、いまのようにやたらと高性能になる前の、まだ少し南ドイツ風の温かみと素朴な音色を持っていた頃。
ふくよかな音響はとても魅力的で、冬のこの時期には温もりをと木質感を感じさせるものでした。
クーベリックの芸風は、ドイツでもないし、生国チェコでもない、明るくかつ陰りのない健全な音楽造りで、神経質な風貌や故国を出た悲壮感など、まったく感じさせないものだと、常々思っていた。
明るい、ここニコライのオペラでも、クーベリックのこだわりない伸びやかな意向が発揮されていて、オケの特性と相まって、とても朗らかで気分のいいものでした。
欲をいえば、遊びが少なく感じるところでしょうか。
ちょっと真面目すぎでしょうか。

わたしにとっての最高のドイツ・バス歌手、故リッダーブッシュの味わいあるファルスタッフは思わぬ贈り物のように、忘れていたドイツのよき姿を思い起こすような縁(よすが)を感じさせる歌唱でした。彼のザックスが、そして懐かしく思い起こせました。
ブレンデル、マルタ、ドナート、シュミットらのドイツ浪漫派の典型ともいうべきしっかりした歌い口、そしてツェドニクの芸達者ぶり、アーンショーとズスキの若い、80年代的な甘口の歌唱。
いずれもわたくしには今風でない、よき日々の歌声です。

かんたんなあらすじ。

一線を退いた、元騎士ファルスタッフは、いまやお金にも窮し、ウィンザーの街の名士、フォード氏とペイジ氏の奥方様たちにとりいり、つまりは一方的に懸想することで、経済的な苦境からの脱出をはかっているところでした。

オペラはここから。

①同じ恋文をもらったフォード夫人とペイジ夫人。犯人のファルスタッフをやっつけようと意気投合。
主人の留守中にやってきたファルスタッフ。妻を怪しく思ったフォード氏が帰ってきて、ファルスタッフは機転を利かせた婦人たちによって、洗濯かごの中に隠れ、そのかごは、そのまま冷たいテムズ河にドボン。

②馴染みのガーター亭で朝食に着こうとした悔しいファルスタッフのもとには、、昨夜をわびる夫人の手紙。加えて姿を変えたフォード氏が妻の不貞をあばくため、誘惑してほしいとの依頼。ほくほくのファルスタッフ。

ペイジ夫妻の愛すべき娘アンナは、相思相愛の若い騎士フェントンがいるも、両親は反対。逢引前に、ふたりの親のそれぞれ推す旦那候補がやってきてドタバタ。
結局、二人のラブソングが歌われ、このオペラ随一のロマンティックな音楽となります。

フォード亭に潜入したファルスタッフは、夫人を誘惑しようとしますが、またも帰ってきた主人に邪魔をされ、思わず、フォード氏が大嫌いな大叔母に化けますが、氏に撃退され逃げ帰ります。

③それでも懲りないファルスタッフに、婦人たちは、彼をウィンザーの森へと誘いだします。
ペイジの娘アンナは、両親がそれぞれ推す夫候補が、この機に乗じる作戦を聞きつけ、アンナの夫候補をだます工夫を事前にほどこします。

森に、鹿のいでたちで舞い込んだファルスタッフに、もものけに扮した街の人々や子供たちが襲いかかります。おののくファルスタッフ。
お互いが求めるアンナと思いこむ変装した両親推薦のカイウスとスレンダー。
うまく乗じて結ばれたアンナおフェントン。
ごめんなさい、わははっのファルスタッフ。
すべては笑いの中に、円満解決の物語。

屈託なく、楽しい音楽と物語でした。
   

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