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2013年1月18日 (金)

シューベルト 「冬の旅」 プレガルディエン

2013114

今週14日の雪景色。

自宅からのぞんだ景色は、雪国のようでした。

午前中は激しい雨と風。

午後から雪となりかなり積もりました。

降雪時は完全にモノトーンの世界。

一夜明けての晴天では、眩しい白と青空が美しかった。

雪に慣れた方々には申し訳ないくらいに高揚感がありました・・・・。

Schubert_witerreise_pregardien

  シューベルト 歌曲集「冬の旅」

      T:クリストフ・プレガルディエン

      Fp:アンドレアス・シュタイアー

               (1996.3 @ケルン)


真冬のいまに「冬の旅」。

今年の冬はともかく寒くて、心身ともに堪えます。

少し前までは、暑いのが苦手で、寒さは全然平気だったけれど、昨年くらいから、暑さばかりか、寒さにもダメになってきて、ガクガクして体が縮こまってしまい、肩が凝ってならない。
この寒さには細心の注意を払ってます。
急にバタンは困りますからね。

でも、寒い時期ほど、寒い方向へと旅がしたくなります。
東へ、北へです。
かつて仕事柄、東北・北海道への出張が多かったから、そのときは、旅気分も半分でした。
野辺地方面に電車で移動したとき、吹雪いて景色はすべて真っ白。
駅に着いて、地元の高校生がドアをプシュ~と空けて外へ出てゆくと、雪が風とともに車内に巻き込んでくる。そんな外へ、もちろん彼らは自宅へと帰ってゆく姿に、毎日晴天の地域から来た私は、逞しさと一抹の旅情を感じたものです。

あぁ、自分も、こんな雪の中に足を踏み入れ、なんのしがらみのない白い世界に入り込んでしまいたい・・・・・・、そう思ったのは現実からの逃避ばかりでなく、見知らぬ場所への「旅」の憧れからだったと思うのです。

シューベルト(1797~1828)の晩年、といってもまだ30歳の時分に作曲された傑作「冬の旅」。
つねに死と背中合わせのような陰りをその音符の裏側に感じさせるシューベルトの作品の数々。
その中でも、もっとも絶望的で、死とそして希望への憧れに満ちた陶酔的なまでの歌曲集。
歳とともに、この作品集が好きになってきた。
若い頃は、それこそ若者の気持ちを代弁するかのようなナイーヴな「美しき水車屋の娘」が、「春から秋」の青春の情景のように感じて好みだった。
でもいまは、それ以上に、人生「冬の旅」状態となり、こちらの歌曲集にこそ共感の度合いが強まってきている。

水車屋と同じくして、ミューラーの詩による全24曲の歌曲集。
そのすべてに味わいと含蓄が、その詩とともにあり、どこがどうということはおこがましくて私には言及できませんが、有名な「菩提樹:Der Lindenbaum」を例えると、その歌の美しい素晴らしさは当然として、ピアノ伴奏の主人公によりそうようにして、長調と短調を行きつ戻りつ、連音を奏でる鮮やかにして深遠なる運び。
時に伴奏に着目して聴いていると、思わずはっと、するときがあるのもシューベルトならでは。
この曲集の半ばで歌われる第16曲「最後の希望」
 

  とうとう葉は、地に落ちた
  それとともに、希望も尽きた
  ぼくは地面に膝をつき、たおれて
  落ちた葉の上で、泣き伏せた・・・・・・


ここを機に、主人公は希望もついえ、絶望を友にさすらうのですが、ここのフレーズのほんの一節の壮絶なる素晴らしさ。
シューベルトの最高の音楽は、ロマン主義の完璧なる発露であるかと思います。
歴代の歌手たちが、ここに熱き思いを込めて歌っているような気がします。

すなわち、F=ディ-スカウ、プライやホッターで聴くことの多い「冬の旅」。
でも、最近、テノールでの、シュライアーやヘフリガーで聴くことでも、あらたな「冬の旅」の素顔を見るような思いがしてます。
遅ればせながら、昨冬以来、しみじみと聴く機会のおおかったのが、今宵のプレガルティエン盤。
思えば、先にあげたテノールは、名エヴァンゲリストで、そのあとを継いだのがプレガルティエンなのです。
レオンハルトの禁欲的かつ暖かなマタイでの福音士家は、プレガルティエンです。
あのときのエヴァンゲリストの印象そのままに、主人公に同質化してしまって感じるプレガルティエンの歌唱は、最初の「おやすみ」からして、わたしの心と耳をとらえて離しませんでした。
ドイツ語の発声が美感に感じるほどの美しさ。
テノールの域にとどまらず、時に感じるバリトン的な深み。
そして、なによりも誠実で生真面目な歌い回しが、淡々としたなかに、ロマンと自在な思い入れを爽やかに載せていて、シューベルトの描いた主人公の苦渋をしっかりと捉えているように思います。
 加えて、シュタイアーのピアノがグランドピアノほどに語りもせず、とはいえ、シンプルななかにも明確な語り口があって、ほんのちょっとした語り口の中にも、切なくも素敵なのでした。

やはりこの季節は、求心的なシューベルトの音楽、「冬の旅」がお似合いです。
久しぶりに泣けました。

 過去記事

  「ハンス・ホッター&エリック・ウェルバ」

 「ルネ・コロ&オリヴァー・ポウル」

 「ヘルマン・プライ&ウォルフガンク・サヴァリッシュ」 

 

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コメント

本来はテノールのための曲であり、若者の歌なのに、バリトンだとちょっと歳をとりすぎてしまうような…(笑)。
このプレガルティエンの歌は良いですねぇ。彼はよほどこの「冬の旅」に縁があるのか、現代の作曲家であるツェンダー、フォーゲットという作曲家が編曲した2種類のアンサンブル版もあります。なかでもフォーゲットの編曲したものはアコーディオンや木管といった地味な?響きを中心とした室内アンサンブルで、異色でした。
この曲は、私もいつか(編曲を)やってみたい曲の一つで、「展覧会の絵」とともに、私のイマジネーションを刺激してやみません。もちろん、テノールの上手い人がいないと…。
このシュタイナーとの録音は、エルンスト・ヘフリガー以来の名唱で、ボストリッジとともに最近お気に入りです。ただボストリッジは少し軽すぎて、時々聞く方がふと冷静に戻ってしまうようなところが…。難しい曲ですねぇ。結局何もしないのが◎なのかも知れません(笑)。

投稿: schweizer_musik | 2013年1月19日 (土) 07時07分

schweizer_musikさん、こんばんは。
いやはや、テノールのための作品とは知りませんでした。
詩は確かに、ナイーブなテノールのためのものですね。
オケ版も聴いてまして、プレガルティエンの声の素晴らしさに感嘆しております。

先生には是非とも、挑戦していただきたいです!
テノールは、辻さんあたりを想定いただいて!

ポストリッジは、ちょっと神経質かもです。
やはりヘフリガー、そしてプレガルティンです!!

投稿: yokochan | 2013年1月20日 (日) 00時13分

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