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2013年1月24日 (木)

ブラームス シェーンベルク編 ピアノ四重奏曲 エッシェンバッハ

Sony_bill

もう終わってしまいましたが、ソニービル前のモニュメント。

「愛の泉」と名うたれ、募金すると、この色が数々のバージョンに変化をします。

人が多く、奇跡的にブルーのこの色を無人で撮影できました。

明日、金曜日の晩は神奈川フィルの定期演奏会。

渋いけれど、絶対的に音楽好きを刺激する攻撃的なプログラム。

  ニコライ  「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲

  ハイドン   トランペット協奏曲

           Tr:三澤 徹

  ブラームス=シェーンベルク編 ピアノ四重奏曲第1番

    下野 竜也 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

             2013年1月25日 (金) 19:00 みなとみらいホール

Brahms_scheonberg_eschenbach

   ブラームス=シェーンベルク編 ピアノ四重奏曲第1番

      クリストフ・エッシェンバッハ指揮 ヒューストン交響楽団

                       (1995.9 @ヒューストン)


本記事は、過去記事や別稿に書いたものを引用いたします。あしからず。

ブラームスピアノ四重奏曲第1番は、1861年の作品で、晦渋な雰囲気を持ち、難曲ともされ、とっつきはあまりよろしくない。

その76年後の1937年、シェーンベルクが大オーケストラ曲に編曲した。
そして曲は、ブラームスの交響曲第5番とも呼ばれるような風格溢れるユニークな作品に変貌した。

シェーンベルク(1874~1951)はブラームスやJ・シュトラウスが好きだったらしく、ブラームスを通じてモーツァルトのリリシズムや起伏あるフレーズ、切り詰められた構造、組織だった作曲技法などを学んだと言っている。
もともとブラームスが大好きで、大いに影響をうけたシェーンベルクですが、ごく初期の番号なしのまさに0番の弦楽四重奏曲は、まんまブラームスであります。

ブラームスから大いに後押しされていたツェムリンスキーと知己を得て、師と仰ぎ、やがては自分の妹がツェムリンスキーと結婚して義兄弟となるふたり。
ツェムリンスキーからは、ワーグナーとマーラーという巨星の影響も受けるが、ウェーベルンとベルクという弟子と仲間を得て、その音楽は無調からやがて12音技法へと進化していった。

ブラームスの主題の展開と導き方に関し、思わぬ斬新さに大いに着目していて、そうした若い頃からのブラームス好きがあいまって出来上がった作品。

ナチス台頭によるアメリカ亡命後、寒い東海岸で病をえてしまい、西海岸ロサンゼルスに移動。
1937年、当時ロサンゼルスフィルの指揮者だったクレンペラーの勧めもあってこの曲の編曲に踏み切ったわけで、当然にクレンペラーが初演者であります。

この曲の解説には必ず出てくるシェーンベルクの言葉がこちら。

①「この作品が好きだった」

②「この曲があまり演奏されない」

③「たまに演奏されたとしても、あまりよくない演奏ばかり。よいピアニストほど、大きく鳴らしてしまうので、あなた方には弦が聞こえなくなってしまう。   一度そのすべてをわたしは聞いてみたい。ゆえに、挑戦したのだ。」

②と③については、いまやそんな思いはないのではないでしょうか・・・・。

冒頭の上下するト短調の第一主題のほの暗さと斬新な音の運びにシェーンベルクは着目していて、この冒頭を、木管のミステリアスな出だしで開始し、それが弦に広がり、徐々に分厚いサウンドに展開してゆくさまを、ブラームスの語法でもって完璧に再現している。

この動機の反転ともいうべき音の配列の例は、シェーンベルクを始めとする新ウィーン楽派たちも好んで採用しており、シェーンベルクのヴァイオリン協奏曲、ベルクのヴァイオリン協奏曲、ルルなどにも伺うことができる。

シェーンベルクは、ブラームスのスタイルにしっかりと固執しつつ、ブラームスがいまその時代にあったならばしたであろうやり口でもって再現したと自信を持ちつつ確信しています。

その後に生まれるブラームスの交響曲第1番の前に、そのブラームスは、もう交響曲の萌芽をここに生み出していて、ベートーヴェンの10番とも言われた第1交響曲の作曲者のこのピアノ四重奏曲は、シェーンベルクによって、ブラームスの第5交響曲として現出されたのであります。

4つの楽章のしっかりとした構成感。
一方で、悲劇的な要素へ傾き、それを打破せんとする決然とした勇猛感。
神秘的なまでの抒情と最後の民族的な異国感あふれる大爆発。

ブラームスのオリジナルのこれらの要素は、シェーンベルクによってしっかりとオーケストラの中に取り込まれ、倍増もされていて耳に斬新かつ圧巻。 

ブラームスの作品にはあきらかにない響きは、輝かしい金官、とくにトランペット。
グロッケンシュピール、スネアドラム、バスドラム、シンバルなどなどの打楽器の数々。
あまりにブラームス的なおおらかな3楽章の間に挟まれた行進曲と、終楽章のハンガリーのリズムが交錯し、クラリネットや弦のソロたちが最後に哀愁あふれるハンガリーを表出したかと思ったら、激しく舞い踊るようにしてダイナミックな終結を迎えるのです。

新ウィーン楽派の音楽を思いのほか好んで演奏、録音しているエッシェンバッハ。
ピアニストとしてもブラームスの元の曲を弾いて極めた結果として、このシェーンベルク版に取り組んでいるわけで、悠揚せまらぬ堂々たるブラームスを聴かせると同時に、打楽器のギラギラとした響きがいびつに感じるくらいに、異様なるシェーンベルクサウンドも同時に鳴らしつくしているところが、いかにもこの指揮者らしいところ。
3楽章の入念な歌いぶりも聴き応えあり、終楽章のチャールダッシュでは激しい興奮を味わえます。

神奈川フィルの美音で聴くことのできる明日の演奏会。
楽しみでなりませぬ。

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コメント

yokochanさん

 この曲は、私は20年以上前、マイケル・ティルソン・トーマスの演奏のカセットを買って聴きました。私はブラームスが好きで、他人のオーケストレーションでも聴きたく思って買ったのですが、なかなかの曲!、と感心したものです。もう実演は終わったようですが、充実したコンサートだったみたいですね。

投稿: 安倍禮爾 | 2013年1月26日 (土) 22時11分

安倍禮爾さん、こんにちは。
昨夜は素晴らしいコンサートに、楽しいアフターも加わって、お酒もまことに美味しく味わうことができました。
ブラームス好きの安倍さん、シェーンベルク好きのわたくし、どちらも満足の名演でした。

MTTのこの曲は、バイエルン放送との録音ですよね。
いまそれが聴きたくてしょうがないのです。
復活してほしい1枚です。

投稿: yokochan | 2013年1月26日 (土) 22時46分

yokochanさん

 そうですね、今久し振りにカセット出してみたら、確かにバイエルン放送交響楽団です。IMT42129(CBS)という番号でした。

投稿: 安倍禮爾 | 2013年1月27日 (日) 00時19分

安倍禮爾さん、どうもご丁寧にありがとうございます。
やはり、ですよね。
この編曲版には、驚くようなコンビの演奏があるようでして、ほかにもシェーンベルクの伝道師ロバート・クラフトとシカゴとか、ドホナーニとウィーンフィルなんかもあるようで触手がますます伸びます。

投稿: yokochan | 2013年1月27日 (日) 00時44分

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。

投稿: fxと株 | 2013年2月10日 (日) 15時24分

コメントありがとうございました。

投稿: yokochan | 2013年2月13日 (水) 09時20分

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