ハウェルズ レクイエム フィンジ・シンガーズ
しだれ桜の太い幹の下から。
日曜の画像ですので、いまはきっと7分咲きくらいに。
毎年、ちゃんと開花する自然の営みの素晴らしさ。
私たちには、いろんなことが起きて、桜を愛でる気持ちも毎年違うものがあります。
寒かったこの冬は、親しかった親類が何人か他界しました。
もうそんなことに会いたくはないけれど、こればかりは天命もありますし、やむなしですが、いつか来るとわかっていても、やはり悲しいものです。
その面影は薄い記憶となっていっても、その声は永遠に耳に残るものです。
人間の耳からの認識による声の記憶は、とんでもなく確かなものだと思います。
肉親は当然ながら、テレビや映画で聴いた声も絶対に忘れることはありません。
不思議なものだと思います。
ハウェルズ レクイエム
ポール・スパイサー指揮
ザ・フィンジ・シンガーズ
(1990.9.26,7 @ロンドン、聖オルヴァン教会)
ハーバート・ハウェルズ(1892~1983)は、80年代まで生きたグロースターシャー出身の英国作曲家。
寡作ではありましたが、いずれも心に染み入る美しく儚い音楽を残した。
英国音楽を愛好するわたくしにとって、ハウェルズは、最大級に大切な作曲家です。
その音楽のいくつかは、今際の際に、是非とも流して、聴かせて欲しいと思っております。
まだまだ、取り上げていない作品がたくさん。
音源のない作品もまだまだあります。
田園風の大らかなハウェルズの音楽が、求心的な音楽に激変したのが、最愛の息子の死。
1935年の出来事でした。
以来、ハウェルズの作風は、宗教性を増し、愛する息子を偲ぶかのような悲しみと愛情に満ちた深いものに変わりました。
38年の「楽園讃歌~Hymnus Paradisi」は、亡き息子への哀感と神への感謝と帰依にあふれた名作であります。
その姉妹作のような存在の無伴奏合唱のためのレクイエム。
「楽園讃歌」から、「Requiem aeternam」と、「I heard a voice from heaven」を引用しておりまして、それらを曲の中枢と最後に持ってきて、6つの章からなる20分あまりの合唱レクイエムといたしました。
個人的な思いにすぎるとして、その演奏を躊躇したハウェルズ。
1950年にグロースターシャーの合唱フェスティバルにて、ボールトの勧めに応じて、ようやく「楽園讃歌」は演奏されましたが、レクイエムの方は、さらにその30年後になってようやく出版されました。
作者がそれほどまでに、深い思いを込めた作品。
それはもう、どこまでも透明で、無垢で、あまりにも美しい彼岸の作品なのです。
1.サルヴァトール・ムンディ
2.讃美歌23
3.レクイエム
4 讃美歌121
5.レクイエム
6.天よりの声を聴き
ラテンの伝統的な典礼文と、イギリス国教の讃美歌をもとにしております。
なんといっても、ふたつのレクイエムが素晴らしいのと、最後の、「I heard a voice from heaven」。
「彼らは労苦を解かれて、安らぎを得る。その行いが報われるからである・・・・」その結びの言葉はヨハネによる福音書のものです。
宗教的な観念を無視しても、この音楽の持つ独特の美しさは筆舌に尽くしがたいものです。
人間の声の持つ美しさを誰しも感じていただけると思います。
フィンジ・シンガーズに、4人のソロが少しだけ絡み合います。
ここでは、いまが旬のスーザン・グリットンがステキすぎました。
この演奏が行われた録音会場。
あまりに響きがきれいで清冽なものですから調べてみました。
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コメント
すごいです^^;ハーバート・ハウェルズについては名前も作品も全く知りませんでした。さっそく聴いてみますといいたいのですが、こちらのCDは私の街で帰るのかな。。。
イギリス音楽を本当にお好きなのですね。また研究してるんですね。尊敬!
私がイギリスで知ってることといったら、、、クルマ!
あとはスコッチウィスキー。あとは。。金管楽器の有名なメーカーが多い。。あとはなんだろう。こんな程度なんです。さまよえる様を見習います。
投稿: モナコ命 | 2013年3月23日 (土) 22時03分
モナコ命さん、こんばんは。
コメント遅くなってしまいました。
ハウェルズは、英国近代の抒情派ともいうべき存在でして、クールで美しい音楽が身上です。
ここ20年ほどはまっている作曲家です。
英国音楽道は、中学生のときのディーリアスとの出会いから始まってかれこれ長いお付き合いです。
なかなかに味わい尽せぬ、深い世界でございます。
是非チャレンジしてみてください。
投稿: yokochan | 2013年3月25日 (月) 20時43分
過去記事に失礼致します
私の方こそ、知らない楽曲、及び作曲家を多数、お教え頂き、非常に楽しませて頂いております。
ルネッサンス期ならまだしも、この時代にして無伴奏合唱のレクイエムとは、これ又、何とも興味深いですね!
(余談ですが、先に挙げましたべリオも、人声のみの無伴奏といえば無伴奏、“楽曲への振る舞い”といった趣きの作品です)
投稿: Booty☆KETSU oh! ダンス | 2013年4月18日 (木) 10時22分
Booty☆KETSU oh! ダンスさん、こんにちは。
ご返信遅くなりました。
わたしもこのブログや、ほかのお仲間ブログから、いろんな情報を仕入れております。
本当にありがたいです。
この曲の静謐と哀しみの世界は独特でして、辛い時には癒しの効能もあります。
イギリス音楽には、パートソングなど、無伴奏やホルン伴奏などの美しい合唱作品がたくさんあります。
そしてなるほどの、ベリオですね。
ありがとうございました。
投稿: yokochan | 2013年4月20日 (土) 14時57分