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2013年3月25日 (月)

ヴェルディ 「一日だけの王様」 レンツェッティ指揮

Tokyo_tower

桜咲く東京タワーです。

思えば、震災で曲がった先っぽも新たに更新され、スカイツリーへの電波塔としての役割も移譲中。

いつまでも、キリっと立ち続けて欲しいです。

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  ヴェルディ  「一日だけの王様」

  ベルフィオーレ:グィド・ロコンソーロ 
  ポッジョ公爵夫人:アンナ・カテリーナ・アントナッチ
  ジュリエッタ:アレッサンドラ・マリエッリ エドアルド:イヴァン・マグリ
  ゲルバー男爵:アンドレア・ポルタ    ロッカ:パオロ・ボルドーニャ
  イヴレア伯爵:リカルド・ミラベッリ     デルモンテ:ペク・スンファ

    ドナート・レンツェッテイ指揮 パルマ・レッジョ劇場管弦楽団
                       パルマ・レッジョ合唱団

         演出:ピエール・ルイジ・ピッツィ

                    (2010.1.30 @パルマ・テアトロ・レッジョ)


ヴェルディ(1813~1901)の2作目のオペラ。
初作「オベルト」が大成功して、スカラ座で今後2年間に3本の新作作曲との契約を勝ち取り、次回作にはシリアスな悲劇が用意されたものの、スカラ座側のレメッリはすぐさまそのプランを引っ込めてしまい、今度はブッフォの台本を数本提案してきて、それらの中からヴェルディが選択したのが「偽のスタニスラオ」。
これは、18世紀ウィーンの作曲家アダルベルト・ギロヴェッツがすでに作曲して、スカラ座のレパートリーになりそこねていたもので、今回はそのテキストの改作で、題名も「一日だけの王様」と更新されたもの。

ところが、よりによって喜劇の作曲に取り掛かったヴェルディに悲しみが相次いで襲う。
「オベルト」の初演準備中には、生まれてまもない息子を失ってしまったが、今度は妻マルゲリータを脳炎にて亡くしてしまう。
作曲の断念も申し出たもののそれもかなわず、1940年9月、もうじき27歳になる若いヴェルディの「一日だけの王様」はスカラ座で初演されました。
 しかし、結果は悪評をあびる大失敗。
歌手の準備不足や非力さも足を引っ張る結果になったのに加え、台本の細部をはしょった未熟ぶりも初演失敗の要因とされます。

ヴェルディは大いに落胆、自信消失してしまいますが、1年後の次作「ナブッコ」で見事復活を遂げるのであります。

ヴェルディのブッフォオペラは、本作と、1893年、53年後、自在の域に達した最終作「ファルスタッフ」の2本のみ。
その点、ワーグナーも一緒。初期作のお気に入りの「恋愛禁制」は面白作品ですが、いまだに人気作とは言えず、後期充実期の「マイスタージンガー」は滋味深い楽劇となりました。

で、このヴェルディの「一日だけの王様」ですが、最初に聴いたときには、えっ?これヴェルディ?と思いました。
軽快すぎる序曲に、チェンバロ付きのレシタティーボ・セッコ、ドタバタの重唱のクレッシェンドする大盛り上がり。
そう、まるでロッシーニみたいに、時にはその軽やかさはドニゼッティをも思わせるものでした。
イタリアオペラの系譜にヴェルディがしっかり位置しているのを確認できるものです。
 一方のワーグナーも思えば同じ。
初期のものほど、ウェーバーやマルシュナー、ロルツィング、マイヤーベアなどの先人たちの影響もうかがえ、段々とあの巨大なワーグナーの音楽が確立されていったわけですから。

とはいえ、ヴェルディの顔はこのオペラのあちこちにしっかり表れておりますし、それゆえにこそ、このオペラが愛らしく感じてしまうようになってきました。
次々に展開される美しいメロディ、心を刺激する弾むような湧き立つようなリズム、常に気品のある音の響き・・・・。

しかし、映像で、それを音だけにして何度も視聴しても感じる散漫さは否めない。
筋立てが陳腐なことと、場の展開が早過ぎて、流れをつかめないし、人物たちが没個性なこと、またあらゆる声域に歌をそれぞれ与えているものだから聴いてるだけじゃ誰が誰だかわからない・・・。
結末のあっけない軽さもなんとも。
でも、もっと聴き込みが必要なのでしょうね。

1733年のこと。ポーランド戦争にてザクセンに敗北したポーランド王スタニスラオはフランス王妃となっていた娘を頼り亡命。その後、敵王が没し、故国へ戻るのだが、その際、身の安全のため影武者をしたて、自分も変装して帰国する。

第1幕

  
 
 国王、実は影武者に扮したベルフィオーレは、逗留先のゲルバー男爵家の歓待を受け、男爵側はここぞ、いい機会とばかりに、ふた組の結婚があるので、お立会をと懇願。
 それは、娘のジュリエッタと富裕の財務長官ロッカ。
そしてもうひと組は、自分の姪のポッジョ公爵未亡人とイヴレア伯爵と。
 驚いたのは影武者ベルフィオーレ。
公爵未亡人と、彼は実は許嫁となっていたのです。

3

これはいかんと一人になり、マズイ、早くこの影武者の任を国王に解いてもらわないと、といことで手紙をしたためたところに、若いエドゥアルドが直訴にやってくる。
彼は、国王の旗頭となってポーランドへ連れていって欲しい、相愛のジュリエッタと結婚を男爵から拒まれ、伯父との婚姻を進められ、もはやここにいては意味もなく、前線に身を投じたいと。
 その噂をかねがね聞いていた偽王ベルフィオーレは、大いに同情し、彼を部下に取り入れることを約し、ふたりの男は大いに意気投合し、燃えまくる!

さらに、この様子を陰から見ていた公爵未亡人は、王とされながらも、どうみても恋人ベルフィオーレなことに驚き、裏切られた思いで、ひとり、忠実な女の強い心意気で、ベルフィオーレの心を試す気持を歌います。
 

5

一方、不愉快な婚姻を仕組まれた若いジュリエッタは、農夫や人々の祝福にも浮かない様子。
そこへ、父と将来の夫の財務長官があらわれ、不機嫌な娘をたしなめますが、あらたに国王、すなわちベルフィオーレがエドゥアルドとやってきて、彼をジュリエッタと共にし、自分とオヤジ二人は、軍略会議と称して、若いふたりから隔離。
やたらと気になる財務長官。

ここへ、公爵未亡人が到着し、ばれてはまずいと右往左往のベルフィオーレ。
かれとオヤジ二人が去ったあと、未亡人と若い二人は、偽王にたいする疑心も抱きつつ、若さと愛について合意し、助け合うことで合意します。

場面かわって、ロッカ財務長官のもとに訪れた偽王ベルフィオーレ、若い女性との結婚もいいけど、ポーランド国の大臣とイネスカ王女との結婚のダブルはどう?と提案され、ものの10秒で変心。
王は去り、男爵が結婚証文をもってやってくるが、こともなげに断る財務長官。
名誉にかかわることと、決闘を申し込む男爵と逃げまどう長官。

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第2幕

 伯爵家の召使いたちが、婚姻というお祭りがなくなったことを嘆いているが、エドゥアルドは、大いに愛を讃えて喝采を得る。
そのあと出てきたベルフィオーレは、若いふたりの障壁は、エドゥアルドに金がないことを聴き、財務長官に、城のひとつとお金を譲ることを約束させるが、そのあと誰もいなくなった舞台に、長官と男爵。
ふたりはまた大喧嘩。正統的な剣での決闘を挑む男爵に、爆弾攻撃による報復を望む長官。ばたばた喜劇。

 ベルフィオーレと公爵夫人、お互いにお互いがわかりながらのさぐりあい。
不実をなじりながら、イヴレア伯との結婚を決心してみせ、その許しを乞わない限り、ベルフィオーレを許さないと、偽王に語り、ベルフィオーレを焦らせる。
 一方、帰りを急ぐ偽国王とともに出立するとしたエドゥアルドに、結婚を許されたとしたジュリエッタは激怒。

不穏な雰囲気の中に、イブレア伯が到着、公爵夫人に求愛するが、夫人はあと1時間待って許嫁があらわれなければと決心を伝える。
 そこで、今度はベルフィオーレは王としてイブレア伯も秘密の目的のために連れて出発するといいだすので、皆は大混乱。
今回の登場人物全員が登場し、入れ替わり立ち替わり、自分たちの思いを歌いだして、賑やかな重唱となります。

そこへ、従者が本物王から偽物王へ親書を持ってくる。
ニンマリしたベルフィオーレは、まず、エドゥアルドとジュリエッタの結婚を命じ、皆の了解を得ます。
そして、「王は無事ポーランドに到着し、王権を復古した。ベルフィオーレは影武者の人を解かれ、王のもと元帥に任ず」と読み上げ、一同唖然。
騙された伯爵と財務長官は、賢い男は黙っているもの・・・、と終わりよければすべてよし、ふた組の男女に幸せが、変装のおかげで訪れた・・・と喜びの大団円となります。

              幕

ヴェルディ生前でも、初演以外3度しか上演されなかった「一日だけの王様」。
その後の上演史は不詳ですが、70年代にフィリップスがガルデッリの指揮で録音を進めた初期オペラシリーズの中で復活し、正規音源ではいまだにそちらが唯一の存在。

そして、嬉しい日本語字幕付きのDVDが出てましたので、入手してみました。
このパルマ劇場での上演は、もうひとつ1997年盤がありますが、同じ演出と同じヒロインのようですし、歌手も魅力的な顔ぶれです。
こちらの歌手の方は若手主体で、ほとんど初の方々ばかり。でも字幕はほんとありがたい。

ピッツィの演出はいろいろ観ることができますが、ここでも光と影、色彩と調和のとれた舞台で、安心して観れる美しいものでした。
何よりも鮮やかな衣装が素敵なものでした。
パッケージの画像はちょっと見、オッという感じですが、実際の映像では期待したほどではありませんでした(笑)。由美かおるっぽい、入浴シーンなのですが、アントナッチのお湯の熱さを歌で表現するユーモアあふれる上手さと、なにげに窓から覗き見するベルフィオーレが面白いです。

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そして歌の安定感と輝きで、そのアントナッチは群を抜いていて、重唱でもひとり突出していました。
カルメン歌いでもある彼女の歌、気にいりました。

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なかなか男くさい風貌のロコンソーロは、スカラ研修生出身で、なかなかに深い声をしておりました。この人、メキメキ人気を博しつつあるニノ・マチャイゼと同窓で、彼女と結婚したらしいです。

美声のテノール、マグリはこれから活躍しそうで、日本の舞台にもすでに立っているそうですし、恋人役のマリアネッリは可愛いリリコで、モーツァルトを得意にしてます。
あと上手かったのが、ミラノ生まれのボルドーニャ。明るいバリトンで、伸びのいい豊かな声で、聴衆の一番の喝采を得ておりました。

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本場での上演、遠い日本で、ワイン片手に楽しんだ休日でした。

そうそう、この舞台で、ドタバタおじさんコンビが、パルマハムをナイフで削ぎながら酒飲んでるシーンがありましたな。(舞台はフランスなのに)

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コメント

  今晩は。今年はワーグナーイヤーであると同時にヴェルディイヤーでもあるのですよね。「群盗」の初の日本語字幕付DVDがでたりしていますね。彼のオペラは未発見のものなどを除外すると28作あるそうですが、私が鑑賞したのはその半分程度です。モーツァルト、ワーグナー、プッチーニ、R・シュトラウスなどと比べるとまだまだ発掘途上の大金山という感じです。「ナブッコ」以前の作品は告白するのが少し恥ずかしいのですが、鑑賞したことがまだありません。円熟期以前の初期のヴェルディの喜劇というと私も興味がわきます。

 バッハの教会カンタータ全曲鑑賞、やっと終わりました。今日の朝、早起きしてBWV57のカンタータを聴き、やっとピリオドを打つことが出来ました。200曲聴くのに3年以上かかってしまいました。他の作曲家に熱中したり、うつで寝込んだり色々ありましたので。私はリリングのモダン楽器演奏とルーシンクの古楽器演奏を中心に聴きました。前にも申し上げた覚えがありますがバッハのカンタータはモーツァルトやワーグナーの全オペラに匹敵する楽想の宝庫ですね。これから2周め、3周めに入りたいと思います。

投稿: 越後のオックス | 2013年3月27日 (水) 20時35分

オックス様、横入りして失礼します。28もあるんですか?初めて知りました^^;
私は半分どころか10作品くらいです。。。
しかも熱心に繰り返し聴いているのはさらに数が少ないですね、、反省します。
さまよえる様の守備範囲の広さにはいつも驚かされます。今回の作品は初めて聴くタイトルです。え?1日だけ?え?なにそれ??
という状態です。
いかん、、鑑賞する作品がかたよっている。みなさんの熱心さをみならいます。

投稿: モナコ命 | 2013年3月27日 (水) 20時55分

越後のオックスさん、こんにちは。

バッハ・カンタータ、ついに制覇されましたか。
おめでとうございます。
教会カンタータだけでも全部聴いた方は、ほかにあまりいらっしゃらないのではないかと思います。
素晴らしいですね。

一方のヴェルディ。
たしかに初期物は資料も少なく、対訳もないため、苦戦しております。
こちらのDVDのシリーズは、日本語字幕が付いていて本当にありがたかったです。
ほかにCDで手当てしているものもありますので、DVDでそろえることは難しいですが、改作ものを除けば、あと4作でコンプリートです。
ブログの方は、年内と意気込んでますが、あと11作もあり、前途多難です。
いずれにしても一作一作体験してゆく喜びは大きいです!

投稿: yokochan | 2013年3月28日 (木) 12時55分

モナコ命さん、こんにちは。
ワーグナー好きとしては、ヴェルディも全部制覇しないと気が済まなくなりまして、やってます。

「一日だけの王様」は、音楽だけを聴いていると慣れるまで辛いものがありますが、こうして映像で体験できるようになって、その魅力がわかるようになったと思います。
まだまだ知らない作品は多いものですね。
この先の人生、どこまで開拓できるかわかりませんが、未知体験を楽しみたいと思います。

投稿: yokochan | 2013年3月28日 (木) 13時04分

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