ヴェルディ 「運命の力」序曲 イタリア5大指揮者
前日の記事は夜景、今日は昼のMM地区。
今年のお正月のあっぱれ晴天画像です。
ヴェルディ・イヤーにやってみたかった企画。
ヴェルディ 歌劇「運命の力」 序曲
26作(改編別途)あるヴェルディのオペラ中22作目。
「ドン・カルロ」」と並んで、ヴェルディ作品としては最も長いオペラで、運命に翻弄される男女の愛と恨みと死を描いた壮大な作品。
改訂版でパワーアップされたその序曲は、劇中の旋律をふんだんに使いつつ、全体を支配する3つの和音が肝要。
コンサートのアンコールの定番でもあります。
カルロ・マリア・ジュリーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団
(1959~62)
クラウディオ・アバド指揮 ロンドン交響楽団
(1978)
クラウディオ・アバド指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(1996)
リッカルド・ムーティ指揮 ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団
(1995)
リッカルド・シャイー指揮 ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団
(1983)
ジュゼッペ・シノーポリ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(1984)
イタリア出身の指揮者は大物ばかり。
かつては、オペラ専門家みたいなイタリア指揮者は、その後コンサート指揮者としても有力となり、デ・サバータ後、ジュリーニから始まって、アバド、ムーティ、シャイー、シノーポリ、ガッティ、ルイージ、パッパーノ、ノセダ・・・・、まだまだたくさん輩出しております。
その根源は間違いなくトスカニーニ。
そしてその音楽性は知情意のバランス感覚の素晴らしさ。
でもときにお国ものを指揮するときは、情が先立ち、熱き歌心を全開にしてくれる。
敬愛するアバドを筆頭に、そんなイタリア人指揮者たちが大好きです。
レコ芸で連載された「砂川しげひさ」さんのもっとも印象的だった作品を、あまりにすばらしかったので、ここに掲載させていただきます。
(問題あればご指摘願います)
イタリア4大指揮者の会合の様子。
落ち着き払った酸いも甘いも経験してきたドン、ジュリーニ。
一番近い席の落ち着きはらった冷静なるアバド。
その隣は、もっとも若くて鷹揚なシャイー。
そして血の気の多いナポリの兄貴ムーティ。
シノーポリの指揮活動はこの頃まだ限定的だった。
すんばらしいですよこのイラスト。
クラシック音楽の造詣が深い砂川さんの絵には、このように、何度もうなずかされましたね。
ジュリーニの59年頃の録音は、驚くほどの粘りと一音一音への執着を感じさせるじっくり型の演奏に思われた。
しかし、粘り腰の演奏から次いで、驚くほどのカンタービレを感じ取るなんて思ってもみないこと。
最後には圧巻、強烈なアッチェランドが待ち受けているのでした。
高性能のフィルハーモニアから輝かしい響きを導き出している。
録音時、まだ40代後半だったジュリーニは思えば当時も後年もあまり変わってないのかもしれません。
思えば、今回のほかの指揮者たちの録音もほぼそうした年代。
フィルハーモニア時代のものをもう一度確認の要はあります。
アバドの1回目の録音は、当時蜜月のロンドン響。
これらの中で、一番思い入れが強い音盤で、「アイーダ」初稿序曲も入れるところがアバドらしいところだった。
この演奏は、ともかく明るく眩しい輝きに満ちていて、表情もすべて若々しくしなやか。
そしてなによりも、旋律の歌わせ方の見事さはこの音盤が随一。
ともかく歌い、歌いまくる。
木管に次々とあわられる劇中のアリアなどの旋律が、これほどに美しく、そして精妙に歌われるのは他にないと思う。
アバドの2度目の序曲集は、天下のベルリン・フィル。
18年が経過し、アバドは、さらに若々しい表情を進化させていて、ベルリンフィルの明るい音色もそれに拍車をかけるようにして、そして驚くべき強靭なるカンタービレを聴かせる。
オールマイティなオケがその実力を発揮するとなんでもありなのですから。
ともかくむちゃくちゃ上手い。オケの隅々、すべての音が鮮明に聴こえる。
カラヤンの録音では嵩にかかったようにガンガンなるヴェルディだったけれど、アバドはでも抑制もしつつ、歌いどころは外さず輝かしく高貴なヴェルデイとなっております。
でも、個人的にはロンドン盤の方が好きだな。贅沢な選択ですが。
ムーティは、フィルハーモニア時代、EMIに序曲集も全曲も録音しているが、実はそちらは未聴。
ムーティのこの曲といえば、初ムーティとなったウィーンフィルとの75年公演のアンコール。最高の興奮を味わった抜群の名演で、ともかく、かっとびまくりの、カッコいいヴェルディでした。
そして、ずっと後年のCBS録音。
録音がいまひとつですが、さすがはスカラ座のオケ。
弦や管の音の深みは意外なまでの渋さを持っている。
実際にスカラ座のオケを聴いてみて驚いたのは、その落ち着きある渋い音色で、でもヴェルディやプッチーニの音楽がしっかり息づくところがやはりすごいところだと思っています。
元気でモリモリの若かったムーティと比べ、テンポは爽快ながら、ここでは落ち着きある雰囲気にもなっています。
しかし、歌いどころでは聴かせてくれますよ。味わいあるヴェルデイ。
こちらは、まだ30歳のシャイー。
そりかえるくらいにガンガンくるかと思ったら大違いの大人の音楽。
テンポもゆったりめの慎重な歌い回しで始まるし、緩急の付け方も大きく壮大な音楽に仕上げています。
もっとイケると思わせるシャイーのこの序曲集。
その後のオペラ録音や演奏活動ではもっとシャイーらしい切りこみの良さがあるので、こちらは録音にあたって慎重になりすぎたのか。
ナショナル・フィルという当時活躍したロンドンの名手たちをそろえた録音専用のオケというところも熱くなれなかった要因か。
これはこれで完璧な演奏なのだけれども。
スカラ座との再録が先ごろ出たようで、そちらはまだ聴いておりません。
故シノーポリの38歳の録音は、ウィーンフィルとのもの。
シノーポリが存命であったなら、ヴェルディ、プッチーニ、ワーグナー、R・シュトラウスのオペラを全部録音してくれたに違いありません。
その考えぬかれた鋭い切り口でもって、オペラは音だけで聴いても舞台が脳裏に息づくように再生され、数々の問題提起も喚起してくれました。
この序曲集もなかなかユニークな演奏で、第一にウィーンフィルという有機的な存在が大きく、威圧的な音はひとつもなく、最初の3つの和音も柔らかなものです。
オペラを知り尽くしたオケと、鋭いメスを持った指揮者との不思議なコラボ。
柔和な雰囲気で行くかと思うと、後半の追い込みと熱さはなかなかの聴きものです。
今年いずれ取り上げる「運命の力」の全曲は、シノーポリ盤かM・プラデッリ盤にしようか、いまから楽しみです。
というわけで、ヴェルデイ全オペラ制覇への道のりは遠いですが、イタリアンコンダクター5人衆でまず遊んでみました。
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コメント
えっ、「運命の力」、yokochanさんも後手でしたか!
そうなんですねぇ、序曲はいいとして、ストーリーがなぁ・・・。悲劇とコミカルな場面がしっくりしなくって、「うーんっ」と思ってしまうのは事実です。
ただ、1/5はまだ納得しないものの、シノーポリの録音には「やっと当たった」という感じ。ドラマがすんなり入ってきて「ドン・カルロ」級の胸にずしりとくるものがありました。
シノーポリの序曲演奏も、ウィーン・フィルとの録音をさらに極限まで推し進めたシノーポリ節。シノーポリのオペラ録音完全制覇はmustです(というか、シノーポリの全曲の演奏で、この序曲が「完全に」名曲だという確信が持てました)。
投稿: IANIS | 2013年1月27日 (日) 20時05分
IANISさん、こんばんは。
運命の力は、レコード時代、それもデルモナコの没後記念のレコードが全曲制覇のときですから、80年前半です。
ヴェルディの半分くらいを聴いた頃ですので、まだまだの時期でした。
歌手は、圧倒的にプラデッリ。オケと全体のバランスは、やはりシノーポリ。
あと、本流のガルデッリ盤が気になるところです。
今年は、このオペラの上演が日本ではなさそうで、残念ですね。
投稿: yokochan | 2013年1月27日 (日) 22時20分
yokochanさん、とーっても貴重なイラストを紹介して下さってありがとうございます!!!
腕を組むアバド、話をする時によく見かける仕草のひとつですよね*^^*。
ヴェルディも聴きたくなりました♪
投稿: ゆうこ | 2013年1月28日 (月) 21時49分
ゆうこさん、こんにちは。
こちらの砂川さんのイラストは、ずっと前からお気に入りのものでして、4者ともにとても雰囲気出ていてさすがと思わせますね。
そしてやっぱり、アバドのヴェルディは最高っ!
投稿: yokochan | 2013年1月29日 (火) 09時42分
『砂川しげひさのタックル-ランド』と言う連載でしたね(笑)。しばしば笑わせて戴きました。マゼールも槍玉に挙げられてましたね(笑)。オペラの国の先入感の強いイタリアですけど、ピアニストと指揮者の層の厚さ、凄いですよね。
投稿: 覆面吾郎 | 2019年5月22日 (水) 12時10分
砂川さんの、クラシックファンなら、みんなあるある的な漫画は、ほんとにおもしろかったです。
イタリアは、最近、若い指揮者があまり見当たらないのが残念かもです。
投稿: yokochan | 2019年5月28日 (火) 08時15分