« 佐村河内守 コンサートは月曜日 | トップページ | 交響曲第1番「HIROSHIMA」 東京初演 »

2013年2月24日 (日)

ラフマニノフ 「けちな騎士」 ノセダ指揮

Motomachi

横浜元町の入口。

先日の中華街の帰りに石川町へ向かう途中。

この商店街では、26日から恒例のチャーミングセールが始まりますが、わたしなんぞには、もう無縁のこと。
今年で52年目だそうな。

Rachmaninoff_the_miserly_kmight

   ラフマニノフ 歌劇「けちな騎士」 Op.24

    男爵:イブダル・アブドラザコフ アルベルト:ミッシャ・ディディク
    公爵:セルゲイ・ムルザエフ   ユダヤ人、金貸し:ピーター・ブロンダー
    使用人:ガンナジ・ベズベンコフ

     ジャンドレア・ノセダ指揮 BBCフィルハーモニック

                                       (2008.11、2009.4 @マンチェスター)


セルゲイ・ラフマニノフ(1873~1943)の作品数は、さほど多くはなく、その活動が作曲とともに、ピアニストと指揮者にも多く振り分けられていることをいまさらながらに思うわけであります。
よく言われるように、交響曲第1番の初演が大失敗に終わり、その酷評にダメージを受けて、作曲の筆を一時置いてしまうくらいの過敏な神経の持ち主。
さらに、10月革命で、米国へ亡命後は完全に演奏者としての活動が主力となり、残された作品はごく少なくなってしまう。

そんな中で、オペラ作品が3つ残されている。
未完のもの、構想したものがほかにも10以上あるので、もっと頑張って欲しかったと思わざるを得ない。
これら残された3作は、「アレコ」「けちな騎士」「フランチェスカ・ダ・リミニ」。
いずれも、CD1枚、70分前後のショートサイズで、時間的にも聴きやすく、その音楽もいかにもラフマニノフで、ほの暗さと甘味さが相交る桂品オペラであります。
ただし、「けちな騎士」と「フランチェスカ」は、かなり暗いです。暗澹たる雰囲気です。

「けちな騎士」は、そのタイトルから、最初はちょっとユーモラスな内容ではないかと思いこんでいたら大違い。
けちなその騎士は、本当の大けちの男でしてわが子でも人を信じない、陰気なジイサンだったのです。

原作はプーシキン。このプーシキンがロシアの作曲家をオペラ創作に駆り立て、生まれた作品は実にたくさん。「ルスランとリュドミラ」「スペードの女王」「ボリス・ゴドゥノフ」「オネーギン」「サルタン王」「金鶏」・・・・・。
そして、4つの小悲劇という作品群があって、それらは、この「けちな騎士」「モーツァルトとサリエリ」「石の客人」「黒死病時代の饗宴」。
「モーツァルトとサリエリ」はR・コルサコフが、「石の客人」はダルゴムイシスキー(未完)が、「黒死病時代の饗宴」はキュイが、それぞれオペラにしてます。

ロシア社会の闇やその人間ドラマを描いたプーシキン作品に、ロシアの作曲家たちは大いに惹かれたわけです。

前奏曲~中世イギリス

第1部

若い貴族アルベルトは、男爵の父が裕福にもかかわらず、借金だらけでお金に困っていて、馬上の決闘で勝ったものの、兜が損傷してしまい、その武具さえ買い直すお金もない。
使用人に金貸しのもとへ走らせますが、尊い立場を話しても担保がなければダメとのことを報告。次いでその金貸しをこの館に招いたと報告。
ほどなく、ユダヤ人金貸しがやってくるが、やはり借金には担保が必要と。
父上はもうお年なのだが、その金持ちの老人も若い人より長生きすることもありますよ・・などとうそぶき、アルベルトを怒らせる。
そして、金貸しは、自分の知ってる老人がいいものを扱っている・・・・、それは、色も香りも、味もなく・・・・、毒薬じゃねぇか!アルベルトは、金貸しを追い出してしまい、恥も外聞も捨て、公爵に相談をすることを決めるのでした。

第2部

男爵の館の地下。なんて幸せなんだ!6つの箱に満たされた財宝を前にニタニタとする金の亡者、アルベルトの父の男爵は、これまでさんざん、女性関係も含めて苦心惨憺の様子を語り、いかに財をなしてきたかを歌います。
そして、財宝たちに光をあて、超満悦の様子は音楽もじわじわと燃え盛る、異様なほどの高騰感をあらわします。
しまいには、自分がいなくなったらこれらの財宝たちはどうなるだろう?
死んだらどうなるだろうと、真剣に悩み、墓場から出てきてまで守ろうと語ります。

第3部

先に、決心したとおり、アルベルトは公爵に相談し、父親からの援助の仲立ちを依頼します。
城郭にて、アルベルトの願いを快く引き受けた公爵は、おりから登城してきた男爵に、丁寧にあいさつし、男爵も次の世代を考え、子供はいるのですかと問い掛け、息子が、という答に、そのご子爵にその立場に相応しい援助を差し上げたらいかがなものかと、示唆します。
しかし、頑なな男爵はあの野卑な息子はいかん、あいつはわしを殺そうといつももくろんでいる。と一切請け合うことがない。
すると、別室で控えていた当のアルベルトが血相変えて飛び出してきて、そんなことは違う、嘘つきだ!と叫びます。
これに驚き、怒った男爵は自身の手袋を相手に投げ捨て、それをアルベルトも拾い上げます。(これは決闘を申し入れ、受け入れた証なのです)
公爵は、その手袋をアルベルトから取り上げ、彼をいち早く別室に引き下がらせます。
すると、男爵は、息ができない、と胸を押さえて苦しみ、しかし、鍵が?鍵が?と最後までこだわりながら倒れてしまうのでした。
そのをみとる公爵は、神の名をささやいて幕となります。

                   幕



ラフマニノフは、親友だった、かの名バス歌手シャアリアピンのタイトルロールを想定して、1906年にこのオペラを完成させ、「フランチェスカ・ダ・リミニ」とともに同年に初演し、成功を収めたとされております。
いろんなサイトにも書かれておりますが、このオペラはともかく暗く、その筋立てにも救いがない。
しんねりむっつりとした巨人ラフマニノフのとっつきの悪い姿が思い浮かびます。
登場人物が男声のみ、合唱もなしということも、華やぎに大きく欠けて聴かれる部分です。

ラフマニノフは裕福な家に生まれながらも、父親が生業を維持する才なく破綻と両親の離婚、ゆえに母親の愛と、そのルートからの音楽教育を受けた。
その境遇から、このプーシキンの満たされない不合理と、肉親の情愛の欠落などを大いに意識して、この素材をオペラにしたのではないかと思います。
劇中の「けちな騎士」が持つ、人間の強欲とその存在意義が一歩間違うことによる悲劇とその儚さは、このオペラの肝なのではないかと思います。

あんな人を寄せ付けない雰囲気のラフマニノフが、甘味・連綿たる音楽を数々書いたことの答えも、一部はこのあたりにあるのではないでしょうか。

で、暗い暗いと言っていたこのオペラ。
たしかに救いなく暗いですが、それは筋や歌の内容。
オーケストラは、わたしたちが好んで聴く、交響曲や協奏曲のオーケストラと同じように、雄弁で低音から高音まで幅広い音域で濃厚サウンドを聴かせる。
うごめくような面妖な雰囲気は一方で、人間の深いところにある暗い情感を見事にあらわしているようで怖いくらい。
1場におけるアルベルト役のテノールの情熱的な歌、そして、なんといっても長大すぎて、シャリアピンも覚えきれなかった2場のバスの一人舞台のものすごさ。
32歳にして、この人生の深淵を見てしまったような音楽を作り出したラフマニノフは、やはり才人でありました。

いま各処で活躍する若手中心の歌手たちに、全3作を録音したノセダとBBCフィルの演奏は、すっきりスマートなキレのいい演奏で、あまり重くならずによかったのでした。

過去記事

 「フランチェスカ・ダ・リミニ」

 「アレコ」

|
|

« 佐村河内守 コンサートは月曜日 | トップページ | 交響曲第1番「HIROSHIMA」 東京初演 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/151893/56824413

この記事へのトラックバック一覧です: ラフマニノフ 「けちな騎士」 ノセダ指揮:

« 佐村河内守 コンサートは月曜日 | トップページ | 交響曲第1番「HIROSHIMA」 東京初演 »