フランク ピアノ五重奏曲 カーゾン&ウィーン
新装なった東銀座の歌舞伎座の、ここは地下のエントランス。
東銀座駅と直結しまして、大きなスペースにチケット売り場、コンビニ、茶屋、土産物店、甘味処などが、劇場の正式オープンを前に開店しておりました。
フランク ピアノ五重奏曲 ヘ短調
Pf:クリフォード・カーゾン
ウィーン・フィルハーモニー弦楽四重奏団
(1960.10 @ウィーン・ゾフィエンザール)
今日は、渋いとことろから一曲。
かの無題のニ短調交響曲のセザール・フランク(1822~1890)の室内楽作品から。
もっとも、フランクの室内楽といっても3曲しかないのですが、そのいずれもが求心的で深みのある作品ばかり。
一番有名なヴァイオリン・ソナタと弦楽四重奏曲、そして今宵のピアノ五重奏曲。
フランクは、ベルギー生まれで、フランスの移り、作曲のかたわらパリで教鞭をとり、多くの弟子が輩出し、その彼らはフランクの流れをくんで、独自の香り高い「フランス音楽」流派を組んだのです。
その連中の名前を列挙すると、ピエルネ、ダンディ、ショーソン、デュパルク、ロパルツなどで、一方で、フォーレも流派こそ違え、フランクに多くの影響を受けた作曲家であります。
どうしても、あの交響曲や、ソナタばかりが先行してしまいますが、このピアノ五重奏曲も気高く熱い本格的な音楽でして、「交響曲」をお好みの方なら絶対に気に入っていただける本格作品なのです。
しかし、フランクのいずれの室内楽も、ごく初期のピアノ三重奏を除くと、いずれも作曲家後期の作品で、その室内楽自体が円熟期から晩年の作品群に位置するところがまた容易に聴くひとを寄せ付けない高尚さと晦渋さを併せ持っているのです。
ピアノ五重奏は、1879年57歳、ヴァイオリン・ソナタが1886年64歳、弦楽四重奏が1890年70歳で、翌年には旅立つフランク。
3つの楽章からなり、それぞれに濃密な音楽で、その濃淡の深さも尋常ではないのですが、どこかベルギー・フランス的な、そう汎ラテンともいえる明るさをも兼ね備えているため、息詰まるような圧迫感はありません。
痛恨の雰囲気からスタートする1楽章ですが、その後、渋い展開を持ちながらも、楽想は熱くなっていき、オルガン的な多層的な展開もあるのですが、どこか煮え切らずに終始してしまうろころが、あの難しそうな顔のフランクの音楽そのものなのです。
この曲で、一番好きな楽章が2つめのもので、あの交響曲の2楽章と同じように、抒情的な主旋律があって、それが多岐にわたって変転してゆくさまが、なんとも、おぼろげであり、かつその濃淡の微妙さが美しい。
この曲に大いに影響を受けたフォーレの先ぶれ、いや先んじているから当然ながら、フォーレ的なパステル感を感じる一品でした。
終楽章は、これまでの展開とちょっと異なるかっこいい旋律やリズムの応酬で、フランクとしては大いに劇的な曲の運び。
いずれにしても、印象的なこの音楽の主役はピアノで、終始、流動的な存在として曲をリードしていて、弦楽四重奏が悲劇的な様相を呈しても、ピアノにはまだ救いがあるように聴かれ、したてられているように聴きました。
イギリスのリリカルなピアニスト、カーゾンとボスコフスキー、シュトラッサー、シュトレング、ブラベッのウィーン・フィルの名手たちがクワルテットを組んだ演奏で。
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コメント
フランクの奥さんはこの曲を聞いて「まあ!なんてはしたない曲なの!私、こんな音楽だいきらいよ!」と叫んだそうです。どうやら、フランクが浮気しているときの描写音楽だったらしい。。。奥さんにはそれがすぐにわかったらしい。。。フランクもすごい事してるけどそれがわかる奥さんもすごいです^^;
投稿: | 2013年3月14日 (木) 21時33分
上の書き込みって私でした^^;失礼しました。。。
投稿: モナコ命 | 2013年3月14日 (木) 21時34分
あらまぁっ!
そんな曰くありげな、いやエロイ背景が隠された音楽だったのですかぁ!
すみに置けないセザール君だったのですねぇ。
やたらと嬉しかったりする情報、ありがとうございました。
投稿: yokochan | 2013年3月14日 (木) 22時56分
その女性、オーギュスタ-エルメスなる女流作曲家とか‥。この曲を捧げられ初演のピアノを担当したサン・サーンスが、演奏終了後ピアノの上に譜面を置き去りにして立ち去る無礼な振る舞いをしたのも、サン・サーンスもまたエルメスに思いを寄せていた為で、それ故の忌々しさからだったそうです。
投稿: 覆面吾郎 | 2019年11月25日 (月) 14時30分
サン・サーンスとフランクの、女性をめぐるエピソード、それぞれの音楽の作風を思うと、とても面白くて、微笑ましいですね。
投稿: yokochan | 2019年11月27日 (水) 08時44分