ベルリオーズ 幻想交響曲 ミトロプーロス指揮
2月の小便小僧は、ご覧のとおり完全に防寒対策をほどこしてました。
マフラー巻いて、耳あてつけて、ひょう柄着て、コーデュロイ履いて。
そして雪だるま従えて、小便も勢いつけて!
電車来ちゃって、思わず飛び乗って、うしろ姿を撮るの忘れた・・・・。
ベルリオーズ 幻想交響曲
ドミトリー・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック
(1957.2 NY)
今月の「幻想」は、ミトプー。
妙なジャケットだけど、この原盤は、CBSの正規ステレオ録音のものでして、ミラノのURANIAというレーベルが復刻したもの。
左右のステレオ感がありすぎの難点はありますが、時代を考えたらなかなかの音だと思います。
もう半世紀以上も前に没しているギリシア出身のミトロプーロスには、逸話が多く、その驚異的な記憶力と作曲家・ピアニストとしても一流であった天才ぶりは、いまでも語り草となってます。
アメリカ国籍をとり、最後はニューヨーク・フィルで活躍したが、バーンスタインがミトロプーロスから大きな影響を受けたことも有名であります。
そして、われらがクラウディオ・アバドもミラノでその指揮姿を見て感銘を受けたと語っているほか、のちにNYでのミトロプーロス指揮者コンクールにて1位入賞し、バーンスタインの元で学ぶことにもつながった。
余談ながら、メータ後のニューヨーク・フィルがアバドに音楽監督を打診したとき、アバドは大いに乗る気だったといいますが、ウィーン国立歌劇場と重なり実現しなかった。
朋友メータ、かつての師バーンスタインとミトロプーロスのニューヨークは、アバドにとってやはり何か思い入れがあったのでしょう。
「ミトプーの幻想」
これはなかなかの聴きものでした。
第1楽章の入念で克明な出だしは、実に音の運びが丁寧で、強弱も繊細なまでに効かせ、余韻の作り方がとてもうまい。
主部に入ってからは、活力があふれてきて弾むように進む。
この楽章の終結でのテンポの緩やかな抑制は、物語のまずは一遍の終わりです的な、巧みな語り口でありました。
第2楽章のワルツ。ここでもその響きは明確で、決して媚びたりしない。
微妙なテンポの揺らしもあざとさはなく、決然とした円舞曲に終始して聴こえました。
第3楽章。弦楽の歌が絶妙で、ここでこんなに歌いまくるとは思ってもみなかった。
束の間の平安、田園風景がとても美しいのでした。
第4楽章の生々しさと無慈悲なキレのいい弦。ブラスはNYPOってどうよ・・。
録音のせいか?
第5楽章は、はちゃむちゃを期待すると完全に裏切られる。
終始インテンポ。でも音の強弱の対比はここでも豊麗で、ときに聴きなれないフレーズにおっと思ったりする。
驚くのは鐘で、ベルに合わせピアノを乗せている。この厚みある効果は大きく、その音に合わせて微動だにせずに、乱痴気が進行するのだ。
録音のせいか、ここでもブラスに不満はあるが、弦の凄まじさはよく聴いてとれる。
コーダの音の厚みはすごいが、テンポは動かさず、そのまま圧倒的な音圧で終了。
そして最終和音をここまで伸ばす演奏をほかに知らない。
ということで、52分間、ユニークな幻想のひとつを味わいました。
全体を俯瞰して、ベルリオーズの音楽を突き放しつつも、随所の溢れる歌心にミトプーの真髄を見た思い。
楽しかった。
当CDに、こんな写真が封入されてました。
カラヤンがニューヨークフィルを指揮したとき(58年)のものでしょうか。
希少なトリオですね。
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コメント
大きな耳あてですね!
暖かそうでいいですね!
投稿: edc | 2013年2月10日 (日) 07時57分
euridiceさん、極寒の2月をこうして暖かくすごす小僧君に和みました。
投稿: yokochan | 2013年2月10日 (日) 13時29分
"みとぷ~"のベルリオーズですか。
この人、大好きです。
何て言うか、"超"リアリズムなところがあって(笑)
マーラーなんて、時折、鋭利すぎるところがあったり。
でも、モーツァルトは良いんですよね・・・。
今でも"みとぷ~"の録音ものは買い漁ってます。
が、幻想が苦手なせいか、たしか未入手の品。
今度、聴いてみたいと思います。
投稿: スリーパー | 2013年2月11日 (月) 07時56分
またまたオヤジ心をくすぐる指揮者を^^ミトロプーロス。巨視的に音楽をとらえながらも細かい部分にも感情を込めて演奏するという相反する概念を見事に演奏で示してくれる指揮者です。スリーパーさんのご指摘のように時としてそっけなく感じる時もありますね。
幻想ですね。聞いてみたくなりました!
投稿: モナコ命 | 2013年2月12日 (火) 16時06分
スリーパーさん、こんにちは。
いかにもスリーパーさんらしいですね。
きっとボックスものでいくつもお持ちなのでしょう。
風貌とその音楽が完全にマッチしたミトプーですねぇ。
そう、マーラーは最高ですね。
モーツァルトは意外です。
このCDのカップリングは、「清められた夜」なんですが、実にクールそのものです。
この幻想、タワレコで廉価復刻されているようです。
投稿: yokochan | 2013年2月13日 (水) 09時27分
モナコ命さん、こんにちは。
オヤジ心をくすぐりまして、あいすいません。
まさに、そう、いまの名前も覚えられない指揮者界にはまったくない、ありえない存在でございますね。
ワーグナーなども聴いてますが、オペラでは、劇的な反面、とりわけ、そっけなさ、あっけなさがあふれてます。
幻想はステレオ録音だし、なかなかナイスな演奏でしたよ、是非。
投稿: yokochan | 2013年2月13日 (水) 09時34分
ミトロプーロスのワグナーは「ワルキューレ」を愛聴しています。すっきりしてますね。物足りないくらいすっきりです。でも説得力がある。泣ける。これってなんだろうと思いながらいつも繰り返し聴いてしまいます。
投稿: モナコ命 | 2013年2月13日 (水) 20時54分
モナコ命さん、こんにちは。
コメントのお返し、遅くなってしまいました。
みとぷぅ~ワルキューレは、実は聴いたことがないのです。
すっきり、というご指摘には予想と納得がまいります。
そして説得力。その感覚、聴いてませんがわかる気がします。
いまどきの多才な指揮者たちには及びもつかない世界なのでありましょうね。う~む。
投稿: yokochan | 2013年2月16日 (土) 23時43分
yokochan様
ギリシャ出身の世界的指揮者としては、長らく唯一無二の存在であらせられた、ミトロプーロス様。ミラーノ・スカラ座管弦楽団とマーラーの『第三交響曲』のリハーサル中に、体調が激変してお亡くなりになられたとか‥。
CBSヘの録音レパートリーでは、渋めのレパートリーを受け持ち、一般のファンには幾分持て囃されにくい面もあったようですが、もう少し余命がおありなら、後にブーレーズがメイン・レパートリーにしていた、バルトークにシェーンベルク等の録音も、遺されていたかも知れませんね。
このお方の指揮で、『グレの歌』のレコードを聴いてみたかったです。
投稿: 覆面吾郎 | 2023年11月15日 (水) 21時12分
ギリシャの指揮者としては、いまは何人か活躍してますが、一番の大物はクルレンツィスですね。
いずれもユニークな存在です。
ミトプーの正規録音は少なくて、シェーンベルク浄夜とプロコのロメオが録音のよさでありがたい記録です。
海賊版などを探すとマーラーやワーグナーなど、たくさんありますね。
投稿: yokochan | 2023年11月25日 (土) 09時32分